事業継承を成功させる秘訣!自社株買いのルールを解説

経営者の方々は、事業承継について考えている機会も多いのではないでしょうか?

「M&Aによる事業承継について知りたい」
「事業承継と自社株買いはどんな関係があるのだろう?」

と気になっている方は必見です!

M&A関連業務の経験豊富な会計士が、自社株買いのルールについてわかりやすく説明します。

1.自社株買いが制限されていた3つの理由

自社株買いは、会社法で定められたルールに従って適切に行わなければなりません。

かつては企業が自社株買いを行うことは制限されていましたが、一定の条件下であれば可能になりました。

自社株買いのルールについて理解するために、自社株買いが規制されていた理由についても知っておきましょう。

理由1.会社の出資金を減らすこととなり会社債権者を害する

1つ目の理由は、会社の出資金を減らすこととなり会社債権者を害する恐れがあるからです。

「株主は出資した金額以上の責任を負わない」という決まりがあるため、無条件・無制限に自社株買いが行われると債権者に損害を与える恐れがあります。

そのため、自社株買いは会社の分配可能額(剰余金の額を基準に、一定の項目を加算・減算して算出した金額)の範囲内でのみ行うことができると定められているのです。

理由2.取得金額によっては株主平等原則違反となる

2つ目の理由は、株主平等原則に違反する恐れがあるからです。

株主平等の原則とは、「株主の権利は平等であり、株式の内容は同一である」ことをいいます。

一般の投資家よりも安い価格で自社株買いを行えば当然、株主同士で不平等となってしまいますね。

理由3.インサイダー取引などの不公正な取引を誘発する

3つ目の理由は、インサイダー取引などの不公正な取引を誘発する恐れがあるからです。

一般の投資家には公表せずに自社株買いをこっそり行えば、当然その企業だけが得をすることになりますよね。

このような不公正な取引はあってはならないことで、未然に防がなければなりません。

以上の3つの理由により、自社株買いは原則禁止とされていました。

2.自社株買いを認める3つのメリット

ここまで読むと、「こんなにたくさんデメリットがあるのに、なぜ自社株買いが解禁されたのだろう?」と疑問に感じますよね。

その理由は、自社株買いには以下の3つのメリットがあるからです!

これを読んで、自社株買いのルールについての理解をさらに深めましょう。

メリット1.敵対的買収を防止できる

1つ目のメリットは、敵対的買収を防止できる点です。

敵対的買収とは、対象会社の合意を得ず株式を取得して経営権の獲得を狙うというもので、日本では2005年にライブドアが敵対的買収を行い、世間を騒がせました。

自社株買いによって自分の会社の持ち株比率を高めると、敵対的買収に対抗することができます。

しかし、日本におけるM&Aは友好的買収が圧倒的に多いため、これは稀な例です。

メリット2.合併や会社分割に際の負担を抑えることができる

2つ目のメリットは、合併や会社分割に際の負担を抑えることができる点です。

企業を買収する際に必要な株式取得費用を、現金の代わりに自己株式で払うこともできます。

まとまったキャッシュを用意することが困難な企業にとって、これは大きなメリットとなりますね。

メリット3.分散した株式をまとめることができる

3つ目のメリットは、分散した株式をまとめることができる点です。

一般的に、M&Aを行う前には株式を集約します。

自己株式には議決権が含まれていないため、自社株買いにより発行済株数を減らせば自分の持ち分割合が増え、議決権を得ることがでるからです。

こうすると、事業承継やM&Aなどの手続きもスムーズに行うことができますね。

このようなメリットがあるため、自社株買いの自由化が進められたというわけです!

3.自社株買いを行う際の手続き

ここまで読んで、「メリットがあるなら、自社株買いを行いたい!」という気持ちが芽生えた人もいるのではないでしょうか?

そんな人たちのために、次は実際に自社株買いを行う際の手続きについて詳しく説明します。

M&Aによる事業承継を考えている方は、ぜひ読んでみてください!

(1)不特定株主からの取得手続の場合

自己株式を取得するための会社法上のルールは、譲渡人をあらかじめ指定するかどうかによって大きく変わります。

譲渡人をあらかじめ指定しない場合、つまり不特定の株主から自己株式を取得する場合には、「株主平等の原則」の違反となる恐れが比較的少ないと考えられますね。

そのため、手続も特定の株主から自己株式を取得する際よりも簡潔です。

手順1.株主総会の普通決議

まず初めに、「株主総会の決議」で次の3事項を決定します。

  1. 取得する株式の数(株式の種類と種類ごとの数)
  2. 株式取得と引換えに交付する金銭等の内容及びその総額
  3. 株式を取得することができる期間(1年未満の期間)

上記3つを決議した上で、自己株式の取得を行うごとに、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)で以下の4事項を取り決める必要があります。

  1. 取得する株式の数(株式の種類と種類ごとの数)
  2. 一株につき交付する金銭等の内容、額
  3. 交付する金銭等の総額
  4. 申込みの期日

手順2.株主への通知(公告)

株主総会の決議によって決定された「株式数、金額、期日」を株主に対して通知します。

なお、「公開会社」の場合には、「公告」という方法によることも可能です。

手順3.株主からの申込

通知を受けた株主は、会社に対して取得を希望する株式数を明らかにし、申込みを行います。

(2)譲渡人を指定する場合

特定の株主から自社株買いをする場合は、その取得金額によっては「株主平等の原則」違反となる恐れが強まります。

そのため、他の株主にも投下資本回収のチャンス(株主追加請求権)を与えなければなりません!

したがって、前述の不特定株主からの自己株式取得の手続とは、次の2点が異なります。

相違点1.株主総会の特別決議が必要

株主総会の「特別決議」を取得する必要があります。

株主間の公平を害しないように、この株主総会の特別決議では売主となる株主の議決権は制限されます。

相違点2.売主追加請求権

特定の株主だけが株式を会社に売却できるのでは、株主平等原則を損なう恐れがありますね。

そのため会社法では、他の株主に当該特定の株主に加えて自分も売主とするように請求できる権利「売主追加請求権」を定めています。

「売主追加請求権」を株主が行使した結果、会社が取得を予定する自己株式数を超えた場合には、各株主から案分して取得します。

その結果、当初予定していた株主からの自己株式の取得を、予定通りに行えなくなる可能性があります。

売主追加請求権の例外

次の2つのケースでは、「売主追加請求権」が例外的に認められていません。

1、市場価格ある株式取得(会社法161条)

取得する株式が市場価格ある株式であって、取得と引換えに交付する金銭などが市場価格を越えない場合には、他の株主の利益を害するおそれがないため、売主追加請求権が認められていません。

2、相続人等からの取得(会社法162条)

株主の相続人その他の一般承継人から、その相続その他の一般承継により取得した自己株式を取得する場合には、他の株主の利益を害するおそれがないため、売主追加請求権が認められていません(ただし、公開会社である場合と、当該相続人その他の一般承継人が議決権を行使した場合には、売主追加請求権が認められています。)。

次の2つのケースでは、「売主追加請求権」が例外的に認められていません。

1、市場価格ある株式取得(会社法161条)

取得する株式が市場価格ある株式であって、取得と引換えに交付する金銭などが市場価格を越えない場合には、他の株主の利益を害するおそれがないため、売主追加請求権が認められていません。

2、相続人等からの取得(会社法162条)

株主の相続人その他の一般承継人から、その相続その他の一般承継により取得した自己株式を取得する場合には、他の株主の利益を害するおそれがないため、売主追加請求権が認められていません(ただし、公開会社である場合と、当該相続人その他の一般承継人が議決権を行使した場合には、売主追加請求権が認められています。)。

5.まとめ

2001年商法改正によって解禁された「自己株式の取得」は、株式会社の経営を安定させ、相続、事業承継、組織再編などのタイミングで散らばりがちな株式をまとめる大きな効果を持ちます。

しかし、「資本充実の原則」
「資本維持の原則」
「株主平等の原則」
など、株式会社の大原則に対する一定の例外となることから、会社法に定められた手続に従って行わなければなりません。

自己株式の取得をスムーズに進めたい経営者の方は、M&A関連業務の経験豊富な会計士にお気軽にご相談ください!

 

関連記事

  1. アーンアウト条項とは?設定期間や会計処理から事例まで徹底解説

  2. 事業譲渡とは?会計や税務上の手続きを基礎から徹底解説!

  3. 負ののれんとは?基礎的知識やのれんとの違いを具体例を用いて徹底解説

  4. 株式譲渡とは?税金や契約の手順・メリットとデメリットを徹底解説

  5. MBO(マネジメントバイアウト)の意味とは?事例を用いて徹底解説!

  6. NDA(秘密保持契約)とは?NDAの目的や注意点を徹底解説