EBITとは?EBITDAとの違いって?基礎から徹底解説!

「EBITって何?どうやって計算するの?」
「EBITDAとの違いは?」

M&Aの場面で目にする機会の多いEBITですが、どのような指標なのか分かりづらいですよね。

最近では、EBITとよく似た概念にEBITDAもあり、両者の違いについて混乱する人も多いかと思います。

しかしEBITは計算方法も単純であり、すぐに用いることのできる優れた指標です。

そこで今回は、EBITと関連する指標について、それぞれの計算方法やメリットなど、基本的知識から徹底的に解説しています。

さらに、EBITDAに関する基本的な知識や、EBITとの違いについても言及しています。

この記事を読めば、EBITについて理解し、使いこなせるようになりますよ!

1.EBITとは?

EBITとは、「Earnings Before Interest, Taxes」の略語であり、支払利息と税金の影響を除いた、企業の利益を測ることのできる指標です。

日本語では「支払金利前税引前利益」と訳され、口頭では「イービット」と発音されることが一般的です。

スタートアップ期のベンチャー企業や、資金調達によって借入金の多い企業の場合、支払利息が大きくなるために利益が減ってしまいます。

そのため、支払税金や支払利息を考慮に入れる通常の会計指標では、ベンチャー企業等のもつ本来の収益力を測ることが困難です。

そこで、これらの影響を排除し、その企業の事業自体による経営状況を分析するために使われる指標がEBITです。

EBITと営業利益はよく似た指標ですが、EBITが金利以外に発生する営業外損益(有価証券評価損益など)を加えた利益額である点に違いがあります。

なお、2017年に国際会計基準審議会(IASB)は、財務諸表の表示について営業利益ではなくEBITを使用するよう提案しています。

これは、投資家からの意見として、異業種間での比較の容易なEBITの採用を求める声が多かったからだと考えられています。

近年は各種基準が国際化しているため、日本における業績指標も従来の営業利益からEBITがメインとなる可能性もあります。

2.EBITの計算方法

EBITは、税引前当期純利益に支払利息を加え、受取利息を差引くことによって計算します。

EBITの計算方法

EBIT=税引前当期純利益+支払利息−受取利息

※その他財務関連費用があれば利息と一緒に加減算し、影響を消す。

EBITの算出に用いられる「利益」には、営業利益や経常利益、税引前当期純利益など、いくつかのパターンがあり、統一された公式が存在するわけではありません。

そのため、企業が自らEBITを公表している場合で、複数の企業のEBITを比較する場合には、どういった算出方法を用いているのかに注意しましょう。

3.EV/EBIT倍率とは?

EBITを用いた指標に、EV/EBIT倍率があります。

日本語では「営業利益倍率」と呼ばれ、口頭では「イーブイ・イービット」と読みます。

EBITについてはさきほど述べた通りで、EVとは「Enterprise Value」の略で、直訳すると「企業価値」となります。

ここにいう企業価値とは、「時価総額+有利子負債−現金予算」で算出されるもので、「企業が事業を行うために保有する全ての資金」を表します。

EV/EBIT倍率の計算方法は、以下の通りです。

EV/EBITの計算方法
EV/EBIT=(時価総額+有利子負債−現預金)÷EBIT

すなわち、EV/EBITは、「企業の全ての利益(EBIT)に対する、企業の全ての資金(時価総額+有利子負債+現預金)の倍率」を表したものです。

この式では「全ての利益」と「全ての資金」を比較することから、企業の保有する資産(EV)に対して、その成果である全体利益(営業利益)をどれほど創出したのかを算出することができます。

そのため、EV/EBIT倍率では「現在の業績のまま推移すると、その企業を買収したときに何年で元が取れるか」というおおよその目処が立ちます。

EV/EBITが3倍であれば3年、10倍であれば10年で回収できることになりますが、一般的な目安として5〜8倍以下であれば割安であるとされます。

M&Aの場面ではもちろんのこと、銀行や株主が投資を行う際に参考にすることの多い指標です。

4.EBITのメリットとデメリット

ここまでは、EBITの意義や具体的な計算方法について紹介してきました。

EBITは企業のもつ収益力を測るための優れた指標ではありますが、以下に述べるようなメリット・デメリットがあります。

EBITの特徴は、支払税金と支払利息を控除して算出することにあります。

また、EBITは後ほど述べるEBIDAとは異なり、減価償却を考慮に入れて算出します。

このことから、EBITのもつメリットはそのままEBITDAのデメリットとなり、EBITのもつデメリットはEBITDAのメリットとなるなど、表裏一体の関係にあるといえるでしょう。

EBITを用いる際には、これらのポイントに注意し、EBITのみを過信するのではなく他の指標も用いながら分析を行うようにしましょう。

(1)メリット

EBITのもつメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • スタートアップ企業や事業拡大中の企業を分析できる
  • 減価償却費を考慮できる
  • 人事評価に用いることができる

それぞれについて簡単にみていきましょう。

#1:スタートアップ企業や事業拡大中の企業を分析できる

EBITでは借入金の支払利息を控除するため、事業自体のもつ収益力を評価することができます。

そのため、利子負債額が大きい企業や、設立間もなく借入の多い企業の収益性を検討することに向いています。

減価償却を考慮できる

EBITはEBITDAとは異なり、減価償却費を考慮に入れることができます。

EBITDAのみを用いると、大掛かりな設備投資によって経営が逼迫されているかどうかを判断することができません。

伝統的に設備投資が大きい日本企業において、減価償却の推移を把握することができる点はEBITのメリットといえるでしょう。

人事評価に用いることができる

EBITは、企業や部署等が資本に対してどれほどの付加価値を加算することができたかを算出することができます。

そのため、EBITは従業員の成果を金額で表すものとして活用し、人事評価において活用されることもあります。 

(2)デメリット

EBITのもつデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 借入の性質を把握する必要がある
  • 他業種間や年度を跨いだ比較が困難である

これらのデメリットを克服するためには、EBITDAなど他の指標を用いて分析を行う必要があります。

#1:借入の性質を把握する必要がある

EBITは支払利息を控除しますが、この支払利息の内訳をしっかりと把握しなければなりません。

企業が金融機関から借入をする理由はさまざまであり、企業の成長のために不可欠な投資なのか、資金繰りが苦しいために借入れたものなのかによって、その性質は大きく異なります。

そのため、どのような理由での借入であったのかを把握せず、借入を一様に控除するEBITを用いて企業の経営状況を判断することは大変危険です。

他業種間や年度を跨いだ比較が困難である

EBITが減価償却を考慮に入れることは、場合によってはデメリットとして働きます。

設備投資はある程度多額になることが一般的であるため、大幅な設備投資を行った年度の収益は大きく悪化してしまいます。

そのため、ある企業の年度ごとの収益力の変化を把握する際に、EBITだけを用いると純粋な収益力を把握することができません。

また、設備投資に対する減価償却の方法は業種間で様々なため、他業種間での収益力を比較する際にはEBITは向いていません。

5.EBITとEBITDAの違いは?

EBITとよく似た指標に、EBITDA(イービットディーエー、イービットダー)があります。

EBITDAは、「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization」を略したもので、「金利支払い前、税金支払い前、減価償却費控除前の利益」です。

具体的には、以下の計算式で表すことができます。

EBITDAの計算方法

EBITDA=税引前当期純利益+支払利息+減価償却費

または

EBITDA=経常利益+支払利息+減価償却費

EBITとEBITDAの違いは、減価償却費を利益計算に加えるかどうかにあります。

営業利益やEBITは、実際のキャッシュの動きを伴わない減価償却費が差し引かれた後に残る利益のことなので、実際に企業がどれくらいの収益を上げているのかを分析することができません。

また、設備投資や減価償却費は年度によって大きく変動することから、企業の利益の経年変化や、他社との比較が困難です。

一方、EBITDAは減価償却費を足したものなので、企業のキャッシュベースでの収益力を分析することができます。

6.現在はEBITDAの方が主流

今回はEBITについて取り上げてきましたが、実は現在はEBITよりもEBITDAを活用する企業が増加しています。

また、経済全体を牽引するソフトバンク社が決算報告にEBITDAを使用するようになったため、今後は追随する企業も増加するだろうと見込まれています。

企業がEBITDAを活用する主な理由としては、以下の2点が挙げられます。

(1)海外との比較ができる

EBITDAは、EBITと同様に、海外の企業との比較をする際に用いることができます。

税制や税率、金利等は国や地域によって異なるため、税金を差引く前の指標では海外と国内の企業を比較することが困難です。

EBITDAは税引前、かつ、金利支払前の数値であることから、これらに左右されない状態での海外企業との比較が可能です。

(2)業種や年度をまたいでの比較ができる

EBITDAはEBITと異なり、減価償却費を除いて算出するため、設備投資の多寡に影響を受けません。

減価償却の方法は定額法や定率法など、会計基準によって企業で異なる上に、会計年度ごとに計上額の操作をすることができ、信憑性に欠けます。

この点、EBITDAでは減価償却の影響を受けないことから、同業種間だけではなく設備投資額や減価償却方法の異なる他業種間であっても、企業のもつ収益力を比較することができます。

そのため、他業種にまたがってM&Aを行う企業においては、EBITよりもEBITDAを用いる企業が増加しています。

減価償却によって操作された帳簿の利益ではなく、企業のキャッシュベースでの収益力を分析できる点は、EBITにはないEBITDAの大きなメリットといえるでしょう。

7.まとめ

今回は、EBITの意義や計算方法、メリット・デメリットなどについて紹介しました。

現在では主流となりつつあるEBITDAとの違いについて、最後にもう一度確認しましょう。

EBITとEBITDAのおさらい

EBIT=税引前当期純利益+支払利息−受取利息

:借入金の多いベンチャー企業などの収益力分析に有効。

EBITDA=税引前当期純利益+支払利息+減価償却費

:会計基準の異なる海外企業や、設備投資額や減価償却方法の異なる他業種間での収益力分析に有効。

EBITとEBITDAはいずれも優れた指標ですが、それぞれのメリットやデメリットが表裏一体の関係にあるため、分析に用いる際にはいずれの指標が適しているかを見極める必要があります。

また、それぞれの指標の算出・分析には、会計やM&Aに関する専門的知識が必要となるため、必要であれば専門家へ相談することをおすすめします。

この記事をしっかりと読んで、さらに重要性を増していくEBITやEBITDAに関する知識を身につけておきましょう。

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