「株式分割が何か詳しく知りたい」
「株式分割はどんなメリットがあるかよくわからない」
そうお悩みではないでしょうか。
株式分割をうまく活用することで、株式の流動性が上がり、効率的な資金調達が可能になります。
この記事では、株式分割とは何か、そのメリットとデメリット、株式分割の事例について詳しく解説します。
この記事を読めば、株式分割を活用し資金を効率的に集める方法がわかりますよ。
1.株式分割とは
株式分割とは、株式を分割し株の数を増やすことです。
株の価格は下がりますが、株の発行数が増えるため、株主に株を購入してもらいやすくなります。
株を購入する人を増やし、その会社の資産を増やすことが株式分割の主な目的です。
例えば、1株5,000円の株を「1:5」の比率で分割する場合、株1つあたり株の数が5株増えることになります。
その分株の価格は5,000円から1,000円に下がります。
(1)分割で株主が損をすることはない
株式分割によって株主が損失を被ることはありません。
株主無償割り当てによって、株主が所有している株の数に応じて、株の割り当てが行われます。
例えば、ある株主が株を1株5,000円で所有していたものを「1:5」で分割する場合、1つあたりの株価は1,000円になりますが、その代わりに1株が5株になります。
そのため、5,000円の株を1株所有していた場合、1,000円の株を5株所有することになり、資産額はどちらも5,000円であるため、株式分割で株主が不利益を被ることはありません。
また保有する株式の数が増えることで、配当が増えるなどのメリットもあります。
2.株式分割のメリット
株式分割は会社の資本を集めやすくし、資本を増やすことを目的に行われることが多いです。
ただし、株式分割のメリットはそれだけではありません。
具体的には以下のメリットがあります。
- 株の流動性が高まる
- 既存の投資家の配当金が増える
- 市場を移動させられる
では次で詳しく見ていきましょう。
メリット1.株の流動性が高まる
株式分割のメリットは株の流動性が高まることです。
発行済み株式の総数が増え、株の価格が下がるため、それまでと比べると細かい売買ができ、投資家が株の売買を行うことが容易になります。
その株を保有している投資家の数が増えれば、株主総会などで意見をより集めやすくなります。
また、株の売買が盛んになることで株価が上がり、資本が増えやすくなります。
メリット2.既存の投資家の配当金が増える
株式分割は会社にとってだけではなく、投資家にとって配当金が増配になることもあるいうメリットがあります。
増配とは、配当金が増えることを指します。
通常株式分割を行うと、それに応じて配当金も調整されることが一般的です。
とある会社の1000株保有し1株あたりの配当金が10円だった場合、配当金は10,000円となります。
この会社の株を株式分割で「1:5」にした場合、配当金も2円に調整され、最終的な配当金が変わらないように調整されます。
しかし、業績が好調の会社であれば、株式分割で配当を調整しないこともあります。
この場合には、1株あたりの配当金が10円であれば、配当金が50,000円となり、配当金が5倍になっています。
株式分割によって必ずしも増配になるわけではありませんが、増配になるとメリットは非常に大きいです。
メリット3.市場を移動させられる
株式分割のメリットは市場を移動させるための手段として使いやすいことです。
例えば、マザーズから東証一部に市場を移動させたい場合、以下の条件がそれぞれの市場に設定されています。
- 株主数
- 株式数
- 売買高
- 時価総額
株式分割をすることで、株式数と株主数を増やす効果が期待でき、これらの条件を満たしやすくなります。
3.株式分割のデメリット
株式分割は企業にとっても投資家にとってもメリットが大きいですが、同時にデメリットもあります。
それが以下のものです。
- バブルになることもある
- 質の悪い株主が現れることもある
- 会社にとってコストがかかる場合もある
では次で詳しく見ていきましょう。
デメリット1.バブルになることもある
株式分割で注意するべき点は、バブルになる可能性があることです。
株式分割を行うことで、株が購入され、投資家が増えやすくなるため、多くの場合で株価の上昇が期待できます。
しかし、投資家の売買が盛んになりすぎることで、株価が大幅に上昇しすぎてしまうこともあります。
それに会社の成長が伴っていればよいのですが、そうではない場合、株価の急激な高騰と急落が起きるケースもあるため、投資家の立場では注意が必要です。
デメリット2.質の悪い株主が現れることもある
株式分割を行うことのデメリットは、質の悪い株主が現れる可能性があることです。
株式を分割することで、その株に投資できる株主は増えますが、その結果、その会社への理解が浅い株主が現れてしまうこともあります。
そのように質の悪い株主が増えた結果、株主総会でその人の意見にも対応する必要が出てきて会社の経営に悪影響を与えてしまう可能性もあります。
株式分割を行うことで、資産を集めやすくなりますが、そのように会社の経営に影響を与える懸念から、株式分割を選択しないことも多いです。
デメリット3.会社にとってコストがかかる場合もある
株式分割を行うことで、会社にとってコストがかかる可能性があります。
理由は、株式の配当金、株主総会、登記などによってかかるコストが増えてしまうからです。
資金を集めることができれば、それほど大きな出費にならない場合もありますが、闇雲に株式分割をすれば、資産が増えるというわけではない点には注意しましょう。
4.株式分割の手順は?
株式分割を実際にするためには登記など必要な手続きがあるため、そう簡単にできるものではありません。
大まかには以下の手順で進んでいきます。
- 株式分割の決議
- 定款変更
- 基準日公告
- 効力発生と端数処理
- 登記
では、それぞれの手続きについて詳しく見ていきましょう。
(1)株式分割の決議
株式分割を行うためには、株式総会を行い、以下のものを決定する必要があります。
- 株式分割の比率と基準日
- 株式分割の効力が発生する日
株式分割する株式の種類(2種類以上の株式を発行する場合)
株式発行はすぐできるものではなく、まず株式総会でこれらのことを決定する必要があります。
(2)定款変更
株式分割を行うことで、定款を変更しなければならなくなるケースがあります。
それが株式分割によって、発行可能部数を超えてしまう場合です。
この場合、本来であれば、株主総会の特別決議を行い決定しなければいけないのですが、株式を1種類しか発行していない場合には、取締役会の決議によって変更させることもできます。
ただし2種類以上の株式を発行している場合には、取締役会で決議を行うことはできないため、株主総会の特別決議を行うことが必要になります。
(3)基準日公告
株式分割を行うための基準日の公告を行います。
株式分割で株主に割り当てを行う際、どの時点での保有状況を基準にするのかその基準日を定める必要があります。
この基準日は会社法124条によって、基準日の2週間前に、基準日と株式分割の詳細を告知する必要があります。
そのため、株式分割を行うためにはある程度の準備期間が必要になるため、余裕を持ったスケジュールで行う必要があります。
(4)効力発生と端数処理
株式分割の効力が発生した日に分割比率に応じた株の分割が行われますが、分割する比率によって1株に満たない端数が生じることがあります。
この場合株式会社は、その端数の合計を競売などの方法で売却し、その売却利益を株主に還元します。
(5)登記
会社分割を行なった後は、効力が発生した日から2週間以内に登記を行わなければいけません。
登記を行なってから登記が完了するまでは1〜2週間程度かかるのが一般的です。
5.株式分割にはどんな事例がある?
「株式分割を実際に行なった会社はどうなったか詳しく知りたい」という人もいるのではないでしょうか。
ここでは株式分割を行なった事例についていくつか紹介します。
(1)Yahoo!
Yahoo!は、1997年に上場を果たし、そこから株式分割を繰り返すことで、成長してきた会社です。
上場した当初は1株200万円だった株は、2017年の10月あたりで4,000分の1になる500円程度まで分割されました。
仮に上場したばかりの1株を1株持っているとすると、2017年時点で、分割した株は約80万株になり資産総額が4億円にも相当する結果になっています。
そのため、会社として非常に大きな成長を遂げ、Yahoo!の株をずっと保有し続けた株主は億万長者になっている状態まで株価が急上昇しました。
株価も急上昇していますが、Yahoo!の売り上げ利益もそれに伴い数倍成長しているため、バブルのように急激に価格が下がることもありませんでした。
(2)ガンホー
ガンホーは株式分割によって会社の規模を大幅に成長させてきた会社の一つです。
2013年に行われた、株式分割では「1:10」という大幅な分割を2回、「1:100」の株式分割を行い、アプリ配信開始時点では17円だった株価が2013年5月には1,600円と大規模な成長を遂げるに至りました。
この結果ガンホーは資本を集め急成長してきましたが、その反面1株あたりの株価はどんどん下がっていました。
東証1部では必要最低投資金額を「5万円以上50万円未満」にすることを推奨しており、ガンホーはこの水準を大きく下回る結果になっています。
そのため、株式分割によって下がった株価を調整することを目的に、2019年7月10日に株式併合を行う発表をしました。
株式併合は株式分割の反対で、複数の株式を1つにまとめることです。
この結果株価が引き上げられ、見た目の株価を上昇させられることが主な目的です。
ガンホーのように株式分割によって株価が下がりすぎた結果、株式併合を行う会社も近年では増えてきています。
(3)ライブドア
株式分割でバブルが起きた有名な事例としてあげられるのがライブドアの事例です。
ライブドアは当時はあまりみられなかった株式の100分割など大規模な分割を行い、10億株を超える株を発行し、大量の個人投資家が売買を繰り返していました。
それが2006年1月16日に証券取引法違反の容疑で、ライブドア本社およびホリエモンこと、堀江貴文さんの逮捕をきっかけに、大量の売り注文が発生し、ライブドアのみならず、株式市場全体の暴落が発生しました。
これほど大規模なバブルが起きる可能性はあまりありませんが、株式分割によって値動きが激しくなるという点には注意するべきでしょう。
6.まとめ
この記事では株式分割とは何か、株式分割のメリットやデメリット、実際に株式分割を行なった事例について詳しく紹介しました。
株式分割をうまく活用することで、株の流動性が高まり、資本を集めやすくなります。
この記事を参考により効率的に資金を集める手段として株式分割を検討してみてはいかがでしょうか。