有料職業紹介の合意された手続とは?特徴や任意監査との違いを徹底解説
「有料職業紹介では合意された手続を選択できる?」
「任意監査と合意された手続の違いは?」
有料職業紹介事業の更新では、合意された手続を選択できます。
ただし、任意監査と合意された手続では、公認会計士の作業内容と報告書の記載内容が異なります。
任意監査では、公認会計士より決算書が適正であることを保証してもらえますが、合意された手続では決算書が適正であることは保証されません。
また、作業工数やコストにも違いがあります。
本記事では、有料職業紹介事業における合意された手続について詳しく解説します。
1.更新では「合意された手続」を選択可能
有料職業紹介事業の更新では、合意された手続を選択できます。
有料職業紹介の更新申請の際は資産要件を満たした直近の決算書を提出する必要があります。
ただし、直近の決算書が資産要件を満たす内容でない場合、期中決算による仮決算書を用いるケースがあります。
仮決算書にて申請する場合、監査証明書の添付が必要です。
監査証明書は、以下のいずれかで入手します。
- 任意監査による監査報告書
- 合意された手続による合意された手続実施結果報告書
基本的には、任意監査による監査報告書となっていますが、合意された手続による「合意された手続実施結果報告書」であっても許可される仕組みとなっています。
自由に選択できるので、いずれも特徴を把握しておくと良いでしょう。
2.「任意監査」と「合意された手続」の違い
有料職業紹介の許可申請においては、任意監査と合意された手続のいずれかを選択できますが、違いを把握しておくことが大切です。
公認会計士の作業内容と報告書の記載内容が異なります。
どちらを選択するのが良いかは、状況により異なるので公認会計士に確認しましょう。
(1)任意監査
任意監査では、公認会計士が定められた監査基準に従い、チェックします。
監査手続の内容は公認会計士が決めるものの、決算書が適正であることを保証する仕組みです。
最終の監査報告書を作成する際は、手続結果とともに、決算書が適正であることを記載します。
任意監査には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
任意監査のメリット
- 公認会計士に決算書の適正を保証してもらえる
- 許可申請を受けられないリスクが低い
任意監査のデメリット
- チェック項目が多いため時間がかかる
- 工数が多いためコストがかかる
任意監査の工数やコストは、企業の規模や資産によっても異なります。
規模がそれほど大きくない場合は、コストが低くなります。
ただし、資産が多いなど大規模な事業を行っている場合は、任意監査の工数も多くなります。
任意監査では、以下のように細かいチェックを行います。
- 決算書の資産が会社のものであるか
- 負債の計上漏れはないか
- 貸借対照表の精査
- 損益計算書の精査
スムーズに任意監査を完了するには、必要書類を速やかに準備することが大切です。
また、公認会計士とこまめにやり取りすることで、期間を短縮できるケースが多いです。
(2)合意された手続
合意された手続では、任意監査と異なり、決算書が適正であることは保証されません。
合意された手続を行う際は、公認会計士と手続内容や件数などの詳細を決め、結果を報告書に記載する仕組みです。
決算書の適正についての判断は、労働局側が行うので、必ずしも許可申請を通過できるとは限りません。
【合意された手続のメリット】
- チェック項目が限定的なので工数が少ない
- 完了までの期間が短い
【合意された手続のデメリット】
- 公認会計士に決算書の適正を保証してもらえない
- 労働局側に許可されず差し戻される可能性がある
任意監査と合意された手続それぞれの特徴やメリット・デメリットを考慮し、いずれを選択するか検討しましょう。
3.「合意された手続」の特徴
合意された手続は、手続や確認事項、費用、依頼条件など様々な点で任意整理と異なる特徴があります。
ここでは合意された手続の特徴や流れについてご説明します。
(1)「合意された手続」の流れ
【合意された手続の流れ】
①公認会計士と相談し手続内容を協議
②手続内容確定後に契約
③公認会計士が「合意された手続実施結果報告書」を作成
合意された手続では、まず、公認会計士と手続内容を協議します。
たとえば、以下のような内容を確認します。
- 手続の目的
- 手続を行う勘定科目
- 確認内容
手続内容確定後、契約することとなります。
契約完了後は、合意された手続に必要な資料を提出します。
資料提出後は、公認会計士が必要な手続を行う流れです。
最終的には、公認会計士が報告書「合意された手続実施結果報告書」を作成し、事業主が受け取ります。
なお、公認会計士が作成する報告書には、手続内容と結果が記載されています。
ただし、報告書では、決算書の適正については触れられていません。
合意された手続では、公認会計士による決算書の適正に関する保証がないので、労働局側が評価する仕組みです。
(2)「合意された手続」の確認事項
合意された手続では、あらかじめ公認会計士と手続内容を確認します。
一般的に、以下のような点を確認します。
- 決算書
- 総勘定元帳
- 預金残高証明書
- 現金有高帳
- 固定資産
- 固定資産台帳
- 新規購入資産
- 証憑書類
- 貸付金
- 法人税
- 借入金残高
- 資本金
- 履歴事項全部証明書
- 経営方針
合意された手続では、報告書に記載されるのは手続の結果のみですが、決算書の適正を把握するのに有用な情報が必要です。
合意された手続で実施される重要事項を把握しておきましょう。
(3)「合意された手続」にかかる費用
有料職業紹介事業の合意された手続にかかる費用は、依頼先や工数により異なります。
一般的に、合意された手続にかかる費用は、最低10万円~となります。
合意された手続においては、公認会計士が決算書の適正を保証する必要がないので、作業量が抑えられ、結果として費用が抑えられることもあります。
公認会計士に依頼する際は、あらかじめ見積もりを取ることをおすすめします。
(4)「合意された手続」を依頼する条件
有料職業紹介事業を新規で始める際は、対象外ですが、更新であれば、合意された手続で許可を得られます。
合意された手続で許可を得るには、以下の資産要件を満たすことが必須です。
- 開業:1事業所当たり500万円以上
- 更新:1事業所当たり350万円以上
ただし、有料職業紹介を継続できるかは、労働基準監督署が判断します。
状況によっては、合意された手続では許可されない可能性もあります。
確実に許可を得たい場合は、監査証明を選択するのが無難です。
資産要件の詳細は以下の記事で解説しておりますので合わせてご参照ください。
4.監査証明・合意された手続を依頼する際の注意点
監査証明・合意された手続は、公認会計士に依頼する必要があります。
ただし、依頼できる公認会計士には制限があります。
依頼先によっては、監査の結果に影響するケースもあるので注意が必要です。
監査証明・合意された手続を依頼する際の注意点について解説します。
(1)第三者の公認会計士に依頼する
監査証明・合意された手続を依頼できるのは、公認会計士のみです。
利害関係がない第三者の公認会計士に依頼する必要があり、手続までのスケジュールを考えると有料職業紹介の監査経験が豊富にある公認会計士に依頼するのが良いでしょう。
会社と契約している、会社役員と関係性が深いなど、距離が近い公認会計士には依頼できません。
条件を満たさない公認会計士に依頼すると、合意された手続完了後であっても、許可を得られない可能性があります。
あらかじめ依頼できる公認会計士の条件を把握しておきましょう。
(2)紹介業の監査証明に精通した会計士に依頼する
有料職業紹介の合意された手続を依頼する際は、監査証明に精通した公認会計士を選ぶのがポイントです。
というのも、有料職業紹介の監査に関して、十分な知識を持っている公認会計士はそれほど多くありません。
公認会計士の知識・経験不足により、手続に必要以上に時間がかかったり、不備がありトラブルに発展するケースもあります。
なお、合意された手続の場合、手続が完了したとしても、登録申請できるとは限りません。
合意された手続は公認会計との相談で手続内容を決めるため、やはり経験やスキルが重要です。
有料職業紹介の監査事情を把握している公認会計士であれば、適切な判断・手続ができます。
あらかじめ公認会計士に関する情報収集を行い、監査を任せられるか見極めましょう。
(3)許可審査の要件を満たしているか確認する
合意された手続を依頼する際は、許可審査の要件を満たしているかの確認が必要です。
というのも、月次決算書などが基準を満たしているとしても、許可を得られるとは限りません。
決算月以外に申請する場合、月の途中で仮決算を行わなければなりません。
なお、公認会計士が確認する際、修正が必要と判断された場合、基準を満たさなくなるケースもあります。
たとえば、「売上を過剰に計上していないか」「滞留債権がないか」なども確認が必要です。
有料職業紹介事業の開始・更新時に指摘されうる内容を把握し、あらかじめ確認しておきましょう。
(4)すぐに申請が必要であるか確認する
有料職業紹介事業の更新をする際、年度の途中で申請するケースがあります。
要件を満たした月がある場合、すぐに申請したいと考える事業者もいるのです。
決算が締まる年度末であれば、公認会計士による監査証明なしで更新できるケースもあります。
有料職業紹介の更新に関しては、タイミングの検討も重要です。
(5)監査証明・合意された手続に関する報告書は利用制限あり
監査証明・合意された手続に関する報告書は利用制限があります。
有料職業紹介の事業許可のために作成されたものは、それ以外の用途で使用することはできません。
まとめ
有料職業紹介の合意された手続は、任意監査と異なり、決算書が適正であることは保証されません。
決算書の適正の判断は労働局側が行うので、必ずしも許可申請を通過できず、差し戻しを受ける可能性もあります。
とはいえ、合意された手続は作業工数が少ない傾向にあるので、時間短縮やコストを抑えることが可能です。
状況に応じ、任意監査と合意された手続いずれが適しているかは異なるので、専門家へ相談することをおすすめします。
任意監査と合意された手続の特徴や違いを把握し、最適な方法でスムーズに事業を進めましょう。