システム開発会社におけるM&Aの売却・買収について!動向やポイントなどを紹介
「システム開発会社のM&Aの流れや期間はどのくらいかかるの?」
「システム開発会社がM&Aで売却するにはどのようなことを知っておけばいいの?」
システム開発会社のM&Aを検討してこのような疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
M&Aでは、企業間で様々な契約を結んだり自社で必要な書類を随時用意したりする必要があるため、手続きフローや注意点を知っておく必要があります。
本記事では、昨今のシステム開発会社M&Aの動向、M&Aで自社を高値で売却するポイント、具体的なM&Aフローとそれにかかる期間をご説明します。
この記事を読んで、M&Aを検討する際のご参考にしてください。
目次
1.システム開発会社のM&A動向
昨今、IT企業や顧客となるユーザー企業においてIT人材の量・質ともに不足していることが課題とされています。
そのためシステム開発会社の買収においては、優秀な人材として高いスキルを持つエンジニアの確保が重要視されるケースが多いと言えます。
需要の高いシステム開発会社におけるM&Aには、どのような動向が見られるのか順にご説明します。
(1)ハードウェア会社
ハードウェア会社では、大きなシナジー効果が期待できるという理由から主にSESの企業などでM&Aが行われるケースが多いです。
その他にも、様々な分野でシナジー効果を得られると考えられているハードウェア会社はM&Aを積極的に利用しています。
また、ソフトウェア会社などの経営基盤強化を目指すM&Aとしてもハードウェア会社は選ばれることが多い傾向にあります。
昨今、大手企業がハードウェア会社間でM&Aを利用したことで事業拡大や経営不振の改善を成功させている現状から、今後もハードウェア会社のM&Aは活発化し続けるでしょう。
(2)ソフトウェア会社
ソフトウェア会社では、M&Aが活発で国内における中小企業のM&Aは増加傾向にあります。
昨今では、政府の経済対策や金融緩和の影響から企業のソフトウェア投資が活発化し始めています。そのため、消極的だった企業のソフトウェアに対する考え方は変わり、IoTなど今後成長が見込まれる分野は市場が開拓されています。
このような状況に伴い、ソフトウェア会社は自社にない技術やノウハウを補強する目的でM&Aを行うケースが増えているのです。
また、中小企業だけでなく大手企業は国内だけでなく海外企業の買収などを戦略的に行っている傾向にあります。
(3)Sler
受託開発ソフトウェア業であるSIer(システムインテグレーター)は、今後の需要拡大に向け優秀なエンジニアを確保しようという企業間でM&Aを行っています。
SIerは、受託開発を始めSES事業をメインに行っており、量・質ともに人材不足が課題とされる企業における需要が高いと言えます。
また、エンジニアが今後安定した企業で成長していくためにもM&Aを利用することで会社を伸ばすことを目指しています。
このように、自社の成長を目的として今後の企業競争に勝つためにSIerにおけるM&Aは活発なのです。
2.経営者にとってのM&Aのメリット
現在M&Aは、主に事業継承などの問題を解決する方法の一つとして注目されており、売り手側・買い手側の企業双方にとってメリットをもたらすと言えます。
具体的なメリットを順にご説明します。
(1)売り手側企業のメリット
M&Aにおける売り手側企業のメリットは主に5つあります。
順にご説明します。
#1: 将来の営業利益を先に手に入れられる
M&Aによって、譲渡・売却後の将来の営業利益を先に手に入れられるというメリットがあります。
M&Aでは、土地や建物などの有形資産はもちろん人材のスキル、技術力、取引先、市場シェアなどの無形資産も評価されます。
例えばシステム開発会社におけるM&Aの買い手側企業は、多くの場合優秀なエンジニアを必要としています。
そのため、買い手側のニーズに合った価値を持っていると評価された場合は、将来の営業利益に加え高額な価格で売却できる可能性があるのです。
このように、M&Aを利用することで売り手側の会社は純資産に加えて将来の営業利益とシナジー効果を見越した金額を先に手にすることができるのです。
#2: 連帯保証が解消される
M&Aの成約によって経営権が売り手側から買い手側の企業に移動するため、連帯保証が解消されることになります。
特に中小企業の場合、経営者が金融機関の借入の連帯保証を追っているケースが多くあります。
M&Aの際に連帯保証を解除すると、その後会社で何らかのトラブルがあり業績の悪化などが生じても財政的な負担を負うことはありません。
ただし、M&Aを単に行っても借入金などの債務が買い手側の企業に自動的に引き継がれるわけではありません。
そのため、買い手側の企業に連帯保証人の書き換えを行い、連帯保証を解除する手続きをとることを忘れず行いましょう。
#3: 社員の雇用が守られる
M&Aで会社を売った場合、売り手企業の社員は買い手企業から雇用されるケースが一般的であるため、社員の雇用が守られます。
仮に廃業の選択をした場合、社員の雇用は継続されることはありません。
しかし、M&Aを利用した会社・事業売却の場合は売り手側の企業へ社員の雇用確保を条件として提示することができます。
このように、M&Aでは条件交渉によって社員の雇用を確保することができる点がメリットと言えます。
#4: 経営の不安から解放される
M&Aにより会社を売却することで、経営者は自社の経営の不安などの精神的負担から解放されると言えます。
会社の経営者は、常に自社の事業継承や人材不足などの将来性に不安を抱えている方が多いです。
今まで築き上げてきた会社を継承したいという思いがある一方で、そのような精神的ストレスを感じる経営者も少なくありません。
このような場合にM&Aを利用することで、会社を残したままご自身は経営の不安から解放されることができます。
#5: 次の事業に集中できる
売り手側の会社は、M&Aの利用により自社の経営や事業から解放されるため次の事業に集中することができます。
M&Aでは、売り手が買い手へ自社の事業を継承することで時間や労力に余裕ができるため、次の事業へそれらを費やすことができます。
また、M&Aを通して次の事業に必要な経営資源を獲得することができるため、財政的なメリットもあるのです。
このようにM&Aによって自社を売却することで、その後今までの事業とは異業種への可能性を広げることができるでしょう。
(2)買い手側企業のメリット
M&Aにおける買い手側企業のメリットは主に3つあります。
順にご説明します。
#1: ノウハウ・事業を素早く手に入れられる
買い手側企業は、M&Aを利用することでノウハウ・事業をスピーディに獲得することができます。
新規事業を始める場合、土地や建物、人材など必要なものを全てゼロから入手するためその分の時間や労力がかかってしまいます。
一方M&Aでは、事業が継続している状態で買い手側が企業を買収するため時間や労力を費やすことなく企業が持つノウハウ・事業を手に入れられるのです。
また、買収先の企業が買い手側の需要に合う技術を持っていた場合、強みの更なる強化や弱みの補強を素早く行うことができます。
このように、M&Aによって買い手側の企業は時間や労力をかけずにノウハウ・事業を手に入れられるメリットがあります。
#2: 事業を内製化できる
M&Aを利用すると買い手側企業は、従来外部に委託していた業務を内製化することができます。
例えば、これまで外注していた業務を担う会社を買収することワンストップサービス化が可能になり中長期的にコスト削減が図れます。
企業経営では、内製化すべき事業とそうでない事業がありそれらを見極めることが重要となります。
内製化すべき事業の実現を図るためにM&Aを利用することで、将来的な利益向上を目指せるのです。
#3: 人材不足を解消できる
買い手企業は、M&Aによって人手を確保し人材不足を解消することができます。
現在、IT業界を含む様々な業界で人材不足が問題視されており、いかにその解決策を講じるかが重要となります。
M&Aを利用することで、人材不足の問題をスキルを持つ人材を確保することで解消できると同時に育成などを行うプロセスを省略できます。
このように、買い手企業にとってM&Aは人材不足を解消できるという点でメリットをもたらすのです。
3.システム開発会社のM&Aの相場
システム開発会社のM&Aにおける売却金額は、事業規模や事業の将来性などによって変動するため一概に相場を断言することはできません。
ただし、多くの場合は営業利益3~6年分+純資産額がシステム開発会社のM&Aの相場と言われています。
加算される営業利益の年数は、買い手側との交渉によって決まるケースが多く買い手の規模やニーズなどで増減します。
会社の価値は目に見えるものだけではなく今後期待される物も含まれるため、いかに交渉を通して見積もるかが重要と言えます。
4.システム開発会社がM&Aで高値で売却するためのポイント
システム開発会社がM&Aを利用して、自社をより高い金額で売却するためには主に3つのポイントを意識するといいでしょう。
順にご紹介します。
(1) キーマンの離脱を防ぐ
システム開発会社のM&Aでは、社員の中でもキーマンとなる人材の離脱を防ぐことでより高値で自社を売却することができると言えます。
多くのシステム開発会社では、キーマンとなる優秀な人材が技術などの中核を担っているケースが多くあります。
また、それらのシステム開発会社を買収しようとしている会社はそのようなノウハウや技術をもつエンジニアなどの人材を求めています。
そのためキーマン離脱してしまうと、買収リスクが高いもしくは今後の収益が見込めないという理由で売却金額が低くなる可能性があります。
キーマンが離脱してしまわないように、M&Aが行われた後でも社員が残り続ける対策を講じる必要があります。
(2)収益予測値を検討する
システム開発会社がM&Aにおいてより高い金額で売却するためには、収益予測値を検討することを推奨します。
M&Aにおいて買い手側は、できる限り買収リスクを減らしたいと考えているため収益性が見込めない会社は低い金額で買収される可能性があります。
売り手側は、自社の収益予測値を検討しそれを買い手側に提示することで将来性が明確化され、より高値で会社を売却することができるのです。
例えば自社の取引先と年間契約を取っており、継続期間を示せる等、客観的な指標を示せる場合、将来的に利益を見込めると言えるでしょう。
このように、売り手側であるシステム開発会社はM&Aの手続の際自社の将来性を買い手側に証明するためにも必要な資料や自社のデータなどをまとめておくといいでしょう。
(3)買い手企業とのシナジーを検討する
システム開発会社のM&Aでは、買い手企業とのシナジーを検討することが高値での売却につながります。
システム開発会社は、そもそも買い手側が買収を決断する判断軸としてシナジー効果が得られるかどうかであるケースが多いです。
そのため、交渉の際に自社が既に持っている価値が買い手にどのようなシナジー効果を与えるかといった点を検討し伝えることで、売却金額も高くなるでしょう。
特にシステム開発会社では、M&Aによってより高いシナジー効果を期待できる業種でもあるので、このような点を意識することをおすすめします。
5.M&A業者を選定するポイント
システム開発会社におけるM&Aをスムーズに成功させるためには、自社にとって適切なM&A業者を選定する必要があります。
自社のニーズに合ったM&A業者を選ぶにはどのようなポイントを確認するといいのかを順にご紹介します。
(1)同業種で実績があるか確認する
システム開発会社のM&Aを成功させるためには、同業種で実績があるM&A業者を選定することをおすすめします。
M&A業者には、様々な企業でのM&Aを担当することがあるため売り手側と買い手側双方にメリットのある提案ができる業者に依頼することで、効率よくM&Aを進められます。
特にシステム開発会社などのIT業界における現状や業界におけるM&Aの実績があれば、より条件に合った相手先の企業を見つけることができるでしょう。
また、企業や事業の規模も様々なので同規模での実績があるかどうかを確認することも意識するといいでしょう。
(2)仲介以外の業務領域を支援してもらえるか確認する
自社のニーズにあったM&A業者を選定するポイントとして、仲介以外の業務を支援してもらえるかどうかを確認することが挙げられます。
M&A業者は主に、売り手側と買い手側の企業を仲介することですが、M&Aのプロセスには法務や税務などの専門的知識やデューデリジェンスの対応が必要となります。
そのため、仲介以外に売り手側へ高値で売却するためのアドバイスや株価算定といった業務の支援、買い手側へ価値評価の助言を行うことなどの支援があるかどうかを選定の軸に置くといいかもしれません。
仲介以外の業務領域を支援してもらえる業者にM&Aを依頼することで、ご自身の条件に合った買収・売却を成功させられるでしょう。
(3)費用体系を確認する
システム開発会社でのM&Aを業者に依頼する場合は、費用体系を確認するといいでしょう。
M&A業者によって、着手金が無料であったり、成功報酬のみであったり、月額報酬であったりと費用体系は様々です。
分類 |
M&A業者の報酬体系例 |
着手金 |
・業者へ正式な依頼を行った時点で支払う |
中間金 |
・一般的に基本合意書の締結時に支払う |
成功報酬 |
・M&Aの最終契約締結時に支払う |
月額報酬 |
・毎月定額で支払う |
*レーマン方式とは、買収価格のレンジによって手数料率が変動する計算方法を指します。
以下が、一般的なレーマン方式による手数料率です。
- 5億円まで ・・・5%
- 5〜10億円まで ・・・4%
- 10〜50億円まで ・・・3%
- 50〜100億円まで ・・・2%
- 100億円超 ・・・1%
なお、ユニヴィスでは上述のレーマン方式を採用しており、最低報酬金額の設定はありません。同業他社が最低報酬金額の設定を行っており、売却金額によっては手数料が高いと感じられるケースもありますが、ユニヴィスではそういった最低報酬金額の設定が無いため、単純な売却金額に対する比率のみで進めることが可能です。
また、報酬金額はご依頼者様の案件の内容に応じて相談を実施させていただいております。
自社にとってどのような費用体系が最適かどうかを判断し、それに合ったM&A業者に依頼することをおすすめします。
6.M&Aの流れ・スケジュール
M&Aの流れ |
内容 |
期間 |
M&A仲介会社の選定 |
M&A仲介会社を選定し、相談を経て買い手候補を探す |
2〜3ヶ月 |
IM/ノンネームの作成 |
譲受企業にM&Aを検討してもらうために譲渡企業の企業概要を開示する |
〜1ヶ月 |
ロングリストの作成 |
M&Aによってシナジーが期待できる企業をリストアップ |
〜1ヶ月 |
TOP面談 |
譲渡企業と譲受企業が顔合わせをして企業理念などの相互理解を深める |
1〜2ヶ月 |
意向表明/基本合意 |
譲渡対象範囲や金額などの基本条件を合意した段階で締結 |
2〜3ヶ月 |
デューデリジェンス |
対象会社の財務・法務・人事・システム・環境等を調査する |
1〜2ヶ月 |
SPA/クロージング |
M&Aにおける経営権の移転を完了させる最終手続き |
1〜2ヶ月 |
(1)M&A仲介会社の選定
M&Aを検討された段階で、専門家に相談するためにM&A仲介会社の選定を行います。
M&A仲介会社などの専門家に相談する上では、売り手企業との秘密保持契約、仲介契約書の締結を行いご自身の会社情報や資料を提出します。
M&Aを検討していることが漏れてしまうと、社員が自社の経営状況が思わしくないと思い退職してしまう可能性があったり、取引先との交渉が終わってしまうことがあります。
そのため、自社がM&Aの検討や交渉を行っているということを外部に漏洩しないと秘密保持契約締結により約束をする必要があります。
また、仲介会社との間で仲介契約書を締結することで業務範囲や報酬に関する取り決めや禁止事項を守る事を約束します。
ご自身の会社情報を提出していただき、それらの資料や経営者との相談を基に仲介会社はM&A先を選定します。
(2)IM/ノンネームの作成
M&Aでは、譲渡企業が譲受候補企業へ企業概要や譲受することでどのようなメリットがあるのかを検討してもらうためにIMと呼ばれる企業概要書を作成します。
そのほかにも、ノンネームと呼ばれる譲渡会社の名前などを明かさない匿名での情報を記載する資料を提示するケースもあります。
秘密保持契約締結後に締結するIMとは異なり、秘密保持契約締結前に情報を開示するため会社名などを特定できない粒度の情報が記載されます。
以下が、IM(企業概要書)の記載事項例です。
・企業概要(企業情報、事業概要、所在地、資本金など)
・事業内容(取引先の情報、取引の流れなど)
・組織概要(組織図、株式・役員構成、潜在株、従業員構成など)
・財務状況(直近3年程度の損益計算書・賃借対照表など)
・今後の事業企画
・その他(許認可や法規制に関する事項があれば記載)
(3)ロングリストの作成
次に、M&Aの一定の条件を満たした買収・売却候補を集めた企業リストであるロングリストを作成します。
ロングリストは、M&Aによって得られるシナジー、利益、経営面において重要なプロセスになります。そのため、経営者はM&Aの目的を定めそれに沿って慎重に作成を進める必要があります。
ロングリスト作成時には、自社の利益のみならず相手企業とのシナジーを考慮することが重要と言えます。
具体的には、M&Aを成功させることで経済的にどのようなシナジー効果が得られるのか、双方のノウハウや技術を事業で活かせることができるかなどが挙げられます。
M&A仲介会社が作成したロングリストを確認し、自社と相性が良さそうな企業名を伝える等すると良いでしょう。
(4)TOP面談
次に、譲渡企業と譲受候補企業の経営者など意思決定者同士が最初のコンタクトとしてTOP面談を行います。
TOP面談は、譲渡企業の書面での検討を済ませ前向きに譲受を判断したタイミングで実施され、一度で相互理解しきれなかった場合は複数回実施されることもあります。
TOP面談では、今後PMIをスムーズに進ませシナジー効果を生み出すためにも企業・経営理念や文化などの相性を確認します。
また、IM・ノンネームなどの企業概要や事業内容等に関する疑問点を質問する場として活用してもいいでしょう。
(5)意向表明/基本合意
M&Aでは、最終契約の前に基本事項について譲渡企業と譲受候補企業が合意したことを書面で確認するために意向表明や基本合意を締結します。
意向表明書は譲受候補企業から意思表明文書を提示し、基本合意書は双方が交渉を通して合意文書を結ぶのです。
意思表明や基本合意は、譲受候補企業が譲渡企業へ買収に関する基本条件を提示し交渉を継続すると決定した時点で締結します。
これらを締結することで、スケジュールの明確化や買収価格の上限設定などを図ることができます。
(6)デューデリジェンス
M&Aにおけるデューデリジェンスでは、買収対象企業のリスクを把握し経営統合を図るために、対象会社の概要は価値を詳しく調査します。
対象会社の財務・法務・人事・システム・環境などを詳細に把握し、人財や外部の税理士、弁護士、公認会計士などを含む買収対象企業のリスクも徹底的に調べます。
まず、デューデリジェンスの期間・種類やコストの見積もりを含めた実施方針を決定し、ミーティングを行ったのち実際に調査を始めます。
デューデリジェンスを通じて過去の情報だけでなく、今後の事業計画などの経営情報を分析するのです。
(7)SPA/クロージング
最後に、譲渡企業と譲受企業が株式の譲渡やその他の条件に合意すればSPA・クロージングを行い、最終契約書を締結します。
このクロージングが実行されることでM&Aの手続上フローは完了するのです。
クロージングでは様々な混乱が生じる可能性があるため、契約内容・前提条件やM&Aスキームに応じて準備を行う必要があります。
具体的には、譲渡範囲において譲渡する資産・債権・債務などを企業価値やリスクを考慮した上で細かく決めます。
これらの事項が決定すれば最終譲渡契約であるSPA・クロージングを実行してM&Aの手続きが完了するのです。
7.システム開発会社のM&A事例
システム開発会社のM&A事例をご紹介します。
・AppleとLala(ソフトウェア会社)
Apple社は、2009年に音楽サービスであるLalaを買収しiTunesというブランドを立ち上げることで、音楽のダウンロードや購入サービスを展開しています。
Lalaは、ユーザーのハードドライブをスキャンすることでウェブ対応デバイスから音楽をアクセスできるため、Apple社はこのノウハウを活用しているのです。
・ARMホールディングスとソフトバンク(ハードウェア)
ソフトバンクは積極的に事業拡大を行なっており、2016年にイギリスの半導体メーカーであるARMホールディングスを買収しました。
ソフトバンクはARM買収後、技術関連人材を増強し研究開発への投資を加速させています。
・Peing 質問箱のジラフへ売却
2017年、事業譲渡スキームにおいてM&Aが行われました。
・楽天と日本郵政(ソフトウェア)
楽天と日本郵政は、物流やモバイルなどの多様な領域での連携を強化するために資本業務提携を結びました。
日本郵政は、郵便局や物流のネットワークを利用して社会インフラとしての役割を担っており、両者の経営資源や強みにシナジー効果が得られると考えています。
・SAMURAI & J PARTNERとヴィオ
SAMURAI&J PARTNERは、2018年にITソリューションやシステム受託開発を手がけるヴィオを買収しました。
これによって、SAMURAI&J PARTNERは事業拡大と新規分野でのシナジー効果を期待します。
まとめ
昨今、IT業界では人材不足を問題視しておりその解決策としてM&Aの利用が活発化しています。
M&Aには売り手・買い手双方に様々なメリットがあり、M&Aを利用することでシナジー効果が期待できます。
また、M&Aにおいて自社を高値で売るためのポイントや具体的なフロー・期間もご紹介しました。
大手企業をはじめとして多くの会社がM&Aを行うことで、事業拡大などそれぞれの企業が持つ目的を果たしているのです。
今回の記事を参考に、理想のM&Aを進められてください。