5分で分かる労働者派遣事業の監査証明・合意された手続き
この記事は5分で読めます‐ユニヴィスグループ 森公認会計士事務所
「労働者派遣事業とは?」
「労働者派遣事業の許可申請の方法は?」
「労働者派遣事業の監査報告書の取得方法は?」
「労働者派遣事業の資産要件は?」
とお考えの方は、これを機に労働者派遣事業の監査報告書・合意された手続きについて詳しくなってみてはいかがでしょうか。
当記事は業務内容・業務の流れ・相場を詳しく解説していきます。
この記事を読めば、労働者派遣事業の監査報告書・合意された手続きについて一通り理解できるので、是非ご覧ください。
1.労働者派遣事業とは
この章では、労働者派遣事業について紹介します。
労働者派遣事業と職業紹介業との違いをしっかりと理解しましょう!
(1)労働者派遣事業とは
労働者派遣事業とは自社で雇用する労働者を、派遣先の指令を受けて、派遣先に従事させる形態の事業です。
以前は「特定派遣事業」と「一般派遣事業」の2種類がありました。
しかし2018年の法改正によって特定派遣事業は廃止され、一般派遣事業のみとなりました。
現在、すべての労働者派遣事業が「許可制」となったため労働者派遣事業を行う場合は基準を満たし、許可をもらう必要があります。
(2)職業紹介業との違い
職業紹介業では、採用したい企業と働きたい希望者の仲介を行い、両社の雇用契約成立をサポートする形態の業務です。
派遣業務では人材の雇用主が派遣会社に残るのに対し、職業紹介の雇用主は就職先の企業になります。
雇用形態も正社員・契約社員・パートなど様々あります。
職業紹介事業を行う際も一定の基準を満たしたうえで、許可を得る必要があります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.労働者派遣事業の許可申請の方法
この章では、労働者派遣事業の許可申請の方法について紹介します。
許可申請に必要な条件は複雑なので、この章でしっかりと理解をしてください。
(1)許可申請の手順
労働者派遣事業を行う場合は基準を満たした上で、許可を得る必要があります。
以下では労働者派遣事業の許可申請を行いたい方のために、手順を紹介しています。
- 事業計画の立案
- 事業所等の準備
- 派遣元責任者講習の受講
- 申請書類等の準備
- 都道府県労働局に申請
- 事業開始
申請から許可証の受領までは、おおよそ2ヵ月~3ヵ月程度かかります。
また、必ず受領出来るわけではなく、申請書類に不備があった場合には不許可になってしまう場合もあります。
#1:事業計画の立案
まずは事業計画の立案を行いましょう。
初めて事業を行う場合には、どのような計画であれば申請が通るのか分からないと思います。
その場合は、都道府県労働局に直接相談してみるのがおすすめです。
#2:事業所等の準備
労働者派遣事業を始める際は、基準を満たす事務所や責任者が必要になります。
厚生労働省のHPを参考にして、事業所の準備を行いましょう
#3:派遣元責任者講習
労働者派遣事業を行うには、派遣元責任者講習を行う必要があります。
定期的に派遣元責任者講習を厚生労働省で行っているので、講習日程を確認してみてください。
#4:申請書類等の準備
厚生労働省のHPを参考にして申請書類を準備しましょう。
主に次章で説明する許可要件を満たす必要があります。
#5:都道府県労働局に申請
各都道府県に設置されされている労働局に、申請書類を持参しましょう。
許可申請から許可が下りるまでには概ね2か月程度の期間を要します。
#6:事業開始
厚生労働省による審査や意見聴取の手続きを経て許可を得ることができれば事業を開始することができます。
(2)許可申請時に必要になる条件
労働者派遣事業を始める際に数点の要件を満たしている必要があります。
- 資産要件
- 個人情報管理体制
- 派遣元事業
- 特定の企業への派遣を目的としないこと
- キャリア形成支援制度が設定されていること
- 事務所規模が基準を満たしていること
以下注意点を解説します。
#1:資産要件
許可要件の中で特に資産要件には注意する必要があります。
労働者派遣事業の許可申請・更新申請時に、以下の3つの資産要件を満たしていることが必要です。
- 基準資産要件:基準資産額(資産額ー負債額)>2000万円×事務所数
- 負債比率要件:基準資産額(資産額ー負債額)≧純負債額×1/7
- 現金預金要件:現金預金額≧1500万円×事務所数
以上の資産要件を直近の年度決算書で満たすことが労働者派遣事業の許可を得るための条件となります。
しかし資産要件を満たすことができなくても、いくつかの条件を満たせば許可要件を得ることができます。
この点については第3章で説明します。
#2:個人情報の管理
許可要件を得るためには、派遣労働者の個人情報を適切に管理する必要があります。
「個人情報適正管理規定」を定め書類として提出する必要があります。
#3:派遣元事業主・責任者
許可要件を得るためには、派遣元事業主・責任者が適切に選任されている必要があります。
主に欠格事由に該当していないこと、講習会を受講している必要があります。
#4:特定の企業への派遣を目的としないこと
企業は特定の企業への派遣を目的としてはいけません。
企業が人件費削減を目的として、派遣会社を設置することを防ぐために労働者派遣法で禁止されています。
#5:キャリア形成支援制度が設定されていること
事業元は派遣労働者がキャリア形成を支援するための制を整えている必要があります。
主に、教育訓練の実地計画の作成が必要となります。
#6:事務所規模が基準を満たしていること
事業元は労働者派遣事業にふさわしい事務所である必要があります。
主に、事務所の大きさ・立地が基準以上である必要があります。
厚生労働省のHPでも許可要件について詳細な説明が載っているのでぜひ参考にしてみてください。
3.資産要件を満たすことができなかった場合
資産要件を満たすことができない場合以下の2つのどちらかの要件を満たせば、許可要件を満たすことができます。
- 緩和条件が適用される
- 公認会計士の監査を受ける
それぞれ詳しく説明します。
(1)緩和条件が適用される場合
緩和要件を満たす場合には資産要件を満たす必要はありません。
2018年の法改正により、労働者派遣事業を行うには資産要件を満たすことが必須になりました。
しかし、既存の旧特定労働者派遣事業者が迅速に資産要件を満たすことは困難であることを考慮して、当分の間において緩和要件が設置されました。
以下の緩和要件に当てはまる事務所は資産要件を満たす必要はなくなります。
(1) 1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が 10 人以下である中小企業事業主(当分の間)
・基準資産額 1,000 万円
・現預金額 800 万円
(2) 1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が5人以下である中小企業事業主(~平成30年9月29日まで)
・基準資産額 500 万円
・現預金額 400 万円
こちらの緩和要件は平成30年9月29日までに更新を行った方が対象です。以降の更新では緩和要件は適用されませんので、平成30年9月29日以前に緩和要件が適用された方は次回更新にご注意ください。
上記の財産的要件の緩和を受ける際には数点の注意点があります。
まず旧特定労働者派遣事業者ではなく、これから新規に労働者派遣事業を開始する事業者に対してこの緩和措置への適用は認められません。
あくまでも旧特定労働者派遣事業が対象であり、事務所規模の要件を満たしている事務所のみとなります。
また、上記の配慮措置を利用して許可を得た場合でも、有効期限内に派遣労働者数が増加した場合には、この措置の対象から外れ適切な形で資産要件を満たす必要が生じます。
(2)公認会計士の監査を受ける場合
直近の年次決算書で資産要件を満たすことができなくとも、公認会計士による監査を受ければ許可要件を満たすことができます。
この点については第4章で解説します。
4.公認会計士の監査を受ける場合
この章では、公認会計士の監査を受ける場合について解説します。
公認会計士の監査を受ける場合には、以下のポイントについて抑えることが重要です。
- 公認会計士の監査には2種類ある
- 公認会計士に監査を依頼する際の3つ注意点
(1)公認会計士の監査とは
直近の年次決算書で資産要件を満たすことができなくても、その後の月次決算書で資産要件を満たし、公認会計士の監査を受けると許可要件を満たすことが可能です。
公認会計士の監査によって「監査報告書」または「合意された手続き」のいずれかの書類を作成してもらうことができます。
主に、労働派遣事業の申請の際は「監査報告書」が必要になり、更新の際は「合意された手続き」が必要になります(個別のケースで申請・更新でどちらを用いるかは異なります)。
以下では「監査報告書」と「合意された手続き」について解説していきます。
(2)監査報告書
労働派遣業務の許可申請時は、監査報告書を用いることが多いです。。
財務諸表が会計基準に基づいて作成されていることを保証する目的で作成されます。
監査報告書では全ての財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表等)を対象とし監査を行います。
(3)合意された手続き
労働派遣業務の更新時は「監査報告書」「合意された手続き」のどちらを提出しても問題はありません。
合意された手続きでは主に財産要件に影響する項目を選択して確認するため、 通常は賃借対照表項目に限定され、損益計算書等まで手続きは及びません。
労働者派遣事業の監査の費用については以下の記事で詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
(4)派遣監査の注意点
この章では、労働者派遣事業の監査の注意点について解説します。
#1:監査を行える人材
労働者派遣事業の監査を行える人材には指定があり、原則的に企業と関係のない第3者の公認会計士が行いわなければなりません。
税理士は監査証明業務を行うことができず、公認会計士についても当該会社の顧問を行っている場合は独立性確保の観点から監査報告書や合意された手続きを依頼することができません。
- 顧問契約やコンサルティング契約を行っている公認会計士
- 会社役員や社外監査役などに従事している公認会計士
上記のように、事業に関与していない公認会計士に対してのみ監査証明および合意された手続きを依頼することが可能となります。
#2:派遣監査証明はその他の業務に利用できない
「監査報告書」「合意された手続き」書類は労働者派遣事業の申請・更新時のみ活用することができます。
銀行融資を受ける等の業務に、上記の保証は効力をなしえません。
あくまでも、労働者派遣事業の許可要件を満たすための保証となります。
#3:派遣監査証明を行っても労働者派遣事業の許可が下りない場合もある
「監査報告書」「合意された手続き」の発行によって審査の要件を満たすのは資産要件のみです。
その他の許可要綱については、別途で要件を満たしていただく必要があります。
その他の許可要件を満たすことができていなければ、「監査報告書」「合意された手続き」の発行を行っても労働者派遣事業の許可が下りない場合もあるので注意してください。
5.監査報告書・合意された手続き取得について
この章では「監査報告書」「合意された手続き」取得の流れと費用の相場について解説します。
(1)手続きの流れ
一般的に上記の流れで監査報告書・合意された手続きの発行が行われます。
一般的な納期は2日ですが、弊社では今までに数多くの免許取得・免許更新を行ってきた実績・経験があり、急ぎのご要望であれば最短即日でご対応いたします。
(2)費用の相場
監査報告書・合意された手続きを取得するには、公認会計士が監査を行うため、費用がかかります。
費用の相場は企業規模等にもよりますが、大体10万円~50万円です。
弊社では、最短即日に発行し、新規・更新共に業界最安クラスの10万円から承っておりますので、お気軽にお電話ください。
四大監査法人出身の経験豊富な公認会計士が対応いたします。
6.まとめ
今回の記事では、労働者派遣事業の監査報告書・合意された手続きについて解説をしました。
労働者派遣事業では、細かな許可要件があり理解するのが困難です。
弊社では様々なご相談に対応させていただきますので、お気軽にお電話ください。