人材派遣会社におけるM&Aの売却・買収について!動向やポイントなどを紹介
「近年、人材派遣会社のM&Aが増えているって本当?」
「人材派遣会社のM&Aを成功させるためにはどのようなことに気をつければいいの?」
人材派遣会社のM&Aを検討してこのような疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
昨今、人材派遣会社は大手企業のM&Aによる業界再編が多いため、生き残るためには積極的にM&Aを検討することが賢明と言えます。
本記事では、人材派遣会社の最近のM&A動向、人材派遣会社におけるM&Aのフロー、より高値で売却する方法などを詳しくご紹介します。
目次
1.人材派遣会社のM&A動向
人材派遣業界は、2008年以降の景気悪化により中小企業をはじめとして売却を希望する企業が増加傾向にあります。
また近年では、人材派遣会社が求人データやマッチング機能をインターネット上のシステムとして利用しており、マッチングプラットフォームとしてサービスを展開しています。
自社独自のネットワークやSNSなど他社のプラットフォームを通してマッチングを行うサービスが増加しているため、人材派遣会社の企業価値は高まっています。
人材派遣会社には、求人広告、職業紹介、派遣、請負事業に大別されそれぞれ派遣職種の規模拡大を目的としたM&Aに限らず、大手海外企業の買収や請負・受託系を強化するための買収も加速しています。
2.経営者にとってのM&Aのメリット
現在M&Aは、主に事業継承などの問題を解決する方法の一つとして注目されており、売り手側・買い手側の企業双方にとってメリットをもたらすと言えます。
具体的なメリットを順にご説明します。
(1)売り手側企業のメリット
人材派遣会社のM&Aにおける売り手側企業のメリットは主な6つを順にご説明します。
(a)法改正後の基準資産額に対応できる
人材派遣会社のM&Aにおける売り手側のメリットは、派遣法改正後の許可要件である基準資産額に対応できる点です。
人材紹介・派遣事業ではそれぞれ資本金や財産基準額が定められており、労働局へ基準を満たしていることを証明し許可を得なければ事業を始めることができません。
労働局からの許可を得た後も一定期間が経つと許可更新申請をしなければならないため、法改正に伴い基準資産額に対応できない企業も少なくありません。
人材派遣会社の売り手にとって、M&Aで自社を売却することで派遣法改正後の基準資産額に対応でき、自社を廃業・倒産に追い込まずに済む点が挙げられます。
(b)将来の営業利益を先に手に入れられる
人材派遣会社の経営者は、自社をM&Aにより売却・事業継承することで将来の営業利益を先に手に入れられるメリットがあります。
M&Aで自社を売却・事業継承すると、人材派遣会社の規模や売上高に応じた営業利益を獲得することができます。
M&Aでは、土地や建物などの有形資産はもちろん人材のスキル、技術力、取引先、市場シェアなどの無形資産も評価されます。
そのため、例えば自社独自のサービスなどを展開している場合はそれらも含めて評価されることになります。
それらの利益を総合して算出された利益は、人材派遣会社の売り手側企業経営者が受け取り、経営者はその利益を新規事業資金や老後の生活資金など自由に利用できるのです。
(c)連帯保証が解消される
人材派遣会社の経営者は、自社をM&Aすることで借入金の連帯保証から解消されることができます。
もちろん、借入金の連帯保証を外すためには買い手側が連帯保証を引継ぐことを承諾する必要がありますので、売り手側はその旨を表明する必要があります。
買い手側がその条件をのんで契約が成立すると、借入等の連帯保証は解消され債務の精神的ストレスからも解放されるのです。
自社をM&Aで売却・事業継承すると、売り手側から買い手側に連帯保証が引き継がれるため、売り手側の経営者は精神的な負担を減らすことができるのです。
(d)社員の雇用が守られる
人材派遣会社の経営者がM&Aで得られるメリットとして、社員の雇用が守られることが挙げられます。
仮に自社が経営困難などで廃業・倒産してしまった場合、社員は解雇となり路頭に迷ってしまいます。
M&Aを利用して自社を売却・事業継承した場合、売り手側が社員の雇用確保を条件交渉することで社員の雇用も継続されます。
このように、人材派遣会社がM&Aで自社を売却・事業継承することで、自社が廃業・倒産となることもなく社員の雇用も守られるのです。
(e)経営の不安から解放される
M&Aで人材派遣会社を売却・事業継承すると、経営者は経営の不安から解放されることになります。
会社の経営者は、常に社員や経営のことを考える必要がありますが、経営が常に順調に進むとも限りません。
今までの努力で築き上げてきた自身の会社を維持したいと望む一方で、経営の不安がストレスになってしまうかもしれません。
このような場合にM&Aを利用することで、会社を残したままご自身は経営の不安から解放されることができます。
(f)次の事業に集中できる
人材派遣会社の経営者は、M&Aにより自社を売却・事業継承することで次の事業に集中することができます。
会社の経営を安定させる目的などで事業拡大をや新規事業をスタートさせる経営者は少なくありません。
そのような場合、もともとの事業と同時にコストや労力を費やす必要があり、思うように事業を進められない可能性もあります。
M&Aでは、事業譲渡のスキームで不要となった事業だけを選別して売却することができるため、次の事業に集中できるのです。
このようにM&Aによって自社を売却・事業継承することで、今までの事業とは異業種への可能性を広げることができるでしょう。
(2)買い手側企業のメリット
M&Aにおける買い手側企業のメリットを主に4つを順にご説明します。
(a)ノウハウ・事業を素早く手に入れられる
買い手側企業は、M&Aを利用することでノウハウ・事業を素早く獲得することができます。
新規事業を始める場合、土地や建物、人材など必要なものを全てゼロから入手するためその分の時間や労力がかかってしまいます。
しかし、M&Aでは事業が継続された状態で会社を買収することができるため、時間や労力をかけずにその会社が持つノウハウ・事業を入手できるのです。
人材派遣会社をM&Aで買収すると、その会社の優秀な人材やサービスを受け継ぐことができるため、時間をかけずにノウハウ・事業を手に入れることができます。
(b)事業を内製化できる
人材派遣会社をM&Aで売却・事業継承すると、売り手側の事業を自社へ内製化することができます。
人材派遣会社の事業をM&Aによって内製化すると、社外に個人情報や機密情報を渡さずに済む、社内にノウハウを蓄積できる、素早い対応ができる、などのメリットがあります。
特に、売り手側の会社の強みが買い手側の弱みを補完できる要素であれば特に、事業を内製化することで自社の成長につながるかもしれません。
内製化すべき事業の実現を図るためにM&Aを利用することで、将来的な利益向上を目指せるのです。
(c)必要な人材を一括確保できる
人材派遣会社をM&Aで買収することで、その会社で働く優秀かつ経験豊富な人材を一括確保できるメリットがあります。
現在、人材派遣業界では人手不足が問題視されており、優秀な人材はもちろんそもそも人材を獲得することが難しい状況と言えます。
しかし、M&Aを利用して売り手側の会社を買うことで必要な人材を一括で確保することができるのです。
このように、M&Aは買い手企業に人材不足を解消できるという点でメリットをもたらすのです。
3.人材派遣会社のM&Aの相場
人材派遣会社のM&Aにおける売却金額は、事業規模や事業の将来性などによって変動するため一概に相場を断言することはできません。
ただし、多くの場合は営業利益2〜5年分+純資産額が人材派遣会社のM&Aの相場と言われています。
業種の特性や対象企業の強みなどの違いで、営業利益年数に変動はありますが、一般的には2年または3年で算出するケースが多いです。
4.人材派遣会社がM&Aで高値で売却するためのポイント
人材派遣会社がM&Aを利用して、自社をより高い金額で売却するためには主に3つのポイントを意識するといいでしょう。
順にご紹介します。
(1)キーパーソンの離脱を防ぐ
人材派遣会社をM&Aでより高値で売却するためには、自社のキーマンである優秀な社員の離脱を防ぎましょう。
買い手側は、会社の企業価値を売り手側の会社のサービスや優秀な人材の存在などから算出します。
そのため、売り手側のキーパーソンが離脱してしまえば会社の企業価値も低くなってしまう可能性があります。
人材派遣会社においてM&Aで自社をより高値で売却するためには、自社のキーパーソンが辞めてしまわないように工夫することが賢明です。
(2)収益予測値を検討する
人材派遣会社がM&Aにおいてより高い金額で売却するためには、収益予測値を検討することを推奨します。
M&Aで買収を検討する買い手側は、売り手側の経営状況や売り手側とのシナジー効果を総合的に見てM&Aの実施を判断します。
そのため、売り手側の企業が将来どのくらいの利益を出すのかを見積もる必要があるのです。
売り手側は、自社の収益予測値を検討しそれを買い手側に提示することで将来性が明確にしましょう。
客観的なデータとして取引先の顧客リストや自社の将来性を証明するための資料をまとめておくといいでしょう。
(3)買い手企業とのシナジーを検討する
人材派遣会社におけるM&Aでより高額で買い手側に自社を売却するためには、買い手側の企業とのシナジーを検討することを推奨します。
M&Aを利用する買い手企業は、自社の弱みを補完したり強みをより強めたりする目的で買い手側の企業の買収を検討します。
例えば、売り手側の会社で働く人材の経験・ノウハウや会社が持つ機械・技術を買収することで得られるシナジーを期待してM&Aを実施するケースも多いです。
これらのシナジーを売り手側の会社が交渉の際に買い手側に明確化することで、企業価値も高まるでしょう。
人材派遣会社の売り手側は、買い手側とのシナジー効果を検討することで、より高額で売却できるでしょう。
(4)安定した受注先を確保する
より高い金額で自社を売却するために、売り手側は安定した受注先を確保することを推奨します。
例えば、自社の長期間にわたる取引先や自社独自の顧客リストなどがあると、安定した収入を確保できることが証明できます。
自社独自の顧客リストは他社にない顧客が存在することもあり、買い手側にとって魅力的であると言えます。
M&Aの際は、安定した受注先を確保することを念頭に置いておくと、売却の際に有利になり得ます。
(5)事業許可の引継ぎ方に留意する
人材派遣会社は、M&Aを利用して自社を売却するために事業許可の引継ぎ方に留意しましょう。
人材派遣会社を事業譲渡する際、買い手側は労働者派遣事業の許可を引き継ぐことができません。
買い手側が許可を持っていない場合新規で許可を得る必要があり、許可の取得には時間がかかってしまいます。
そのため、人材派遣会社の事業譲渡を検討している際は労働者派遣事業の許可をすでに取得している同業者とM&Aを実施するといいでしょう。
5.M&A業者を選定するポイント
人材派遣会社におけるM&Aをスムーズに成功させるためには、自社にとって適切なM&A業者を選定する必要があります。
自社のニーズに合ったM&A業者を選ぶにはどのようなポイントを確認するといいのかを順にご紹介します。
(1)同業種・同規模で実績があるか確認する
人材派遣会社におけるM&Aを成功させるための業者の選定方法として、同業種・同規模での実績があるかどうかを確認することが重要です。
M&A業者は、様々な業種のM&Aを支援するため同業種・同規模での実績がある業者を選ぶことで、自社のニーズに合った提案をしてもらえます。
特に、人材派遣会社には求人広告、職業紹介、派遣、請負事業に大別されるためそれぞれの実績がある業者であればなお良いかもしれません。
同業種・同規模で実績があり、売り手側と買い手側双方にメリットのある提案ができる業者にM&Aを支援してもらうことで自社のニーズに合ったM&Aを成功させられるでしょう。
(2)仲介以外の業務領域を支援してもらえるか確認する
人材派遣会社のM&Aを成功させるためには、仲介以外の業務領域を支援してもらえる業者を選ぶことを推奨します。
M&A業者の主な業務は、売り手企業と買い手企業を仲介することですがM&Aを進めるためには、デューデリジェンスの対応や売買価格の算定が必要となります。
そのため、仲介以外に売り手側との交渉に関するアドバイスや株価算定といった業務の支援をしてもらえるかを確認すると良いでしょう。
M&A業者の主な業務である仲介以外の業務領域を支援してもらえるかを確認することで、自社のニーズに合ったM&Aを成功させられるでしょう。
(3)費用体系を確認する
人材派遣会社でのM&Aを業者に依頼する場合は、費用体系を確認するといいでしょう。
M&A業者によって、着手金が無料であったり、成功報酬のみであったり、月額報酬であったりと費用体系は様々です。
分類 |
M&A業者の報酬体系例 |
着手金 |
・業者へ正式な依頼を行った時点で支払う |
中間金 |
・一般的に基本合意書の締結時に支払う |
成功報酬 |
・M&Aの最終契約締結時に支払う |
月額報酬 |
・毎月定額で支払う |
*レーマン方式とは、買収価格のレンジによって手数料率が変動する計算方法を指します。
以下が、一般的なレーマン方式による手数料率です。
- 5億円まで ・・・5%
- 5〜10億円まで ・・・4%
- 10〜50億円まで ・・・3%
- 50〜100億円まで ・・・2%
- 100億円超 ・・・1%
なお、ユニヴィスでは上述のレーマン方式を採用しており、最低報酬金額の設定はありません。
同業他社が最低報酬金額の設定を行っており、売却金額によっては手数料が高いと感じられるケースもありますが、ユニヴィスではそういった最低報酬金額の設定が無いため、単純な売却金額に対する比率のみで進めることが可能です。
また、報酬金額はご依頼者様の案件の内容に応じて相談を実施させていただいております。
自社にとってどのような費用体系が最適かどうかを判断し、それに合ったM&A業者に依頼することをおすすめします。
6.M&Aの流れ・スケジュール
M&Aの流れ |
内容 |
期間 |
M&A仲介会社の選定 |
M&A仲介会社を選定し、相談を経て買い手候補を探す |
2〜3ヶ月 |
IM/ノンネームの作成 |
譲受企業にM&Aを検討してもらうために譲渡企業の企業概要を開示する |
〜1ヶ月 |
ロングリストの作成 |
M&Aによってシナジーが期待できる企業をリストアップ |
〜1ヶ月 |
TOP面談 |
譲渡企業と譲受企業が顔合わせをして企業理念などの相互理解を深める |
1〜2ヶ月 |
意向表明/基本合意 |
譲渡対象範囲や金額などの基本条件を合意した段階で締結 |
2〜3ヶ月 |
デューデリジェンス |
対象会社の財務・法務・人事・システム・環境等を調査する |
1〜2ヶ月 |
SPA/クロージング |
M&Aにおける経営権の移転を完了させる最終手続き |
1〜2ヶ月 |
(1)M&A仲介会社の選定
M&Aを検討された段階で、専門家に相談するためにM&A仲介会社の選定を行います。
M&A仲介会社などの専門家に相談する上では、売り手企業との秘密保持契約、仲介契約書の締結を行いご自身の会社情報や資料を提出します。
M&Aを検討していることが漏れてしまうと、社員が自社の経営状況が思わしくないと思い退職してしまう可能性があったり、取引先との交渉が終わってしまうことがあります。
そのため、自社がM&Aの検討や交渉を行っているということを外部に漏洩しないと秘密保持契約締結により約束をする必要があります。
また、仲介会社との間で仲介契約書を締結することで業務範囲や報酬に関する取り決めや禁止事項を守る事を約束します。
ご自身の会社情報を提出していただき、それらの資料や経営者との相談を基に仲介会社はM&A先を選定します。
(2)IM/ノンネームの作成
M&Aでは、譲渡企業が譲受候補企業へ企業概要や譲受することでどのようなメリットがあるのかを検討してもらうためにIMと呼ばれる企業概要書を作成します。
そのほかにも、ノンネームと呼ばれる譲渡会社の名前などを明かさない匿名での情報を記載する資料を提示するケースもあります。
秘密保持契約締結後に締結するIMとは異なり、秘密保持契約締結前に情報を開示するため会社名などを特定できない粒度の情報が記載されます。
以下が、IM(企業概要書)の記載事項例です。
・企業概要(企業情報、事業概要、所在地、資本金など)
・事業内容(取引先の情報、取引の流れなど)
・組織概要(組織図、株式・役員構成、潜在株、従業員構成など)
・財務状況(直近3年程度の損益計算書・賃借対照表など)
・今後の事業企画
・その他(許認可や法規制に関する事項があれば記載)
(3)ロングリストの作成
次に、M&Aの一定の条件を満たした買収・売却候補を集めた企業リストであるロングリストを作成します。
ロングリストは、M&Aによって得られるシナジー、利益、経営面において重要なプロセスになります。
そのため、経営者はM&Aの目的を定めそれに沿って慎重に作成を進める必要があります。
ロングリスト作成時には、自社の利益のみならず相手企業とのシナジーを考慮することが重要と言えます。
具体的には、M&Aを成功させることで経済的にどのようなシナジー効果が得られるのか、双方のノウハウや技術を事業で活かせることができるかなどが挙げられます。
M&A仲介会社が作成したロングリストを確認し、自社と相性が良さそうな企業名を伝える等すると良いでしょう。
(4)TOP面談
次に、譲渡企業と譲受候補企業の経営者など意思決定者同士が最初のコンタクトとしてTOP面談を行います。
TOP面談は、譲渡企業の書面での検討を済ませ前向きに譲受を判断したタイミングで実施され、一度で相互理解しきれなかった場合は複数回実施されることもあります。
TOP面談では、今後PMIをスムーズに進ませシナジー効果を生み出すためにも企業・経営理念や文化などの相性を確認します。
また、IM・ノンネームなどの企業概要や事業内容等に関する疑問点を質問する場として活用してもいいでしょう。
(5)意向表明/基本合意
M&Aでは、最終契約の前に基本事項について譲渡企業と譲受候補企業が合意したことを書面で確認するために意向表明や基本合意を締結します。
意向表明書は譲受候補企業から意思表明文書を提示し、基本合意書は双方が交渉を通して合意文書を結ぶのです。
意思表明や基本合意は、譲受候補企業が譲渡企業へ買収に関する基本条件を提示し交渉を継続すると決定した時点で締結します。
これらを締結することで、スケジュールの明確化や買収価格の上限設定などを図ることができます。
(6)デューデリジェンス
M&Aにおけるデューデリジェンスでは、買収対象企業のリスクを把握し経営統合を図るために、対象会社の概要は価値を詳しく調査します。
対象会社の財務・法務・人事・システム・環境などを詳細に把握し、人財や外部の税理士、弁護士、公認会計士などを含む買収対象企業のリスクも徹底的に調べます。
まず、デューデリジェンスの期間・種類やコストの見積もりを含めた実施方針を決定し、ミーティングを行ったのち実際に調査を始めます。
デューデリジェンスを通じて過去の情報だけでなく、今後の事業計画などの経営情報を分析するのです。
(7)SPA/クロージング
最後に、譲渡企業と譲受企業が株式の譲渡やその他の条件に合意すればSPA・クロージングを行い、最終契約書を締結します。
このクロージングが実行されることでM&Aの手続上フローは完了するのです。
クロージングでは様々な混乱が生じる可能性があるため、契約内容・前提条件やM&Aスキームに応じて準備を行う必要があります。
具体的には、譲渡範囲において譲渡する資産・債権・債務などを企業価値やリスクを考慮した上で細かく決めます。
これらの事項が決定すれば最終譲渡契約であるSPA・クロージングを実行してM&Aの手続きが完了するのです。
7.人材派遣会社のM&A事例
(1)UTグループと富士通エフサス・クリエ
2021年、UTグループが富士通エフサス・クリエの株式51%を取得し子会社化を図りました。
UTグループは、このM&Aを通して富士通グループとの関係を強化し業績拡大を期待しています。
(2)マイナビとブレイブ
2019年、ブレイブがマイナビに株式を譲渡しました。
マイナビは、このM&Aを通して介護派遣市場における採用力の強化及び拠点拡大を目指しています。
(3)パートナーとウィルテック
2020年、IT技術者の人材派遣を行うパートナーが技術者の人材派遣サービスをメーカーを主として提供するウィルテックへ株式譲渡を行いました。
ウィルテックは、システム開発へのニーズを満たすために高度なスキル・ノウハウを持つパートナーとのM&Aを検討しました。
まとめ
昨今、主に大手企業をはじめとして人材派遣会社のM&Aによる業界再編が多く、生き残るためには積極的にM&Aを検討する中小企業も少なくありません。
M&Aでは、買い手だけでなく売り手側にとっても様々なメリットがあり、M&Aを利用することでシナジー効果が期待されます。
本記事では、M&Aにおいてより高値で自社を売却する方法や、M&A業者の選定方法、M&Aの手続フローをご紹介しました。
今回の記事を参考に、理想のM&Aを進められてください。