「PERって聞いたことあるけど、どういう意味なんだろう」
「株式で投資したいけど、そもそもPERって何?」
このようにPERを聞いたことがあるけど、どういう意味なのかわからない人は多いのではないでしょうか?
PERは企業の価値を評価する一つの指標であり、投資家の中でとても大切になってくる指標の1つです。
PERを知ることでどの様な株を買うべきなのか、または買わないべきなのかという事もわかってきます。
この記事では、PERの計算方法を実際の企業の例を使って説明していきます。
また、各業界の平均PERも説明します。
単に用語の意味を説明しているものは多く見られますが、それだけでは実践的にPERを利用することはできません。
この記事を読んで、PERのことを網羅的に理解し、実践的に利用できるようになりましょう!
1.PER(株価収益率)とは
PERとは、株価が1株当たりの純利益(ESP)の何倍なのかを示す指標です。
PERを見ることで、その株価が割安かそれとも割高かどうかを判断することができます。
PERの正式名称はPrice Earning Rationといい、それぞれの英語の頭文字を取った言葉がPERと言います。
Priceは価格、 Earningは収益、Rationは配給という意味を持ち、日本語では株式収益率といいます。
ちなみにEPSとは、簡単に説明すると、1株あたりの純利益のことを指します。
詳しくはこちらで説明しています。
(1)PERの計算方法
PERの計算方法は、以下の計算式で算出されます。
実際に例題で詳しく説明していきます。
例えば、A社の株価が800円でEPSが40円の場合、PERは20倍となります。
また、B社の株価が200円でEPSが20円の場合、PERは10倍となります。
このように計算式を使えば、すぐにPERを計算できるので覚えておきましょう。
#1:PERの平均値
PERの平均的な数値は、日本の上場企業で15倍が平均となっています。
例えば、先ほどのA社の場合は、PERが20倍となっているので、少しだけ割高な株式となっています。
業界によって平均PERの数字が異なりますが、その企業のPERが平均値より高ければ割高、低ければ割安という1つの基準になってくるので覚えておきましょう。
#2:世界的に見たPER割高の国と割安の国
日本の平均PERは世界と比較しても高い水準にあります。
PERが一番割高になっている国はインドという統計が出ています。
インドの平均PERは23.6です。
反対に割安になっている国は、ロシアです。
ロシアの平均PERは5.68にであり、割高のインドと比べるとその差は歴然です。
日本企業の平均PERは世界的に見ると高い水準にあります。
(2)PER指標の目的
PER指標を見る事で、企業の株が割安か割高かわかります。
投資の世界では割安である株を購入して、購入した株を投資家の人が保持します。
後に購入した企業が成長し、その企業の株価が高くなり、株を売ればその分は投資家の利益になると言う仕組みが、一般的な投資家の利益のあげ方になっています。
割安か割高かを判断するPERは、企業の株を買うのかどうかの1つの判断基準になるのです。
#1 : 身近な例で解説
具体的な例を私たちの買い物に置き換えると分かりやすいです。
私たちの生活でもスーパーに行った時に、良い食べものが安く売ってあるのと、良い食べものが高く売っているのではどちらを選びますか?
答えは前者の方が多いですよね。
高い食べものを高く買うより、高い食べ物を安く買う方がお得感がありますよね。
実はこの考え方は投資の世界でも同じ事が言えます。
PERを使えば、高い食べものを安く買える1つの基準を手にする事ができます。
2.EPS(一株当たりの純利益)とは?
PERの説明の時にあった通りEPSについて解説していきます。
EPSとはEarning Per Shareの略で、頭文字を取ってEPSと言います。
EPSは1株あたりの純利益のことを指します。
企業の最終利益である純利益を発行済みの株式の数で割ると算出できます。
EPSを見ることで、その企業の収益力を判断することができます。
EPSが高ければ収益力が高く、EPSが低ければ収益力が低いことになります。
(1) EPSの計算方法
ESPの計算式は以下の通りです。
例えば、A社の純利益が2000万円で、発行している株が10万株あるとします。
その場合は以下のような計算になります。
この結果、EPS(一株当たりの純利益)は200円となります。
EPSを見る力を付けると、企業の成長度合が簡単に数字となってわかりやすく可視化されるので、投資の時のにも大変便利な判断基準になっています。
(2)EPSが上がる要因2つ
EPSが上がる要因は以下の2つあります。
EPSが上がる1つ目の要因は当該企業の純利益が増える事です。
一株当たりの純利益を示す指標なので、会社の業績が上がり純利益が増えることで、当然ESPが上がります。
EPSが上がる2つ目の要因は発行済みの株式数が減ることです。
具体的には、会社が自社の株を買ったり、株式併合などをする事でEPSが大きくなります。
このような要因を把握しておくだけでも、投資をする時に役に立つので覚えておきましょう。
3.PERを使う上で知っておくべきこと3つ
PER指標を効果的に使用するには事前に知っておくべきことや注意点があります。
ここでは以下3つについて詳しく説明していきます。
- 企業の過去のPERを比較する
- PERが低くても買ってはいけない事もある
- どのような時にPERは低くなるのか
順に説明していきます。
(1)企業の過去のPERを比較する
PERを効果的に使用するには、過去の会社におけるPERと予想のPERを比較する事が大切です。
実際に過去のデータと未来の統計を予測して見ていき、最終的に投資をするかどうか判断する事は投資の世界ではとても大切になっています。
投資に限った話ではないですが過去のデータを参照して、未来の統計を取る事はとても大切です。
例えば、経営でも自社の過去の業績を元にして、今後の会社の方針、事業計画を練っていき、最終的に利益に繋げる訳ですから、過去のデータを収集して、次の未来を予測し、戦略を立てるということは投資家の肝となるべき考え方です。
それゆえ過去の会社におけるPERと予想PERを比較する事は大切になのです。
(2)PERが低くても買ってはいけない事もある
PERが低いから株を買うと言う基準をお伝えしましたが、PERが低いだけで買ってはいけないと言う事例をご紹介していきます。
例えば、A社の業績がとても悪く、今後の成長があまり見込めないのであれば、それは買う事をあまりおすすめしません。
あくまでも投資の中で大切になってくる事がその企業の将来性があるのかどうかや、今後の企業としての伸び率が高いかどうかで判断します。
逆にPERが低くても、この会社は「将来性があるな」と言う事や「伸び率があるな」と言う会社の場合は、買ってもいいのかもしれません。
基準はPERなのですが、PERの数字を過信しすぎず、会社の将来性や伸び率なども考慮して投資を検討しましょう。
(3)どのような時にPERは低くなるのか
PERは以下のようなときに低くなる可能性が高いです。
- 企業の業績の悪化がある程度見込まれている
- 業界の伸び率、あるいは成長の見込みが低い
このようにPERが下がる要因は大きく2つに分けられています。
企業の業績が悪化したり、成長の見込みが無いことで、PERが低くなっていきます。
単にPERが低いから割安な銘柄なのではなく、上記のような理由から割安となっている可能性もあるので注意が必要です。
4. 実際に企業2つのPERを計算
それでは実際の企業を例に出して計算していきます。
ここでは以下の2つの企業のPERを計算していきます。
- Apple
- 日本郵政
順に説明していきます。
(1)AppleのPER
スマートフォンを普及させたと言われている世界的にも有名な会社AppleについてPERで計算していきます。
Appleの株価が189円で、EPSが12.0です。(2019年 3月の数値)
この場合にPERを計算すると以下のようになります。
PERの基準となる数字が15倍なので、日本の平均PERと同等の数値となっています。
(2)日本郵政のPER
次は日本郵政のPERにを計算します。
日本郵政の株価が1,300円でEPSは106です。(2019年3月の数値)
この場合にPERを計算すると以下のようになります。
日本郵政のPERは12.26となり、平均より割安という事がわかります。
また、この様な計算をする中で、忘れてはいけないのが、計算する時に使うEPSは、予想EPSだと言う事です。
予想EPSとは、企業の方から発表される予想の数字のことです。
この様に投資家はPERなどを計算する時には、予想EPSを用いて計算することを忘れない様にしましょう。
5. 業種別のPERについて
PERは業界によって大きく数字が異なります。
業種別のPERについての平均の数字を見ていきましょう。
PERが高い業界と低い業界を知ることができます。
それでは業種別にどのくらいPERが違うのかを見ていきましょう。
(1)業種別PERの表
下記の図はPERが高い業種と低い業種を可視化させた表になります。
この表を見てわかる通り、業界によって平均PERは大きく異なります。
業界名 | 平均PER | 業界名 | 平均PER | 業界名 | 平均PER |
水産・農林業 | 14.3 | 鉄鋼 | 10.2 | 空運業 | 10.6 |
鉱業 | 35.1 | 非鉄金属 | 9.4 | 倉庫・運輸関連業 | 14.4 |
建設業 | 10.2 | 金属製品 | 11.9 | 情報・通信業 | 25.1 |
食料品 | 19.2 | 機械 | 13.9 | 卸売業 | 12.6 |
繊維製品 | 16.7 | 電気機器 | 20.6 | 小売業 | 22.7 |
パルプ・紙 | 38.7 | 輸送用機器 | 11.6 | 銀行業 | 9 |
化学 | 15.5 | 精密機器 | 16.1 | 証券、商品先物取引業 | 8.9 |
医薬品 | 25.3 | その他製品 | 19.4 | 保険業 | 13.4 |
石油・石炭製品 | 5.6 | 電気・ガス業 | 14.8 | その他金融業 | 10.4 |
ゴム製品 | 13 | 陸運業 | 17.8 | 不動産業 | 10.1 |
ガラス・土石製品 | 11.3 | 海運業 | 24.3 | サービス業 | 22.1 |
※日本取引所グループであるJPX”の資料を引用・編集
この数字毎月変わるものなので、投資を始めようとしている人は注意深くチェックしてみてください。
ちなみにPERの数字は”日本取引所グループであるJPX”というサイトから閲覧できるので、これから投資を初めてみようという方は参考にしてみてくださいね。
#1:なぜ業種によってPERの平均は変化していくのか
業種が違うだけでPERの平均も大きく変化していきます。
理由は、業界によって、成長性があるものとそうでないものがあるからです。
PERとは、投資家の期待が出ている数字であり、実際にこの先も伸びていくのか、それとも衰退していくのかが業界や企業によってはっきり異なります。
例えば、医療業界などの伸びしろがある業界と衰退産業であるエネルギー業界ではPERは当然大きく変わります。
この差がある限りPERの平均は業種によって変化していきます。
(2)比較的PERが高い業種
PERが高いとされる業種は、医薬品の開発に携わる業種、サービス業、小売り業などが目立ちます。
鉱業平均PER:35.1
パルプ・紙業平均PER:38.7
サービス業平均PER:22.1
小売業平均PER:22.7
医薬品の開発は、新薬などが多くつくられることで、これからも伸び率などがあると投資家から判断され投資が決まるということも少なくありません。
やはりこれからの成長が期待される企業はPERも高くなっていきます。
(3)PERが低いとされる業種
一方でPERが低いとされる業種もあります。
鉄銅業平均PER:10.2
銀行業平均PER:9
石油や鉄銅、銀行などの業界が目立ちます。
これらは永久的に資源を確保できるという保証がないことから、投資家からは謙遜しがちになってしまいます。
また最近はAIなどに仕事を奪われそうな業種もPERが低くなっています。
この様にPERが低い会社もこの先時代の変化と共に増えていきます。
5. まとめ
PERを体系的に理解いただけたでしょうか?
この記事では、PERの計算法、平均PER、知っておくべきこと、業界別のPERを説明しました。
また、実際の企業を例に出してPERの計算をしました。
この記事を全て理解することで、企業の価値を評価でき、適切な投資判断ができるようになります。