設計事務所におけるM&Aの売却・買収について!動向やポイントなどを紹介

「最近、設計事務所によるM&Aが増加傾向にあるって本当?」
「できる限り高値で自身の設計事務所を売却するためにはどうしたらいいの?」

昨今、中小・大規模設計事務所によるM&Aが増えていると聞いて以上のような疑問を抱いた方もいるのではないでしょうか。

実際、あらゆる規模の設計事務所が様々な目的でM&Aを利用している傾向にあり、中には専門性を持つ設計事務所の買収を望む買い手も多くいます。

この記事では、設計事務所におけるM&Aの最近の動向、経営者にとってのM&Aのメリット、設計事務所がM&Aを成功させるポイントなどをM&A事例と共にご説明します。

1.設計事務所のM&A動向

設計事務所は、わずかな資本や設備で経営を行う小規模経営が多いため、従業員数が少なかったり設計者が個人経営していたりする場合が多いです。
そのため、事業継承を試みても後継者がいないことやオーナーである設計者がリタイアすることで廃業せざるを得ないことがあるのです。

一方設計事務所の業務には、専門的な知識を必要とし様々な規模が存在するため、あらゆる業界の需要を満たしているケースもあります。
例えば設計事務所におけるM&Aの中には、設計事務所が持つ取引先に目をつけて買収を考える買い手側もいます。
そのほかにも、建築需要が量から質へと変わっていく現代において独自性のある建築士を従業員として抱えている設計事務所は高く評価されます。

このように市場の変動や時代の流れによる需要の変化を考慮した上で、M&Aへの準備を行うことが成功の鍵と言えます。

2.経営者にとってのM&Aのメリット

現在、設計事務所では後継者や従業員の不在が原因で倒産・廃業することを避けるために、解決策としてM&Aを利用するケースも少なくありません。

設計事務所の経営者にとってM&Aをすることで具体的なメリットがあるのかを順にご説明します。

(1)売り手側企業のメリット

M&Aにおける売り手側企業のメリットは主に4つを順にご説明します。

(a)将来の営業利益を確保できる

設計事務所をM&Aによって売却・事業継承することの売り手側のメリットは、将来の営業利益を確保できることです。

設計事務所におけるM&Aでは、今までの取引先や在籍している設計者が持つスキルなど、有形資産だけでなく無形資産も評価されます。
そのため、評価対象が高評価であればあるほどより高額で自身の設計事務所を売却・事業継承することができるのです。
売却・事業継承によって得た利益は、新しい事業を立ち上げる目的で利用したり引退後の生活に充てたりと自由に使うことができます。

将来の営業利益を獲得するためにM&Aを実施することは珍しくなく、売り手側のメリットでもあるのです。

(b)社員の雇用が守られる

設計事務所がM&Aを実施することの売り手側のメリットとして、自身の社員の雇用が守られることが挙げられます。

仮に設計事務所が倒産・廃業してしまうと従業員の雇用を守ることはできませんが、M&Aによって売却・事業継承すると社員の雇用は買い手側に引き継がれることになります。
また、自社よりも財務基盤が安定している買い手側とM&Aを行うと、従業員はより安定した環境で働くこともできます。

このように、今まで自社で懸命に働いてきた社員の信頼を失わないためにも、M&Aを利用することで廃業・倒産を避けられるだけでなく社員の雇用も守れるのです。

(c)自社を成長させることができる

設計事務所の経営者がM&Aを利用して自社を売却・事業継承すると、自社を成長させることもメリットと言えます。

M&Aによって買い手側の傘下に入れば、彼らのもつ経営資源を活用しながら自身の設計事務所は成長することができます。
例えば中小設計事務所の場合、一定の規模になると取引先を開拓するための資本力が足りなかったり、人材の数、案件の実績が不足していることが原因で、それ以上の発展が困難になることがあります。
このような場合にM&Aを利用して、大手設計事務所の傘下に入ることで資産や人材不足などの成長を阻害する原因を断ち、成長しやすくなるのです。

自身の設計事務所を今以上に成長させたいと考えている経営者の中には、M&Aを一つの方法として利用します。

(d)次の事業に集中できる

自身の設計事務所をM&Aによって売却・事業継承することで、次の事業に集中できるというメリットがあります。

中小設計事務所の場合、従業員が少ないことが多く会社の経営がオーナーの能力に依存してしまうケースがよくあります。
そのため、経営者が他の事業に集中したかったり新規事業の立ち上げを考えていたりしても、それらが叶わないのです。

M&Aを実施すれば、外部の会社のノウハウを利用しオーナーの能力に依存しなくても経営が成立します。
また、M&Aでは将来の営業利益を獲得できるため、それらを利用して次の事業に集中することができるのです。

このように、設計事務所におけるM&Aの売り手側のメリットとしては、経営者が次の事業に集中できることが挙げられます。

(2)買い手側企業のメリット

設計事務所のM&Aにおける買い手側企業のメリット3つを順にご説明します。

(a)人材を確保できる

設計事務所をM&Aによって買収することの買い手側のメリットとして、人材を確保できることが挙げられます。

現在、建設業界は人手不足が深刻な課題となっており設計士の需要が日々高くなっています。

また建設業界における事業拡大を成功させるためには、一級建築施工管理技士など有資格者の存在が必要となる一方で、それらの人材育成・確保には時間がかかるのです。

M&Aを実施することで、このような有資格者や優秀な人材をまとめて確保することができるのです。

(b)事業立ち上げの時間・コストを削減できる

設計事務所においてM&Aを実施することには、事業立ち上げの時間・コストを削減できるメリットがあります。

設計事務所で事業の立ち上げを行うためには、優秀な人材や機械設備などのリソースが必要となるため時間やコストがかかってしまいます。
また、新たに新規事業として建設業界へ参入することはリスクも大きく簡単ではありません。

M&Aで設計事務所を買収することで、新たな事業の立ち上げに対する時間・コストを削減できるのです。

(c)シナジー効果が期待できる

設計事務所をM&Aで買収することで、売り手側と買い手側の間でシナジー効果を期待することができます。

売り手側である設計事務所に安定した顧客・取引先があったり実績を積んでいたりする場合、買い手側にとって将来の利益がある程度確保されていると言えます。
また、例えば独自性を持った建築士を買い手側が必要としている場合、該当する人材を持つ設計事務所を買収することでシナジー効果が期待できます。

買い手側の弱みを補完したり強みを補強したりするために、M&Aを利用して設計事務所を買収・事業譲受することも一つのメリットと言えます。

3.設計事務所のM&Aの相場

設計事務所のM&Aにおける売却金額は、事業規模や事業の将来性などによって変動するため一概に相場を断言することはできません。

設計事務所の価値は、コストアプローチ(時価純資産法)、インカムアプローチ(DCF法)、マーケットアプローチ(類似会社比較法)の3つの方法で算出されます。

それぞれの計算方法は以下になります。

【コストアプローチ(時価純資産法)】
時価に置き換えた資産 ー 時価に置き換えた負債

【インカムアプローチ(DCF法)】
フリーキャッシュフロー1年目/(1+割引率)+ フリーキャッシュフロー2年目/(1+割引率)2 + フリーキャッシュフロー3年目/(1+割引率)3 ・・・

【マーケットアプローチ(類似会社比較法)】
類似会社の株式時価総額 ÷ 類似会社の指標(売上高や営業利益)=係数
評価対象企業の指標(類似会社の指標)× 係数=企業価値

4.設計事務所がM&Aで高値で売却するためのポイント

設計事務所がM&Aを利用して、自社をより高い金額で売却するためには主に5つのポイントを意識するといいでしょう。

順にご紹介します。

(1)安定した顧客・取引先を確保する

設計事務所がM&Aを利用してより高額で自社の売却するためには、安定した顧客・取引先を確保することが重要です。

設計事務所をM&Aで買収・事業譲受する買い手側の多くは、設計事務所が既に持っている顧客や取引先を引き継ぐことを期待します。

そのため、安定した顧客・取引先がなかったりM&Aの途中で彼らとの取引がなくなってしまったりすると、買い手側からの評価は低くなります。

設計事務所をM&Aによってより高額で売却・事業譲渡するためには、安定した顧客・取引先を確保することを推奨します。

(2)M&A成立後のトラブルへの対策を練る

M&Aを利用して設計事務所をより高値で売るために、M&A成立後のトラブルへの対策を事前に練っておきましょう。

買い手側にとって、買収を考えている設計事務所においてトラブルが起こった場合の処理方法やどちらが責任を負うのかが明瞭であるほうが、安心にM&Aを進めることができます。

一般的には、株式譲渡契約書などでトラブル発生時に元のオーナーか新しいオーナーのどちらが責任を負うのかを定めることが多いです。

これらの対策を事前に講じておくことで、買い手側からの売り手に対する信頼も高まると言えます。

(3)キーマンの離脱を防ぐ

設計事務所の売り手側は、自社のキーマンの離脱を防ぐことでM&Aにおいてより高額で自社を売却することができます。

現在、建設業界における人材不足が問題視されているだけでなく、市場において建設物の量より質を求める傾向にあります。

そのため、より高い技術を持った建築士や一級建築施工管理技士など何らかの資格を有している人材が在籍する設計事務所の企業価値は高まります。

設計事務所のM&Aにおける売り手側は、それらの優秀な人材が退職するのを防ぐことでより高値で買い手側に売却・事業継承することができるのです。

(4)収益予測値を検討する

設計事務所がM&Aにおいてより高い金額で売却するためには、収益予測値を検討することを推奨します。

売り手側が買い手側に客観的なデータとして収益予測値を算出することで、買い手側は将来性を明確に知ることができます。
例えば、今までの取引先などの顧客リストや実績をまとめておくと、将来安定した利益を得ることが可視化されます。

買い手側にとってわかりやすいように収益予測値を検討することで、より高値で自社をうることができるのです。

(5)買い手企業とのシナジーを検討する

設計事務所におけるM&Aの買い手側の目的の一つに、自社のシナジー効果の期待が挙げられます。

M&Aにおいて、売り手側は買い手側が自社を買収・事業譲受することでどのようなシナジー効果が生まれるのかを伝える必要があります。
例えば、買い手側が新規事業を立ち上げるためにM&Aの利用を考えている場合は、自社を買収することで時間や労力を削減することを伝えるのです。

自社の実績や人材など買い手企業とのシナジー効果を検討し、相手に伝えることでより高額で売却できるのです。

5.M&A業者を選定するポイント

設計事務所におけるM&Aをスムーズに成功させるためには、自社にとって適切なM&A業者を選定する必要があります。

自社のニーズに合ったM&A業者を選ぶにはどのようなポイントを確認するといいのかを順にご紹介します。

(1)同業種・同規模で実績があるか確認する

設計事務所におけるM&Aを成功させるためには、同業種・同規模で実績のあるM&A業者に依頼するといいでしょう。

M&Aを利用する業界は多種多様であるため、単に実績が多いからといってM&Aを成功させられるとは限りません。

M&Aを利用してより高額で設計会社を売却するためには、業界の動向や市場ニーズを理解し、売り手側と買い手側のシナジー効果を検討する必要もあります。

また、設計事務所にも中小企業や大手企業がありそれぞれM&Aの規模も異なるため、同規模での実績がある業者に依頼することが重要です。

設計事務所におけるM&Aを成功させるためには、同業種かつ同規模で実績があるM&A業者に依頼することを推奨します。

(2)仲介以外の業務領域を支援してもらえるか確認する

自社のニーズにあったM&A業者を選定するポイントとして、仲介以外の業務を支援してもらえるかどうかを確認することが挙げられます。

M&A業者の本来の業務は仲介であるため、それ以外の業務を支援する義務は基本的にありません。

しかし、M&Aでは企業価格を算出したり自社の企業価値を上げるために工夫したりする場面も多いのです。

そのため、仲介以外にも株価算定の業務支援や企業価値を上げるためのアドバイスなどの支援を行ってくれる業者を選ぶことで、自社のニーズにあったM&Aを成功させることができます。

設計事務所におけるM&Aを成功させるためには、仲介以外の業務領域を支援してもらえるM&A業者を選定することを推奨します。

(3)費用体系を確認する

設計事務所でのM&Aを業者に依頼する場合は、費用体系を確認するといいでしょう。

M&A業者によって、着手金が無料であったり、成功報酬のみであったり、月額報酬であったりと費用体系は様々です。

 

M&A業者の報酬体系例

着手金

・業者へ正式な依頼を行った時点で支払う

・着手金相場:0〜300万円程度

中間金

・一般的に基本合意書の締結時に支払う

・中間金相場:固定報酬の場合、成功報酬の10〜30%の場合

成功報酬

・M&Aの最終契約締結時に支払う

・成功報酬相場:売買契約の1〜5%(レーマン方式*)

月額報酬

(リテイナーフィー)

・毎月定額で支払う

・月額報酬相場:0〜100万円程度

*レーマン方式とは、買収価格のレンジによって手数料率が変動する計算方法を指します。

以下が、一般的なレーマン方式による手数料率です。

・5億円まで ・・・5%
・5〜10億円まで ・・・4%
・10〜50億円まで ・・・3%
・50〜100億円まで ・・・2%
・100億円超 ・・・1%

なお、ユニヴィスでは上述のレーマン方式を採用しており、最低報酬金額の設定はありません。同業他社が最低報酬金額の設定を行っており、売却金額によっては手数料が高いと感じられるケースもありますが、ユニヴィスではそういった最低報酬金額の設定が無いため、単純な売却金額に対する比率のみで進めることが可能です。

また、報酬金額はご依頼者様の案件の内容に応じて相談を実施させていただいております。

自社にとってどのような費用体系が最適かどうかを判断し、それに合ったM&A業者に依頼することをおすすめします。

6.M&Aの流れ・スケジュール

M&Aの流れ

内容

期間

M&A仲介会社の選定

M&A仲介会社を選定し、相談を経て買い手候補を探す

2〜3ヶ月

IM/ノンネームの作成

譲受企業にM&Aを検討してもらうために譲渡企業の企業概要を開示する

〜1ヶ月

ロングリストの作成

M&Aによってシナジーが期待できる企業をリストアップ

〜1ヶ月

TOP面談

譲渡企業と譲受企業が顔合わせをして企業理念などの相互理解を深める

1〜2ヶ月

意向表明/基本合意

譲渡対象範囲や金額などの基本条件を合意した段階で締結

2〜3ヶ月

デューデリジェンス

対象会社の財務・法務・人事・システム・環境等を調査する

1〜2ヶ月

SPA/クロージング

M&Aにおける経営権の移転を完了させる最終手続き

1〜2ヶ月

(1)M&A仲介会社の選定

M&Aを検討された段階で、専門家に相談するためにM&A仲介会社の選定を行います。

M&A仲介会社などの専門家に相談する上では、売り手企業との秘密保持契約、仲介契約書の締結を行いご自身の会社情報や資料を提出します。

M&Aを検討していることが漏れてしまうと、社員が自社の経営状況が思わしくないと思い退職してしまう可能性があったり、取引先との交渉が終わってしまうことがあります。

そのため、自社がM&Aの検討や交渉を行っているということを外部に漏洩しないと秘密保持契約締結により約束をする必要があります。

また、仲介会社との間で仲介契約書を締結することで業務範囲や報酬に関する取り決めや禁止事項を守る事を約束します。

ご自身の会社情報を提出していただき、それらの資料や経営者との相談を基に仲介会社はM&A先を選定します。

(2)IM/ノンネームの作成

M&Aでは、譲渡企業が譲受候補企業へ企業概要や譲受することでどのようなメリットがあるのかを検討してもらうためにIMと呼ばれる企業概要書を作成します。

そのほかにも、ノンネームと呼ばれる譲渡会社の名前などを明かさない匿名での情報を記載する資料を提示するケースもあります。

秘密保持契約締結後に締結するIMとは異なり、秘密保持契約締結前に情報を開示するため会社名などを特定できない粒度の情報が記載されます。

以下が、IM(企業概要書)の記載事項例です。

・企業概要(企業情報、事業概要、所在地、資本金など)
・事業内容(取引先の情報、取引の流れなど)
・組織概要(組織図、株式・役員構成、潜在株、従業員構成など)
・財務状況(直近3年程度の損益計算書・賃借対照表など)
・今後の事業企画
・その他(許認可や法規制に関する事項があれば記載)

(3)ロングリストの作成

次に、M&Aの一定の条件を満たした買収・売却候補を集めた企業リストであるロングリストを作成します。

ロングリストは、M&Aによって得られるシナジー、利益、経営面において重要なプロセスになります。

そのため、経営者はM&Aの目的を定めそれに沿って慎重に作成を進める必要があります。

ロングリスト作成時には、自社の利益のみならず相手企業とのシナジーを考慮することが重要と言えます。

具体的には、M&Aを成功させることで経済的にどのようなシナジー効果が得られるのか、双方のノウハウや技術を事業で活かせることができるかなどが挙げられます。

M&A仲介会社が作成したロングリストを確認し、自社と相性が良さそうな企業名を伝える等すると良いでしょう。

(4)TOP面談

次に、譲渡企業と譲受候補企業の経営者など意思決定者同士が最初のコンタクトとしてTOP面談を行います。

TOP面談は、譲渡企業の書面での検討を済ませ前向きに譲受を判断したタイミングで実施され、一度で相互理解しきれなかった場合は複数回実施されることもあります。

TOP面談では、今後PMIをスムーズに進ませシナジー効果を生み出すためにも企業・経営理念や文化などの相性を確認します。

また、IM・ノンネームなどの企業概要や事業内容等に関する疑問点を質問する場として活用してもいいでしょう。

(5)意向表明/基本合意

M&Aでは、最終契約の前に基本事項について譲渡企業と譲受候補企業が合意したことを書面で確認するために意向表明や基本合意を締結します。

意向表明書は譲受候補企業から意思表明文書を提示し、基本合意書は双方が交渉を通して合意文書を結ぶのです。

意思表明や基本合意は、譲受候補企業が譲渡企業へ買収に関する基本条件を提示し交渉を継続すると決定した時点で締結します。

これらを締結することで、スケジュールの明確化や買収価格の上限設定などを図ることができます。

(6)デューデリジェンス

M&Aにおけるデューデリジェンスでは、買収対象企業のリスクを把握し経営統合を図るために、対象会社の概要は価値を詳しく調査します。

対象会社の財務・法務・人事・システム・環境などを詳細に把握し、人財や外部の税理士、弁護士、公認会計士などを含む買収対象企業のリスクも徹底的に調べます。

まず、デューデリジェンスの期間・種類やコストの見積もりを含めた実施方針を決定し、ミーティングを行ったのち実際に調査を始めます。

デューデリジェンスを通じて過去の情報だけでなく、今後の事業計画などの経営情報を分析するのです。

(7)SPA/クロージング

最後に、譲渡企業と譲受企業が株式の譲渡やその他の条件に合意すればSPA・クロージングを行い、最終契約書を締結します。

このクロージングが実行されることでM&Aの手続上フローは完了するのです。

クロージングでは様々な混乱が生じる可能性があるため、契約内容・前提条件やM&Aスキームに応じて準備を行う必要があります。

具体的には、譲渡範囲において譲渡する資産・債権・債務などを企業価値やリスクを考慮した上で細かく決めます。

これらの事項が決定すれば最終譲渡契約であるSPA・クロージングを実行してM&Aの手続きが完了するのです。

7.設計事務所のM&A事例

設計事務所のM&A事例を順にご紹介します。

(1)前田建設工業と前田道路

2020年、前田建設工業は道路舗装の前田道路との間でM&Aを実施しました。

前田建設工業は、グループ内の一体感向上と技術力や顧客基盤などの経営資源の共有を目的としています。

(2)大森工業と井口建設

2018年、井口建設は大森工業との間で株市場との手法でM&Aを実施しました。

大森工業のM&Aを行った目的は、グループ全体の収益力向上と事業基盤の拡大を実現するためでした。

(3)ヤマダ電機とレオハウス

2020年、レオハウスは家電販売会社であるヤマダ電機との間で株式譲渡の手法でM&Aを実施しました。

買い手側であるヤマダ電機は、自社事業とのシナジー効果を期待し住宅などに関する事業を運営するレオハウスを買収しました。

(4)SDネットワークとカーリットホールディングス

2017年、SDネットワークは化学品、ボトリング、産業用部材の設計・管理を手がけるカーリットホールディングスへ自社を売却しました。

買い手側であるカーリットホールディングスは、収益基盤の強化を目的としています。

まとめ

建設業界では、昨今人材不足が問題視されており市場ニーズも建設物の量より質を重視される傾向にあります。

そのため、設計事務所におけるM&Aを成功させるためには独自のスキルを持つ優秀な人材や安定した収入が得られる顧客リストを持っていることが、鍵となります。

買い手側とのシナジー効果を検討したり客観的なデータとして収益予測値を提示することで、より高額で自社を売却・事業譲渡をできるでしょう。

今回の記事を参考に、理想のM&Aを進められてください。