労働者派遣事業の更新って結局何するの?必要な手続きを徹底紹介

「労働局から派遣事業の更新お知らせが来たけど、正直何をすればいいのか全然わからない…」 「何か特別な書類とか手続きが必要になるのかな…」

このようにお考えではありませんか?

実は、派遣事業の更新には、あなたが想像している以上に手間がかかる可能性があります。

この記事では、派遣事業の更新をスムーズに行うために必要な準備や手続きを徹底解説します。

この記事を最後まで読んでいただければ、派遣事業の更新のことで悩むことがなくなります!

1. 労働者派遣事業の更新の方法

労働者派遣事業の更新をスムーズに行うには、事前準備が欠かせません。

ここでは、労働者派遣事業の更新の際に必要となる資料を列挙し、全体的な更新のスケジュールをお伝えした上で、どのような場合に公認会計士の監査が必要になるのかを紹介します。

(1) 労働者派遣事業の更新で必要となる書類

労働者派遣事業の更新には資料が必要となり、その資料は「提出様式」「添付書類」の2つに分かれます。(下記の書類一覧はこちらのPDFより一部抜粋)

提出様式

  • 労働者派遣事業申請書(様式第1号)
  • 労働者派遣事業計画書(様式第3号)
  • キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号−2)
  • 雇用保険等の被保険者資格取得の状況報告書(様式第3号−3)

提出様式の書類はすべて、厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領・様式・各種報告書」より入手可能

添付書類

  • 定款または寄付行為→「本店および支店に帰属」
  • 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)→「法務局の窓口に行って交付請求」
  • 個人情報適正管理規程→「本店および支店に帰属」
  • 派遣元責任者講習受講証明書→「派遣元責任者講習を指定機関で受講し、受講後発行」
  • キャリア形成支援制度を有することを証する書類の該当箇所
  • 直近の事業年度における法人税の納税申告書(別表1および別表4)→「所轄の税務署より入手可能」
  • 直近の事業年度における法人税の納税証明書(その2所得金額用)→「所轄の税務署より入手可能」
  • 直近の事業年度における貸借対照表及び損益計算書→「本店および支店に帰属」
  • 直近の事業年度における株主資本等変動計算書→「本店および支店に帰属」

「提出様式」の書類には、何か特別な条件があるわけではないので、説明については割愛します。

対照的に「添付書類」の方には細かな条件があり、書類数も多いので、ひとつずつ紹介していきます。

#1:定款または寄付行為

すでにご提出されている定款から変更があった場合にのみ提出が必要となります。

変更例としては、会社名(商号)の変更や本店の移転などが挙げられます。

定款が変更になった場合は、次の登記簿謄本も併せて提出する場合が多いので、留意が必要です。

#2:登記簿謄本(履歴事項全部証明書)

すでにご提出されている登記簿謄本から変更があった場合にのみ提出が必要となります。

変更例としては、資本金の変更、代表取締役の変更、代表取締役の改選、会社名の変更・本店の移転などがある場合には、提出が必要です。

#3:個人情報適正管理規程

すでにご提出されている個人情報適正管理規程から変更があった場合にのみ提出が必要となります。

#4:派遣元責任者講習受講証明書

更新日3年以内に受講したものが必要になります。以前の「派遣元責任者講習受講証明書」は5年以内でしたが、3年に短縮されました。

1回目の更新時には、この講習も再度受ける必要があります。

2回目以降の更新では、3年ごとに更新していけば問題ありません。

#5:キャリア形成支援制度を有することを証する書類の該当箇所

下記の項目が該当箇所になります。

  • 就業規則
  • 自己チェックシート
  • 企業パンフレット等
  • 教育訓練の受講時間を労働時間と扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする取扱の記載部分
  • キャリアアップに資する教育訓練の実施を規定した部分(会社から教育訓練を受講するよう指示された場合は、特段の事情がない限り教育訓練を受講しなければならない)
  • 派遣労働者のキャリア形成を念頭においた派遣先の提供のための事務手引きマニュアル等又はその概要の該当箇所
  • 労働者派遣契約の終了に関する事柄、変更に関する事項及び解雇に関する事項について規定した部分
  • 無期雇用派遣労働者又は有期雇用派遣であるが、雇用契約期間内に派遣契約が終了した者について、次の派遣先が決まるまでの間、少なくとも労働基準法上求められる平均賃金の60%以上の手当てを支払うことを規定した部分

#6:直近の事業年度における法人税の納税申告書(別表1および別表4)

直近の事業年度における法人税の納税申告書の別表1(税務署の受付印があるもの)と別表4の写を用意する必要があります。

なお、電子申告により提出している場合は、国税電子申告・納税システムから受信した「受け付けた内容」が確認できるものを添付する必要があります。

#7:直近の事業年度における法人税の納税証明書(その2所得金額用)

直近の事業年度における法人税の納税証明書(その2所得金額用)は、所轄の税務署で発行してもらう必要があります。

納税証明書を請求する際に必要になるもの

  • 納税証明書交付申請書
  • 手数料の金額に相当する収入印紙または現金
  • 本人確認書類
  • 法人の代表印
  • 委任状

#8:直近の事業年度における貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書

提出する直近の事業年度における貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書は、申告と納税がすでに済んでいる「納税申告書」に添付されている財務諸表となります。

この直近の事業年度における貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書については、後述する「資産要件」を満たしている必要があります。

財産的基礎に関する事項について

労働者派遣事業の許可更新を申請する場合、直近の年度決算書において、「資産要件」を満たす必要があります。

「資産要件」の内容は下記の通りです。

  • 基準資産要件:基準資産額(資産額ー負債額)2,000万円×事業所数
  • 負債比率要件:基準資産額(資産額ー負債額)≧ 純負債額×1/7
  • 現金預金要件:現金預金額≧1,500万円×事業所数

直近の決算書がこの「資産要件」を満たしていない場合、公認会計士による「合意された手続き」が必要です。

※この「合意された手続き」については次章で詳しく解説します。

(2)労働者派遣事業の許可取得(更新)のスケジュール

労働者派遣事業の許可が有効な期間は、新規で許可を取得した場合は3年間、2回目以降の許可更新の場合は5年間となります。

「特定労働者派遣事業」から「労働者派遣事業許可」に切り替えた事業所であっても、「新規」として扱われるため、3年後に更新が必要です。

労働者派遣事業の更新は、有効期間の3ヶ月前までに申請を行わなければなりません。

ただし、労働者派遣事業の事業主の方には、所轄の労働局から更新期限の1ヶ月半程前に更新のお知らせが郵送されてくることがあります。

その更新のお知らせには申請の期限が設定されており、およそ半月前の期日が記載されていることが多いです。

実際には、そちらの期日までに更新の申請を行うことがほとんどでしょう。

文章だけでの説明は少々わかりづらいので、以下に具体的な許可更新の例とフローチャートを紹介します。

新規で許可申請をする場合

許可の有効期間は3年

  • 労働者派遣事業の許可を受けたのが、平成30年4月1日
  • 労働者派遣事業の許可の有効期間は、平成30年4月1日〜令和2年3月31日
  • 労働者派遣事業の許可の更新期限は、令和1年12月31日(更新は、有効期間の3ヶ月前までに申請する必要があるため)
  • 労働局に許可更新の申請をするのは、令和1年11月中旬以降(更新期限の1ヶ月半程前に更新のお知らせが郵送される)

2回目以降の許可更新の場合

許可の有効期間は5年

  • 労働者派遣事業の許可を受けたのが、平成30年4月1日
  • 労働者派遣事業の許可の有効期間は、平成30年4月1日〜令和4年3月31日
  • 労働者派遣事業の許可の更新期限は、令和3年12月31日(更新は、有効期限の3ヶ月前までに申請する必要があるため)
  • 労働局に許可更新の申請をするのは、令和3年11月中旬以降(更新期限の1ヶ月半程前に更新のお知らせが郵送される)

(3) 更新時に注意すべき1つのポイント

労働者派遣事業の有効期間更新を申請する場合に、申請が許可される条件の一つとして「資産要件」があります。

この「資産要件」を直近の年度決算書が満たしている場合、公認会計士による監査は必要ありません。

しかし、直近の年度決算書が「資産要件」を満たさなかった場合は、この「資産要件」を借入や増資などで満たした月次決算書を用意した上で、公認会計士に監査(合意された手続き)をしてもらう必要があります。

次の章では、「資産要件」の具体的な中身と「公認会計士による監査(合意された手続き)」について説明します。

2. 資産要件を満たしているか

この章では、労働者派遣事業の有効期間を更新する際にポイントとなる「資産要件」と「合意された手続き」を紹介します。

「資産要件」には3つの条件があり、その3つの要件を満たさない場合は、公認会計士による監査(合意された手続き)が必要です。

ここでは、「資産要件」で問われる3つの要件を明らかにした上で、その要件を満たさない企業が具体的に何をすべきなのかを解説します。

(1) 資産要件で問われる3つの条件

労働者派遣事業の許可更新には、「基準資産要件」「負債比率要件」「現金預金要件」の3つの「資産要件」を満たす必要があります。

その3つの「資産要件」の具体的な内訳は下記の通りです。

「労働者派遣事業」の許可更新の資産要件

直近の年度決算書(貸借対照表)で下記3要件を満たす必要があります。

  • 基準資産要件:基準資産額(資産額ー負債額)2,000万円 × 事業所数
  • 負債比率要件:基準資産額(資産額ー負債額)≧純負債額×1/7
  • 現金預金要件:現金預金額≧1,500万円×事業所数

「緩和要件が認められる条件」

労働者派遣事業の事業主は一般的には、上記の「資産要件」を満たす必要がありますが、一部の事業者には「緩和要件」が認められています。

その「緩和要件」が認められるのは、以下の事業主です。

一つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業主

この条件に当てはまる場合は、「緩和要件」が適用されます。

「小規模派遣元事業主」の許可更新の資産要件

直近の年度決算書(貸借対照表)で下記3要件を満たす必要があります。

  • 基準資産要件:基準資産額(資産額ー負債額)1,000万円
  • 負債比率要件:基準資産額(資産額ー負債額)≧純負債額×1/7
  • 現金預金要件:現金預金額≧800万円

(2) 資産要件を満たさない企業はどうなるのか?

上記で解説した「資産要件」を「直近の年度決算書(貸借対照表)」が満たさない場合、公認会計士による「合意された手続き」が必要になります。

「合意された手続き」とは、公認会計士がお客様(依頼者)と事前に調査手続きの詳細について合意した上で、手続きを実施し、その結果を報告する業務のことを指します。

公認会計士が「合意された手続き」で主に行うことは、「資産要件」を満たした「月次決算書」から「許可要件(基準資産要件、負債比率要件、現金預金要件)」に影響する項目を選択して確認することです。

「合意された手続き」は、監査の対象を「資産」としているため、「貸借対照表」は必要になりますが、「損益計算書」までは手続きが及ばないことがほとんどです。

「合意された手続き」の注意点

ひとつ注意しておきたいのが、公認会計士であれば誰でも「合意された手続き」を実施できるわけではないということです。

公認会計士であっても、当該会社の顧問を行っている場合は、独立性確保の観点から「合意された手続き」を実施することができません。

監査(今回の場合は「合意された手続き」)は、事業に関与していない公認会計士のみが実施できます。

事業に関与している 事業に関与していない
公認会計士 監査できない 監査できる

(3)「合意された手続き」で必要になる書類

「合意された手続き」において必要な書類は下記の通りです。

手続きに必要な書類

  • 資産要件を満たした月次決算書(貸借対照表)
  • 銀行残高証明書
  • 登記簿謄本
  • 総勘定元帳
  • 税務申告書
  • 納税証明書(その2)

※留意事項 「合意された手続き」を実施する上で対象となる決算書は、「月次決算」を前提としていますが、「月次決算」は「年度決算」の場合と同様に、会計方針に基づいて決算を行う必要があります。 場合によっては、貴社の顧問税理士の方に月次決算の状況を確認する必要があるかもしれません。 そのような場合は、貴社の顧問税理士の方とご依頼先の公認会計士が直接やりとりを行うケースも想定されます。

「合意された手続き」について、より詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してみてください。

3. まとめ

今回は、労働者派遣事業の更新をする際に必要になる書類や手続きについて解説しました。

更新をスムーズに行うためには、事前準備が欠かせません。

特に「資産要件」と「合意された手続き」に関しては、しっかり理解して、準備しておく必要があります。

更新時のポイントをしっかりおさえて、派遣事業を継続できるようにしましょう!