「会社からストックオプションを付与されたけれど、どのタイミングで課税されるのかな」
「どのような方法で”税金”は課されているのだろう」
皆さんはこんな疑問や悩みを抱いたことはありませんか?
結論から言うと、ストックオプションはストックオプションの種類によって計算方法や、課税されるタイミングが異なるのです!
そこで今回は、ストックオプションの課税について詳しく解説します。
この記事を最後まで読み、ストックオプションにかかる税金の仕組みを完璧に理解しましょう!
1.ストックオプションとは
ストックオプションとは株式を購入する権利のことを指しています。
ストックオプションを利用する目的は、企業がストックオプションを付与することで従業員の士気を高める目的あるいは業績向上のインセンティブとして活用されています。
そしてストックオプションを付与された者は、まず自社株式の市場価格が権利行使価格を上回る時期にオプションを行使し株式を取得します。
その後、この取得した株式を証券市場で売却することによって利益を得ることができる仕組みになっています。
近年ではストックオプションを活用する企業が増加傾向にありますが、課税タイミングや計算方法によってはキャッシュアウトが増えてしまい、充分なインセンティブにならなくなってしまう場合があります。
このように、資金負担を増やさず利益を獲得する為にはストックオプションの課税の仕組みを理解することが必要不可欠となるのです。
ストックオプションには以下のような種類があります。
- 税制非適格オプション⇒適格要件をクリアしていないもの
- 税制適格オプション⇒税制の適格要件を満たしているストックオプション
- 有償ストックオプション⇒付与された者がお金を支払い、ストックオプションを受け取る
種類の詳しい説明は、下記リンクを参照して下さい。
2.税制非適格ストックオプションの税金
「税制適格と比べて取り分に変化はあるのか?」もちろん取り分は多い方が良いので、この点は気になりますよね。
結論から言うと、税制非適格ストックオプションの場合は二重で税金が課されるため、税制適格ストックオプションと比較すると取り分が減ってしまいます。
では実際に、二重で税金が課されるタイミングや計算方法を確認していきましょう。
(1)課税のタイミング
税制非適格ストックオプションの課税タイミングは、権利行使時と株式を売却した時の2つです。
「権利行使時」と「売却時」によって、所得区分も異なる点に注意が必要です。
権利行使時の所得区分は「給与所得」として扱います。
売却時の所得区分は「譲渡所得」とします。
時期 | 課税対象 | 種類 | 税率 |
権利付与時 | 課税無し | ‐ | ‐ |
権利行使時 | 権利行使時の株価-権利行使価格 | 給与所得 | 45.95%(最高税率) |
株式売却時 | 売却額-権利行使時株価 | 譲渡所得 | 20.315% |
例題1
1株当たり500円で購入する権利が与えられており、株価が4,000円の時点で権利を行使して、実際に売却した際の株価が5,000円だと仮定します。
※「給与所得」は総合課税として最高税率が45.95%、「譲渡所得」の場合は20.315%(所得税15.315% 住民税 5%)を使用します。
税制非適格ストック・オプションの場合1株当たり給与所得、譲渡所得、それぞれの税額を求めましょう。
給与所得
4,000円-500円=3,500円(給与所得)
3,500×45.95%=1,608(税額)
譲渡所得
5,000円-4,000円=1,000円(譲渡所得)
1,000×20.315%=203(税額)
以上の結果から、給与所得3,500円(税額1,608円)、譲渡所得1,000円(税額203円)となります。
例題2
付与時株価および権利行使価格5,000円のストック・オプションを100株取得し、その1年後、株価が6,000円になったため権利行使を実施し、5,000円で100株の株式を購入した。
その後、株価が6,500円になり株式を売却したと仮定します。
※「給与所得」は総合課税として最高税率が45.95%、「譲渡所得」の場合は20.315%(所得税15.315% 住民税 5%)を使用します。
税制非適格ストック・オプションの場合1株当たり給与所得、譲渡所得、それぞれの税額を求めましょう。
(権利行使時の株価6,000-権利行使価格5,000)×100=100,000(給与所得)
100,000×45.95%=45,950(税額)
(売却額6,500-権利行使時株価6,000)×100=50,000(譲渡所得)
50,000×20.315%=10,158(税額)
以上の結果から、500,000円使用して150,000の利益が出ました。
そして利益のうち給与所得に分類されるのは100,000円、これにかかる税額は45,950円、譲渡所得に分類されるのは50,000円、税額は10,158円になります。
株式譲渡時に課税される税金(上記でいう譲渡所得)とは、株式を売却した際の売却代金を既に受け取っている状況です。
以上の状況から、キャッシュインをしたうえでの納税は特に資金負担が必要ないため、問題なく税金を支払える事が想像できます。
しかし、権利行使時の場合はまだキャッシュインのない状況ということになります。
キャッシュインのない状況にもかかわらず課税がなされ、この納税によるキャッシュアウトが資金負担を増やしてしまうのですね。
上記の理由から、税制非適格ストック・オプションが税制適格ストック・オプションに比べて不利になる一つの要因となっていることがわかります。
3. 税制適格ストックオプションの税金
「税制非適格ストックオプション」に続いて、「税制適格ストックオプション」を見ていきましょう。
上記2つのストックオプションの相違点は、「課税のタイミング」と「 権利行使時の含み益の所得区分」の2点です。
税制適格ストックオプションでは株式売却時のみ課税がなされ、所得区分は譲渡所得とします。
(1)課税のタイミング
税制適格ストックオプションの課税タイミングは株式売却時のみ、所得区分は譲渡所得です。
時期 | 課税対象 | 種類 | 税率 |
権利付与時 | 課税無し | – | – |
権利行使時 | 課税無し | – | – |
株式売却時 | 売却額-権利行使価格 | 譲渡所得 | 20.315% |
例題1
付与時株価および権利行使価格5,000円のストック・オプションを100株取得し、その2年後、株価が6,000円になったため権利行使を実施し、5,000円で100株の株式を購入した。
その後、株価が6,500円になったとき株式を売却をしたと仮定します。
※「譲渡所得」は20.315%(所得税15.315% 住民税 5%)を使用します。
税制適格ストック・オプションの場合1株当たりの譲渡所得、税額をそれぞれ求めましょう。
150,000×20.315%=30,473(税額)
以上の結果から、500,000円を使用して利益が150,000円出ました。
利益150,000円は譲渡所得に分類され、これにかかる税額は30,473円と分かります。
上記の「税制適格オプション」と「非税制適格オプション」の違いである、「課税タイミング」と「所得区分」の2点については間違えないように注意をして下さい。
「課税のタイミング」の違いは、納税資金の負担に影響を及ぼします。
税制適格ストック・オプションの場合、株式の売却資金を確保した後に納税を行うため、納税資金の確保は特に気にする必要はありません。
以上から、税制適格ストックオプションは、非適格の場合の課税に比べて税負担が軽くなる可能性があるということが分かりますね。
4.補足:有償ストックオプションについて
補足として、有償ストックオプションのメリットは、付与対象者個人は売却時点まで課税されることがなく税率が一定であるという点です。
そして目的となった株式を売却した場合、株式の売却価格と取得価額との差額が譲渡益として課税対象になります。
デメリットは、付与対象者に付与時点で有償ストックオプションの購入金額を支払う必要があるため、付与時は付与対象者への金銭的な負担がかかってしまう点です。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
ストックオプションは種類によって計算の方法や、課税のタイミングが異なるんですね!
ここまで解説をしてきましたので、最後に要点をおさらいをしましょう。
- ストックオプションの課税は「税制適格」か「税制非適格」かにより異なる。
- 「税制非適格ストックオプションは、経済的利益を受けたものとして権利行使時にも課税される。
- 「税制適格ストックオプション」は権利行使時には課税されず、売却時に付与される。
- 「税制非適格ストックオプション」であると、付与対象者にはメリットが無い為、ストックオプションは税制適格要件を満たしたうえで導入した方が良い。
以上4点が重要なポイントでした。
最後に、ストックオプションはどの様に税金が課されるのか、少しでも知識・仕組みの理解は深まりましたでしょうか?
今後もしっかりと税務知識や仕組みをマスターして、ストックオプションを有効活用していきましょう!