ストックオプションによる株価への影響は?ストックオプション導入のメリット・デメリット
「ストックオプションが株価に与える影響はどういったものなのか」
「ストックオプションは導入すべきなのか」
経営者の中にはストックオプションの導入を検討している方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ストックオプションの株価への影響や導入のメリット・デメリット、導入時の注意点等について紹介します。
ストックオプションに関する情報を集めている方は、参考にしてみてください。
目次
1.ストックオプションの株価への影響
ストックオプションによって発行済株式総数が増えるため、株価に何かしらの影響が生じることとなります。
株式が新規で発行されると、株価が下落することもあれば、上昇することもあります。
ここでは、一般的に株価にどのような影響があるのか紹介します。
(1)株価下落
従業員がストックオプションを行使すれば、自社株式の発行総数が増加するため、基本的には株価が下落します。
自社株式が増えても会社の純資産や総利益は変わらないので、1株あたりの純資産や純利益が下がる(希薄化が生じる)からです。
ただし、ストックオプションによって発行される株式が少なければ、特に株価に大きな影響を及ぼすことはありません。
ストックオプションの実務においては発行総数が既存株主に大きな影響を与えるほど増えることはまれのため、それほど気にする必要はないでしょう。
(2)株価上昇
株式発行後、営業成績が向上したり投資家による評価がアップしたりすることによって、株価が上昇する可能性もあるでしょう。
1株あたりの純資産や純利益が下がれば株価が下落しますが、営業成績の向上により1株あたりの利益が上がれば株価が上昇します。
将来的に営業成績が伸びる可能性があると判断された場合は、ストックオプションによって株価上昇が期待できることとなります。
2.ストックオプション導入のメリット
ストックオプションを導入することでいくつかのメリットがあります。
たとえば、以下のようなメリットが期待できるでしょう。
- 従業員のモチベーション維持になる
- 優秀な人材の確保ができる
ストックオプションを導入すべきか迷っている方は、判断の参考にしてみてください。
(1)従業員のモチベーション維持に繋がる
ストックオプションを行使することで、経営成績の向上と従業員自身の報酬が一定連動することとなるため、従業員のモチベーション維持に繋がるでしょう。
営業成績がアップすれば株価が上昇するので、会社への貢献度が数字として現れます。
目的を共有して、会社の雰囲気も改善したい企業は導入を検討してみましょう。
また、既存の事業体では採用が難しいような経営クラス人材もストックオプションの発行によって採用を目指すことがよく見られます。
この場合、採用する人材の経営への関与度合いを踏まえ、ストックオプションの発行割合を決める企業が多いです。
(2)優秀な人材の確保ができる
ストックオプションによって定期的に収入がアップすれば、自然と優秀な人材の確保に繋がります。
インセンティブとして活用すれば、優秀な人材の流出を防ぐことができ、実力を備えた人材が集まるので、人手不足対策としても効果的です。
優秀な人材が集まれば、営業成績のアップも大いに期待できることから、ベンチャー企業等は積極的にストックオプションを活用するとよいでしょう。
3.ストックオプション導入のデメリット
ストックオプションの導入には、思わぬ落とし穴があることも事実です。
たとえば、以下のようなデメリットが考えられます。
- 株価が下落する可能性がある
- モチベーションの低下のリスクがある
- 人材流出のリスクがある
ストックオプションには良い面もあれば、悪い面もあります。
どのようなリスクがあるのか把握した上で、ストックオプションを導入するか検討してみましょう。
(1)株価が下落する可能性がある
ストックオプションによって、発行済株式総数が増加し、営業成績の伸びが芳しくなければ、株価が下落する可能性は高いです。
株価下落によって得られる収入が少なくなり、株式の取得時の期待を裏切られることもあるでしょう。
そのため、ストックオプションを導入して終わりではなく、しっかり営業成績の向上に務めることが大切です。
(2)モチベーションの低下のリスクがある
従業員の努力によって株価上昇が期待できる一方で、株価が下落したときは株式の保有者にとってはモチベーションの低下を招く恐れがあります。
なかなか営業成績が伸びず、株価が長期間低迷した場合、かえってモチベーションの低下を招くこともあるでしょう。
ストックオプションを導入したからといって、必ずしも従業員のモチベーションがアップするとは限らない点を抑えておく必要があります。
(3)人材流出のリスクがある
ストックオプションを行使し、株式を取得した後に退職するリスクも当然あります。
ストックオプションをインセンティブとして掲げて人材を募集した結果、ストックオプション目当てで人材が集まる可能性が高いです。
一概には言えませんが、ストックオプションの行使を目的に集まった人材は、権利行使後流出することがある点を頭に入れておきましょう。
4.ストックオプションを導入すべき企業
ストックオプションを導入すべき企業の特徴について紹介します。
特におすすめの企業は、将来営業成績の上がる可能性がある非上場企業です。
目標として新規株式公開(IPO)を掲げている企業は、ストックオプションの恩恵を大いに受けることができます。
非上場企業で右肩上がりの業績が期待できる場合は、発行済株式総数が増加しても、株価上昇に繋がる可能性があるでしょう。
5.ストックオプション導入の注意点
ストックオプションを導入する際は、いくつかの注意点があります。
特に抑えておくべきポイントは以下の3点です。
- 付与上限がある
- 社員間の軋轢を生む可能性がある
- 税制非適格と判断される可能性がある
導入を検討している方は必ず目を通しておきましょう。
(1)付与上限がある
ストックオプションには、付与上限があることを抑えておく必要があります。
会社は、ストックオプションで株式を無限に発行できるわけではありません。
一般的には既存株主とのバランスを踏まえ発行済株式総数の10~15%程度が上限とされているので、あくまで目安ですが15%を超えるストックオプションを設けることは禁止されています。
また、一度ストックオプションの権利を従業員に付与すると、権利行使期限を過ぎるまで抹消することができません。
会社がストックオプションを付与すると決定した日の2年後から10年を経過するまでの期間が権利行使期間です。
そのため、従業員に一度付与した権利を取り消すためには、10年間待たなければなりません。
ストックオプションを付与できる人数は決まっているので、誰にどのくらい発行するかしっかり吟味しましょう。
(2)社員間の軋轢を生む可能性がある
ストックオプションを付与できる従業員の数は決まっているため、すべての社員が恩恵を受けられるわけではありません。
そのため、ストックオプションの権利保有者とそうでない者との間に不公平が生じてしまい、人間関係の悪化に繋がる可能性があります。
権利行使後は、給与や賞与以外にも収入源が発生するため、どうしても処遇に差が生まれてしまい、モチベーションの低下や人材流出のリスクが生じるでしょう。
ストックオプションの希望者が続出した場合は、付与する人材の選別をしなければならないので、付与されなかった従業員へのフォローもしっかり用意しておくことが大切です。
(3)税制非適格と判断される可能性がある
ストックオプションの中でも課税上のメリットがある税制適格ストックオプションを採用したい場合は、税制非適格と判断されないように要件を満たす必要があります。
税制適格ストックオプションとは、税制の優遇を受けながら無償で得られる権利のことです。
従来は、権利行使時と譲渡・売却時に課税されますが、税制適格ストックオプションの場合は、株式の譲渡時のみ課税されます。
そのため、税制適格ストックオプションをインセンティブとして活用している企業が多いです。
税制適格ストックオプションを導入するためには、租税特別措置法に定められた要件を満たす必要があり、ストックオプションの発行が頻繁に行われている場合、税制非適格と判断されるおそれがあります。
ストックオプションによって株式を発行する際は、なるべく最小限に抑えましょう。
なお、税制適格ストックオプションに関しては、以下の記事で詳しく紹介しているので、あわせてご覧ください。
6.ストックオプション導入の流れ
ストックオプションを導入する流れについて紹介します。
主な流れは以下のとおりです。
- 新株予約権の募集事項の決定と通知
- 募集と付与者の決定
- ストックオプションの発行・新株予約権原簿への記載
- 新株予約権発行の登記
ストックオプションを導入するときの参考にしてみてください。
(1)新株予約権の募集事項の決定と通知
取締役会でストックオプションの発行が議決されたら、新株予約権の募集事項を決める必要があります。
具体的な募集事項は以下のとおりです。
- 新株予約権の内容と数量
- 金銭の払込みの有無(無償発行かどうか)
- 払込金額と算定方法(有償発行の場合)
- 募集新株予約権の割当日
- 払込期日(有償発行の場合)
これらの事項は、株主総会の決議により定めることが会社法238条に記されています。
募集要項決定後は、従業員に対してストックオプションの付与に関する旨を通知しましょう。
(2)募集と付与者の決定
ストックオプションの募集要項の決議後、従業員に対して募集を行います。
申込者が現れたら、新株予約権の割当を受ける者を定めましょう。
(3)ストックオプションの発行・新株予約権原簿への記載
ストックオプションの付与者を決定したら、スケジュールに従ってストックオプションを発行します。
有償の場合は、発行時に金銭の払い込みが必要で、払い込み完了後、対象者はストックオプションの権利を取得することが可能です。
ストックオプションの発行後は、遅滞なく新株予約権原簿に記載しなければなりません。
ちなみに、新株予約権原簿には以下のような内容が記載されます。
- 新株予約権者の氏名・住所
- 新株予約権の内容・数
- 新株予約権の取得日
- 新株予約権証券の番号(証券が発行されている場合)
会社法249条に記されているので、忘れないように新株予約権原簿を作成しておきましょう。
(4)新株予約権発行の登記
新株予約権を発行したら、必ず会社は登記しなければなりません。
会社法915条には、新株予約権の発行後2週間以内に変更した旨を登記することが記されています。
期限の猶予はあまりないので、発行後速やかに登記手続きをするようにしましょう。
まとめ
ストックオプションを導入することで、株価に多少の影響は生じます。
営業成績の向上等によって株価が上昇する可能性もあるため、非上場企業でIPOを目指す企業におすすめです。
ストックオプションにはメリットとデメリットがあるので、双方を比較した上でプラスに働くと思われた方は、今回紹介した導入の流れを参考にしてみてください。