「最近ニュースでESG投資という言葉をよく見るけど、ベンチャー企業にも投資してくれるの?」
「ESG事業に投資してくれるベンチャーキャピタルってあるの?」
こんな風に、思ったことはありませんか?
そこで、本記事では、ESG事業に取り組むベンチャーの経営者に向けて、VCによるESG投資の現状と今後、ESG事業を営むベンチャーへの投資事例、積極的にESG投資を行っているVCについて解説していきます。
- ESG投資とは?
- VCによるESG投資の現状と今後
- ベンチャー企業へのESG投資事例
- 積極的にESG投資を行っているVC
- まとめ
ESG投資とは?
ESG投資は、企業の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)も考えた投資のことです。ESGに取り組んでいる企業は、社会的に意義のある事業を行っていると言えます。
Environment:環境
・環境汚染への対応
・再生可能エネルギーの使用
・水資源の有効活用
・廃棄物の管理
Social:社会
・ダイバーシティ
・ワークライフバランス
・サプライチェーンのリスク管理
・地域社会への貢献
Governance:ガバナンス
・積極的な情報開示
・株主権利の確保
・汚職防止
・公正な競争
※ESG投資についてはコラム「ESG投資とは?|SDGsとの違いや中小企業への投資事例を解説!」もご覧ください。
VCによるESG投資の現状と今後
現在、日本でも機関投資家によるESG投資が活発になってきています。
それでは、ベンチャー企業への投資はどうでしょうか?
ベンチャー投資にもESGの波は、来ています。例えば、2020年には、BlackCrow Capitalは国内VCとして初めてPRIに署名したり、ソニーは環境ベンチャー対象のCVCを創設すると発表しています。そのため、ベンチャー企業でもESGを意識することが必要になっていくでしょう。
ただもちろん課題もあります。
環境、エネルギー、社会などのの課題解決は大規模な設備投資や長期的投資が必要な場合もあります。またどんな市場性があるのか未投資がはっきりしない分野もあるため、VC(ベンチャーキャピタル)やPE(プライベートエクイティファンド)などの民間の投資が十分ではありません。今後政府機関による支援や制度の拡充が期待されています。
また、ESGに関する項目の評価基準や企業の情報開示方法も統一的なものがまだ確立されていないので、現在まさに多くの検討会が設置され急速なスピードで検討が行われています。
ベンチャー企業へのESG投資事例
「これからESGに関連する事業を行いたいが、資金調達できるか不安」、「実際に資金調達出来ているベンチャーってあるの?」と悩まれているベンチャー経営者もいるでしょう。
それでは、ベンチャー企業へのESG投資事例を見ていきましょう。
農薬スタートアップ「アグロデザイン・スタジオ」
アグロデザイン・スタジオは、害虫や雑草、病原菌がもつ「ヒトには無いタンパク質」を薬剤のターゲットとすることで、毒性リスクの低い農薬を開発しています。
2020年に、リアルテックファンド、インキュベイトファンドなどからシーズラウンドで約1億円の資金調達に成功しました。これは国内の農薬スタートアップがVCから資金調達を行った初事例です。
一般的に農薬の開発には、1剤当たり100億円以上の研究開発費と、10年以上の歳月がかかってしまいます。しかし、医薬業界では、初期の研究開発はベンチャー・VCが行い、後半の開発は大手製薬会社が引き継ぐというモデルが出来ており、多数の創薬型スタートアップが存在します。この資金調達の背景は、この医薬業界のモデルを農薬開発に取り入れ、開発を加速させることがあります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000053081.html
障がい者手帳アプリを運営する「ミライロ」
ミライロはユニバーサルデザインのソリューション提供や、障がい者手帳アプリ「ミライロID」を運営しているます。2021年に、京王電鉄株式会社、住友林業株式会社、西武鉄道株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、ヤマトホールディングス株式会社などから、第三者割当増資により2億8,000万円の資金調達に成功しました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000034221.html
積極的にESG投資を行っているVC
今までVCは、リターンが早めに出るIT企業に多く投資をしてきましたが、今後はESG関連事業にも投資されるようになるでしょう。そのため、今までは資金調達が困難であったようなESG関連事業も、資金調達が出来る可能性が高まります。それでは、積極的にESG投資を行っているVCを見ていきましょう。
BlackCrow Capital
BlackCrow Capitalは「労働人口減少と高齢化による社会課題をスタートアップのイノベーションで解決する」ことを目指したVCです。
2020年10月19日に、国内VCとして初めてPRI(責任投資原則)への署名を実施しました。
PRIとは、機関投資家が投資をする際にESGの観点を組み込んで、長期的なリターンを目指そうとする原則です。この署名により、PRI署名機関として、ESGの観点から投資事業に取り組むという表明になりました。
環境エネルギー投資
環境エネルギー投資は、「Sustainability through innovation and entrepreneurship」をミッションに掲げ、環境・エネルギー分野でイノベーションを担うベンチャー企業への投資を行っています。
環境エネルギーの投資事例は、オフグリッド電力供給サービスを展開するVPP Japanがあります。オフグリッド電力供給サービスとは、国内のスーパーマーケットなどの屋根に無償で自家消費型太陽光発電システムを設置し、送電網を介さず、建物に直接電力を供給するサービスです。
まとめ
日本でも、上場企業だけでなくベンチャー企業へのESG投資は増えてきています。元々様々な社会課題の解決を目標として起業していることが多いベンチャー企業はESGへの親和性も高いと言われています。
研究者として事業化を検討している方やベンチャー企業の経営者も、今後更にESGに注目していく必要があると言えるでしょう。