有料職業紹介事業の資産要件とは?基準資産要件・現金預金要件と要件をクリアするポイントを解説

紹介業監査

「有料職業紹介事業を行うにはどうすれば良い?」

「有料職業紹介事業を開始する要件は?」

「有料職業紹介事業の更新の時期が近付いているけど、要件を満たしているのか?」

有料職業紹介事業の開始や更新には、基準資産要件や現金預金要件など、満たすべき基準があります。

直近の決算書で要件を満たしているか判断されますが、直近の決算書で満たさなくても試算表ベースで要件を満たすことができれば、監査証明や合意された手続を提出することで資格要件をクリアすることができます。

本記事では、有料職業紹介に必要な資産要件やクリアするポイント、注意点などについて詳しく解説します。

1.有料職業紹介事業の開業・更新に必要な資産要件

有料職業紹介事業を開業・更新する際は、厚生労働省より許可を受けなければなりません。

有料職業紹介事業を行う際には、健全な事業を行えるよう、一定の資産要件が設けられています。

満たすべき資産要件には、基準資産要件と現金預金要件があります。

この2つの要件を満たしているか直近の決算書で判断されます。

ただし、決算書で要件を満たしていなくても、直近の試算表を作成し、公認会計士から監査を受け監査証明を取得することで、有料職業紹介事業の開業・更新が可能です。

ここでは有料職業紹介事業の開業・更新に必要な資産要件について詳しく解説します。

(1)基準資産要件

有料職業紹介事業を行う際は、基準資産要件を満たす必要があります。

基準資産額とは、資産の総額から負債の総額を控除した額のことです。

基準資産要件の基準は以下の通りです。

  • 開業:1事業所当たり500万円以上
  • 更新:1事業所当たり350万円以上

なお、基準資産要件の対象となるのは、現金のみではありません。

株式や関係会社株式といった有価証券、土地や建物、設備といった有形固定資産、商品などの棚卸資産なども含まれます。

借入による資金は負債扱いなので、資産総額から控除される点も注意が必要です。

(2)現金預金要件

有料職業紹介の事業許可をもらうには、基準資産要件だけでなく、現金預金要件も満たす必要があります。

現金預金要件は、開業時の条件であり、更新時に証明する必要はありません。

事業を開始する際は、150万円以上の事業資金が必要です。

なお、事業所が複数ある場合は、現金預金要件は以下のように算出されます。

現金預金要件:(事業所数-1)×60万+150万

事業所数に応じ、必要な現金預金額が異なるので、あらかじめ把握しておきましょう。

2.有料職業紹介の資産要件を満たすには

有料職業紹介の資産要件を満たすには、効率的に資産を確保する必要があります。

有料職業紹介事業を開業するには、資産が500万円必要なことを意識しておくのがポイントです。

更新時には資産が350万円以上必要であるため要件を満たしているかどうか意識する必要があります。

また、負債があると、総資産からマイナスされることになり、資産要件を満たさなくなる可能性があるので注意が必要です。

有料職業紹介の資産要件を満たすコツについてご紹介しますので、参考にしてみてください。

(1)資本金が500万円以上の会社を新規設立する

開業時の有料職業紹介の資産要件を満たすため、資本金の金額が500万円以上の会社の新規設立ができないか検討してみましょう。

新規設立時に資本金が500万円以上あると、設立時の費用を繰延資産として計上したとしても、純資産から繰延資産を引いた金額が500万円を超えていれば、基準資産要件も現金預金要件も同時に満たすことができます。

(2)エクイティファイナンスを行う

自己資金で500万円以上を用意できなかったり、既にほかの事業があって新規で有料職業紹介事業を行う場合は、エクイティファイナンスも選択肢の一つとなります。

エクイティファイナンスで調達した金額は純資産の部に計上されますので、基準資産要件で資産から控除される負債の金額の増加にはなりません。

また、エクイティで調達した金額には銀行から調達するデッドファイナンスと異なり返済義務が無いことも魅力の一つです。

ただし、出資してくれる投資家を募る必要があり、スピードにかける手段であることは否めません。

出資してくれる投資家を探すにも、出資に対するリターンを投資家に説明する必要があるため、M&AやIPOといったExit戦略を整理することが求められます。

また、エクイティの場合は出資の代わりに出資金額に応じた経営権を投資家に渡すこととなるため、今後の経営において利害関係者が増えることも慎重になるべきポイントです。

(3)増資する

経営の進行期中であっても増資を行うことで純資産額や資産額を増加させることができます。

増資の場合は経営者個人から企業に対してお金を出資する形になるため、個人が現金を保有していればエクイティファイナンスに比べて素早く資産要件を満たすことができます。

3.有料職業紹介事業の許可申請ができない場合

有料職業紹介事業の許可を得るには、資産要件を満たすことが必須です。

ただし、資産要件を形式上満たしたとしても、監査にて不十分と判断され、通過できないケースがあるのです。

有料職業紹介事業における資産に関しては、以下のような負の面も確認されます。

  • 未回収の売上債権
  • 減価償却費の計上不足
  • 簿外負債
  • 固定資産の減損要素

なお、帳簿の記載などに関する要件もあります。

有料職業紹介事業の許可申請ができない場合について詳しく解説します。

(1)未回収の売上債権が長期間計上されている

未回収の売上債権が長期間計上されている場合、有料職業紹介の要件を満たさないケースがあります。

決算書に、同じ取引先との未収金が長期間記載されている場合、回収できないと判断されるのです。

貸倒引当金として処理するなどの対応が必要となった場合、負債項目が増額することとなり、基準資産要件に影響するので注意が必要です。

(2)減価償却費を正しく計上していない

減価償却費を正しく計上していないと、資産要件を満たさないという判断になる可能性があります。

というのも、企業によっては、減価償却費の計上を少なめにしているケースがあるのです。

監査を受ける際に減価償却費の計上漏れが分かると、資産を修正され、資産要件を満たさなくなるケースがあります。

監査を受ける際は、減価償却費の取り扱いにも注意が必要です。

(3)簿外負債がある

簿外負債がある場合、有料職業紹介の許可申請をできない可能性があります。

簿外負債があると、資産要件をクリアできなくなるケースがあるのです。

簿外負債の例は、以下が挙げられます。

  • 取引先の保証債務を計上していない
  • 計上するべき資産除去債務を計上していない

簿外負債は資産要件に影響するので、あらかじめチェックしておきましょう。

(4)固定資産に減損要素がある

固定資産に減損要素がある場合、資産要件を満たさない可能性があります。

将来の利益を見越し初期投資したとしても、初期の見込み金額よりも将来の収益が低くなるケースがあります。

初期投資額よりも将来の見込み収益が少ない場合、減損損失として計上することになります。

固定資産に減損の要素がある場合、資産要件に影響するため、あらかじめ把握しておきましょう。

(5)帳簿をつけていない

帳簿をつけていない場合、有料職業紹介の監査を受けることができません。

というのも、監査する際は、帳簿の情報をもとに確認を行います。

帳簿がない場合は、監査する際の情報が不足するので監査を実施できず、監査証明書が発行されません。

有料職業紹介事業の許可を受けたい場合は、帳簿を必ずつけておくようにしましょう。

4.有料職業紹介事業にかかるコスト

有料職業紹介事業を立ち上げる際は、2つの要件を満たす必要がありますが、その後の更新を見据えると普段からかかる費用についても抑えておくことが重要です。

ここでは、有料職業紹介事業にどのようなコストがかかるか紹介します。

(1)初期費用

有料職業紹介の事業を立ち上げる際は、初期費用が必要です。

以下のようなコストがかかります。

  • 資本金
  • オフィスの賃料
  • 講習会の受講費用
  • 法人登記手続き費用

有料職業紹介事業に限らず、株式会社を立ち上げる際は資本金が必要です。

また、オフィスを利用して事業を開始する場合は、オフィス賃料がかかります。

有料職業紹介事業のオフィスでは、プライバシー保護などにも配慮する必要があるので、オフィスの環境整備に100万円程度コストがかかるケースもあります。

その他、固定回線の設置義務などの条件もありますし、アクセスしやすい立地にするなど、様々な点を考慮する必要があります。

なお、有料職業紹介事業を開始する際は、職業紹介責任者講習会の受講が必須であり、受講料が必要です。

さらに、法人登記手続き費用も発生し、登録免許税や収入印紙の費用に加え、専門業者に依頼する場合は別途依頼料が発生します。

許可条件を満たしたオフィス環境を整え、必要な手続をする際に、資本金とは別に初期費用が必要であることを把握しておきましょう。

(2)運営費

有料職業紹介事業を行う際は、運営費が必要です。

運営費としては、以下のような費用が発生します。

  • 求人開拓費用
  • 広告費用
  • サイト運営費用

有料職業紹介事業を行う際は、企業からの求人が必要です。

企業への広告や訪問などにかかるコストを考慮しなければなりません。

また、求職者の集客費用もかかります。

メールの送信や広告などにかかるコストを考慮する必要があります。

健全な運営には、十分な運営費用の確保が重要です。

5.有料職業紹介の資産要件に関するQ&A

有料職業紹介事業の許可を取得するには、資産要件を満たす必要がありますが、様々な疑問が生じることと思います。

有料職業紹介の資産要件に関するよくある質問をご紹介します。

(1)有料職業紹介事業は500万円の資産があれば開始できる?

現金500万円確保したとしても、資産要件をクリアできるわけではありません。

これまで述べたように、資産から負債が控除されるため、総資産から負債額を差し引いた金額が500万円以上であることが必要です。

また、資産の内訳として、150万円以上の現金預金が必要です。

(2)有料職業紹介の資産要件は個人事業主と法人どちらが満たしやすい?

有料職業紹介の資産要件は、法人よりも個人事業主の方がクリアしにくいと言われています。

個人事業主が許可申請を行う際は、事業とは関連のない住宅ローンなどもマイナス資産の対象となり、資産要件に影響します。

一方、法人の場合は、個人の負債は含まれないので、総資産に影響しません。

(3)資産要件をクリアしているかはどのように確認できる?

有料職業紹介事業を開始・更新する際、資産要件をクリアしているかの確認が気になる方は多いです。

資産要件を満たしているか判断する際は、決算書や直近の試算表の内容を確認します。

会計・財務の専門家でないと、細かい点は判断が難しいため、公認会計士へ相談されることをおすすめします。

Univisでは多数の有料職業紹介事業の監査証明を取り扱ってきました。

最短即日で監査証明を発行でき、資産要件をクリアしているかどうかのご相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

(4)資産要件を満たしていない場合に申請できる?

資産要件を満たしていない場合は許可を得られません。

資産要件を満たすよう、対策する必要があります。

まとめ

有料職業紹介事業を行う際は、健全な運営ができるよう、資産要件が定められています。

満たすべき資産要件には、基準資産要件と現金預金要件があるので、あらかじめ把握しておかなければなりません。

また、有料職業紹介の資産要件を満たすには、資本金500万円以上の会社を新規設立するのはもちろん、エクイティファイナンスや増資の検討などの工夫が必要です。

資産要件を形式上満たしたとしても、監査に通過できないケースもあるので注意しましょう。

なお、有料職業紹介事業を行う際は、資産要件を満たすのみならず、初期費用や運用費用の確保も必要です。

十分な資金調達を行い、有料職業紹介事業の開始・更新を成功させましょう。