有料職業紹介の監査証明とは?必要な手続やポイントを徹底解説!
「有料職業紹介の監査証明とは?」
「有料職業紹介事業の監査を受けるにはどのような手続が必要?」
有料職業紹介事業を行うためには、厚生労働省の許可が必須ですが、具体的にどのような手続を行うか把握していない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
有料職業紹介事業を行うには、資産要件を満たしていることを示さなければなりません。
監査をスムーズに受けるには、依頼する流れやスケジュール、必要書類、条件、費用などを把握しておくことが大切です。
本記事では、有料職業紹介の監査証明について詳しく解説します。
1.職業紹介事業とは
職業紹介事業には、大きく分けて有料職業紹介と無料職業紹介の2つの事業があります。
有料職業紹介事業は厚生労働省の許可が必須ですが、無料職業紹介事業は許可なしで運営できます。
では、2つの職業紹介事業について詳しく解説します。
(1)有料職業紹介事業
有料職業紹介事業は、報酬を受け取って職業紹介を行う事業です。
有料職業紹介事業の許可を受けている場合、紹介を禁止されている一定の職業以外であれば、求職者に紹介できます。
有料職業紹介事業においては、人材紹介を依頼した企業から手数料を受け取る仕組みになっており、有料職業紹介を行うためには、厚生労働省の許可が必須となります。
ちなみに、求職者は有料職業紹介の利用料金がかかりません。
一般的には法律にて、求職者から報酬を受け取ることが禁止されています。
ただし、一部の職種では、求職者からの手数料の受け取りが認められています。
(2)無料職業紹介事業
無料職業紹介事業は、報酬を一切受け取らずに職業紹介を行う事業です。
たとえば、教育期間でのキャリア支援などが挙げられます。
無料職業紹介事業に関しては、厚生労働省による許可は必要ありません。
また、取扱職種に制限がないことも、特徴として挙げられます。
2.職業紹介事業の監査証明とは
職業紹介事業を行うためには、資産要件を満たす必要があります。
開業・更新時に資産要件を満たさない場合には、監査証明が必要となるのです。
職業紹介事業の監査証明について3つのポイントに分けて詳しく解説します。
(1)職業紹介事業には開業・更新時に資産要件がある
職業紹介事業には開業・更新時に資産要件があります。
以下の2つの要件を満たすことが必須です。
- 基準資産要件
- 現預金要件
職業紹介事業における開業・更新時の資産要件については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
(2)開業・更新時に資産要件を満たさない場合に監査証明が必要
職業紹介事業の監査証明は、開始・更新時に資産要件を満たさない場合に必要となります。
資産要件は、原則直近の決算書を提出し、許認可申請を行うこととなります。
ただし、直近の決算書で資産要件を満たしていない場合、直近の試算表の監査を受け、監査証明を取得することで許認可申請ができることとされています。
いずれのケースにおいても、厚生労働省に許可申請を行う際に必須となるのが、資産要件を満たすことです。
資産要件をクリアしていることを決算書により証明できる場合は、スムーズに許可を得られますが、そうでない場合は資産要件を満たした後で申請しなければなりません。
資産要件クリア後、仮決算書とともに提出を求められるのが監査証明書です。
監査証明書を発行できるのは公認会計士のみなので、公認会計士への依頼が必要です。
(3)監査証明は第三者の公認会計士に依頼する必要がある
監査証明書を発行できるのは、公認会計士のみです。
監査証明は、公正を保つため、第三者の公認会計士に依頼する必要があります。
以下のような公認会計士には、監査証明を依頼できないので注意が必要です。
- 会社に職員として勤務している
- 会社との関係性が深い
- 何らかの利害関係がある
禁止されている公認会計士に監査証明を依頼すると、監査証明書を取得したとしても、許可を得られないケースがあるので注意が必要です。
ただし、有料職業紹介の監査証明に精通した公認会計士はそれほど多くはありません。
スムーズに監査証明書を取得し、事業の許可を得るには、公認会計士選びが重要です。
公認会計士を見つける際は、有料職業紹介における監査証明を依頼するのに適した条件を把握しておくことが大切です。
公認会計士を選ぶ際、以下を意識しておくことをおすすめします。
- 有料職業紹介の監査証明に精通している
- スピーディーに監査証明書を発行できる
- 時間外も含め臨機応変に対応できる
公認会計士が監査に精通していない場合、必要以上に時間がかかり、事業スタートに支障を来す可能性があります。
とくに、期日が迫っている場合は、監査経験がありスピーディーに対応できることが重要なポイントとなります。
監査証明書を発行できるのは公認会計士のみであり、依頼可能な公認会計士は限定されていることを把握しておきましょう。
3.監査証明を依頼する流れ・スケジュール
有料職業紹介の監査証明をスムーズに受けるには、流れやスケジュールを把握しておくことが大切です。
準備が必要な書類もあるので、早めに準備しておくと完了までの期間を短縮できます。
監査証明を依頼する流れ・スケジュールについてご説明します。
(1)監査証明を依頼する流れ・スケジュール
監査証明は以下のような流れで行い、監査報告書を発行します。
- 監査報酬や日程を決める
- 監査契約をする
- 仮決算を締める
- 監査に必要な資料を揃える
- 実際に監査を行う
- 監査報告書発行に関する審査を行う
- 監査報告書を発行する
監査証明には複数の工程があり、手間と時間がかかります。
スムーズに業務を遂行するために、早めに取り掛かることをおすすめします。
とくに、監査に必要な資料を揃える作業が遅れると監査がスムーズに行われないので、準備しておきましょう。
(2)監査証明を依頼する際の必要書類
監査証明を依頼する際は、以下の書類が必要です。
- 月次・中間の合計残高試算表
- 法人税申告書(直近のもの)
- 決算書(直近のもの)
- 総勘定元帳(月次決算対象期間のもの)
- 通帳もしくは残高証明書(月次決算対象期間の残高が分かるもの)
- 履歴事項全部証明書
- 定款
- 請求書や領収書など取り引きの証拠となるもの
上記は一般的に必要な書類ですが、状況に応じて準備物が異なるケースがあります。
スムーズに監査証明を依頼するには、あらかじめ必要書類の詳細を把握しておくことをおすすめします。
(3)有料職業紹介事業を行う際に必要な条件
有料職業紹介事業を行う際に必要な条件は複数あります。
資産要件を満たすのはもちろん、その他健全に事業を行えるよう、条件が設定されています。
#1:資産要件を満たしている
有料職業紹介の監査証明には、資産要件を満たしていることが必須です。
必要な資産要件についてはこちらの記事をご参照ください。
#2:個人情報の管理体制が整っている
有料職業紹介を行う際は、個人情報の管理体制が重要です。
個人情報適正管理規程を作成し、以下を定めることを求められます。
- 個人情報関連のスタッフ教育
- 個人情報取扱規定の作成
- 個人情報の職員への公開範囲
- トラブル発生時の対応
有料職業紹介事業では、個人情報管理が必須であることを把握しておきましょう。
#3:有料職業紹介の欠格事由に該当していない
有料職業紹介の事業許可を得るには、欠格事由に該当していないことが重要です。
代表者には、履歴書や住民票などの提出を求められます。
#4:職業紹介責任者が選任されている
有料職業紹介事業を行うには、責任者の選任が必要です。
責任者は、求職者とのトラブル対応や個人情報管理の徹底など様々な業務の管理を行う必要があります。
職業紹介責任者講習会を受講していることや職業経験3年以上などの条件があります。
#5:人材紹介事業を行うのにふさわしい環境が整っているか
有料職業紹介事業を行う際は、環境が整っている必要があります。
たとえば、以下のような条件が求められます。
- 風俗街など不適切な環境ではない
- プライバシーに配慮したレイアウトとなっている
上記は対面での事業を行う際に必要な要件です。
#6:健全な運営を行う規定が定められている
有料職業紹介を行う際は、法律に従い事業を行う必要があります。
また、職業紹介事業の業務の運営に関する規程を作成し、適切な運営のルールを定めていることが求められます。
たとえば、以下のような規定が必要です。
- 自由に職業を選べる
- 待遇を公平にする
- 労働条件を明示する
- 手数料を明確に定める
(4)監査証明の発行費用
監査証明の発行費用は、状況により異なりますが、相場は10万円~50万円程度となります。
監査証明の発行費用は、以下のような要素により異なるので、幅があります。
- 売上高
- 保有資産
- 新規もしくは更新などの状況
会社の規模により、監査証明の際の業務量が異なります。依頼する公認会計士の作業量により、費用が変動することを把握しておきましょう。
なお、新規で有料職業紹介の監査証明発行を依頼するなど、それほど資産がない場合は、費用が比較的低くなりやすいです。
4.監査証明取得後の流れ
監査証明取得後は、所轄の労働局に書類一式を提出し、認可を受ける流れとなります。
また、許可を得た後も、3年もしくは5年の周期で更新が必要です。
監査証明取得後の流れについて解説します。
(1)所轄の労働局へ書類を提出する
監査証明取得後は、所轄の労働局へ書類を提出します。
また、有料職業紹介事業者は、前年度の事業状況を毎年4月30日までに所轄の労働局へ提出することとなっています。
あらかじめ書類が送付されるので、必要事項を記載する仕組みです。
(2)3年もしくは5年の周期で更新が必要
有料職業紹介の許可に関しては、有効期限があります。
監査証明取得後は、以下のように、3年もしくは5年の周期で更新が必要です。
- 新規許可:新規許可の日から3年
- 更新許可:有効期間が満了する日の翌日より5年
期日までに、必要書類を提出します。
また、1事業所当たり、1万8千円の手数料がかかります。
5.監査証明と合意された手続の違い
有料職業紹介の更新手続において、監査証明と合意された手続のいずれかを選択することが可能です。
任意監査では、公認会計士により決算書が適正であることを保証されます。
一方、合意された手続は、決算書が適正であることは保証せず、結果を報告書に記載する仕組みです。
監査証明と合意された手続とでは、納期やコストが異なるので、状況に応じて適した方を選ぶ必要があります。
監査証明と合意された手続の違いについては、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
まとめ
有料職業紹介事業を行う際は、厚生労働省による許可が必要です。
また、開始・更新時に資産要件を満たさない場合に監査証明が必要なので、監査証明の流れやスケジュールなどについても把握しておくことをおすすめします。
あらかじめ必要な書類や費用、条件などを確認しておくとスムーズです。
健全に事業を行えるよう、有料職業紹介の許可申請や監査証明について把握しておきましょう。