労働者派遣事業の許可はどうやって取るの?7つの条件を徹底解説!
「派遣事業を始めるにはどうしたらいいの?」
「派遣事業許可要件が知りたい!」
このような悩みを抱えた事業主は多いのではないでしょうか?
実は派遣事業の許可要件は多くありますが、要件を満たす事はそう難しいものではありません。
この記事を読んで、派遣事業を始めるための許可要件をしっかりと理解し、事業開始を目指しましょう!
1.派遣事業の定義と開業に必要な条件
この章では派遣事業の基礎知識と開業に必要な条件を解説していきます。
(1)派遣事業とは
派遣事業とは、派遣元事業主が自社で雇用する労働者を、派遣先の指令を受けて派遣先の労働に従事させることです。
労働者の所属は、働いている場所ではなく派遣元企業になるため、給料の支払いも人材派遣企業からになります。
派遣事業主は、登録されている労働者に対して「教育訓練」の義務や労働者と派遣先企業の連絡を仲介する必要があります。
人材紹介事業と間違われることも多いですが、紹介事業は働きたい求職者と採用したい企業の仲介に留まるのみで、求職者が採用された後のサービスは行いません。
(2)派遣事業に必要な7つの条件
派遣事業を開業するために必要な条件を解説します。
派遣事業を始める際に必要な条件は以下の7つとなります。
- 個人情報管理体制
- 資産
- 事務所
- 派遣元事業主
- 派遣元責任者
- キャリアアップ支援
- 専ら派遣を目的としないこと
さらに詳しく知りたい方は厚生労働省HPに掲載されていますのでご確認ください。
それでは順に解説していきます。
#1:個人情報管理体制の条件
労働者派遣事業を始めるために必要な条件の1つ目は個人情報管理体制を整えることです。
個人情報管理体制が整っていることを示すために『個人情報管理体制規程』を作成し提出する必要があります。
この規程では、以下のことを行う必要があります。
- 個人情報を取り扱う職員の範囲の決定
- 職員の情報取り扱いに関する教育
- 個人情報取り扱いに関する苦情対応の責任者を設置する
- 苦情に対して迅速に対応する
上記の『個人情報管理体制規程』を提出し、個人情報を適正に管理するために必要な措置がとられている必要があります。
#2:資産の条件
労働者派遣事業を始めるために必要な条件の2つ目は資産の条件を整えることです。
こちらは以下の記事で詳しく解説を行っているのでぜひ読んでみてください。
#3:事業所の条件
労働者派遣事業を始めるために必要な条件の3つ目は事務所の条件を整えることです。
事業所は立地・規模で以下のような条件を満たしている必要があります。
- 事業に使用し得る面積が概ね20㎡以上である事
- 事業所が風俗営業や性風俗特殊営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないこと
概ね、労働者派遣事業を行うのに適正であれば、事業所の条件を満たすことは難しい事ではありません。
#4:派遣元事業主の条件
労働者派遣事業を始めるために必要な条件の4つ目は派遣元事業主の条件を整えることです。
派遣元事業主は、事業を取り仕切るために以下の条件を満たす必要があり、法人の場合は役員も以下条件を満たす必要があります。
- 労働保険、社会保険の適用基準を満たす派遣労働者の適正な加入を行うものであること。
- 住所及び居所が一定しない等生活根拠が不安定な者でないこと。
- 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること
- 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること
- 派遣元事業主となり得る者の名義を借用して許可を得るものではないこと。
- 外国人の場合は一定の要件の在留資格を有する
派遣元事業主となるための条件は以上ですが、派遣事業の許可要件は事業主の責任であるため、実際にはその他にも多くの要件を満たす必要があります。
#5:派遣元責任者の条件
労働者派遣事業を始めるために必要な条件の5つ目は派遣元責任者の条件を整えることです。
派遣元責任者とは派遣元事業主が適切な雇用管理により労働者を保護する目的で設置が義務づけられている役職で以下が条件となります。
- 未成年でなく、欠格事由に該当しないこと
- 健康で生活根拠が安定していること
- 外国人の場合、在留資格を有していること
- 派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとするものでないこと
- 派遣元責任者講習を受講していること(許可申請の3年以内の受講であること)
- 成人後、3年以上の関連業務への従事経験があること
- 派遣元責任者が日帰りで往復できる地域に労働者を派遣していること(苦情対応のため)
派遣元責任者は労働者100名ごとに1名配置し、不在時のために職務代行者を設置する必要があります。
派遣元責任者講習会は「一般社団法人 日本人材派遣協会」のHP等から参加申し込みが可能で頻繁に開催されています。
#6:キャリアアップ支援の条件
労働者派遣事業を始めるために必要な条件の6つ目はキャリアアップ支援の条件を整えることです。
派遣事業は、労働者を企業に派遣する業務に留まらず、以下の要件を満たすようキャリア形成支援も業務内容に含まれています。
- 派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること
- キャリアコンサルティングの相談窓口を設置していること
- キャリア形成を念頭に置いた派遣先を派遣社員に紹介する手続きが規定されていること
- 教育訓練の時期・頻度・時間が適切である事
ex:入職時は少なくとも最初の3年間は毎年1回以上行い、その後もキャリアの節目など一定期間ごとに研修を用意すること - これらのキャリア支援制度が有給かつ無償で全ての派遣労働者を対象とすること
派遣企業はこれらの条件を満たし、『派遣労働者のキャリア形成を考慮した派遣先提供の事務手引き』や『キャリア形成支援制度に関する計画書』を提出する必要があります。
#7:専ら派遣を目的としないこと
労働者派遣事業を始めるために必要な条件の7つ目は専ら派遣を目的としないことです。
専ら派遣とはグループ企業内や特定の企業のみに人材派遣を行う事で、これを主目的とした人材派遣業は認められません。
専ら派遣が認められてしまうと、企業は正社員よりも派遣社員を労働力として確保するようになるため専ら派遣は認められていません。
2.必要な書類と申請費用
この章では、労働者派遣事業の申請時に必要な書類と費用を解説します。
(1)申請に必要な書類
労働者派遣事業を始める際に必要な書類は個人と法人で異なります。
- 労働者派遣事業許可申請書(様式第 1 号)
- 労働者派遣事業計画書(様式第 3 号、3 号-2)
- 代表者・役員の「住民票」「履歴書」
- 個人情報適正管理規程
- 事業所の使用権を証明する書類(「不動産登記簿謄本」または「不動産賃貸借契約書」)
- 派遣元責任者の書類(「住民票」「履歴書」「派遣元責任者講習受講証明書」)
- 事業所の平面図
- 就業規則又は労働契約の以下の該当箇所
- 就業規則(労働基準監督署の受理印があるページの写し)
- 派遣労働者のキャリア形成を念頭においた派遣先の提供のための事務手引、マニュアル等又はその概要の該当箇所の写し
- 自己チェックシート(様式第15号)
- 企業パンフレット等事業内容が確認できるもの
- 労働者名簿
個人・法人によってそれぞれ追加で別資料が必要なので厚生労働省HPを参考にしてください。
また各書類によって、必要となる部数が異なるので注意をしましょう。
(2)申請にかかる費用
許可申請時は事業所が資産要件を満たしている必要もありますが、申請に際し以下の費用がかかります。
- 収入印紙:12万円+5.5万円×(事業所数-1)
- 登録免許税領収証書:9万円
事業所が1つの場合、12万円+9万円=21万円なので、最低21万円が許可申請時に必要になります。
許可申請にかかる費用は個人・法人とも違いはありません。
3.許可を得るまでの流れと注意点
この章では労働者派遣事業の許可申請の流れと注意点について解説します。
(1)許可がおりるまでの流れ
労働者派遣事業は上記の図の流れで行われます。
事業計画の立案、事務所の準備等は、各都道府県労働局で相談も行っているので気軽に行いましょう。
申請書類も各都道府県労働局に提出を行いますが、審査には2~3ヶ月かかるので注意する必要があります。
(2)派遣事業許可取得に関するQ&A
Q1:許可要件を全て満たさないと労働者派遣事業は始められないの?
A:基本的には、上記で解説した許可要件を全て満たす必要がありますが、財産要件と社会保険・労働保険については一定の猶予があります
財産要件は、企業の資産状況について公認会計士・税理士の承認を得ると、許可要件を必ずしも満たす必要はありません。
詳しくは以下の記事をお読みください。
Q2:社会保険・労働保険に加入していなくても許可申請はできるの?
A:労働保険・社会保険に加入させるべき労働者がいない場合は、加入させるべき労働者が生じた場合には必ず必要な手続きを行う旨の確約を文書を提出するのみで問題はないです。
Q3:一度許可を得たら問題なく事業を継続していけるの?
A:労働者派遣事業は新規に許可を得た場合は3年後に更新を行う必要があり、2回目以降は5年ごとに更新を行う必要があります。
更新の際も様々な書類の提出が必要になるので以下の記事をお読みください。
4.まとめ
この記事では、労働者派遣事業の許可申請の解説を行いました。
労働者派遣事業を始めるには様々な条件を満たす必要がありますが、以下では、更新時に必要な条件も解説しているのでぜひ読んでみてください。