「社会人になってよく経営統合というワードを耳にするようになったけど、経営統合って何なんだろう」
あなたはこのような疑問を抱えていませんか?
ビジネス用語には種類がたくさんあり、理解するのが大変ですよね。
今回は経営統合という言葉を知らないあなたのために、経営統合について解説しています。
経営統合の意味に加えて、経営統合と合併の違い、経営統合と合併それぞれのメリット・デメリット、経営統合の事例にも触れています。
この記事を読めば経営統合について網羅的に理解できますよ。
経営統合について詳しく知りたいあなたは、ぜひ読んでみてください。
1.経営統合とは
経営統合とは、2社以上の会社が共同で新しく持株会社を設立し、それぞれの会社が新会社の傘下に入ることです。
新しく設立された持株会社は、経営統合前の会社の株式を全て保有・管理します。
例えば、A社とB社の2社が経営統合し、ABホールディングスという持株会社が生まれたとしましょう。
この時A社とB社はABホールディングスの子会社になり、ABホールディングスがA社とB社の事業活動を統制する形になります。
次に、経営統合と合併の違いについて解説していきます。
2.経営統合と合併の違い
経営統合と合併の大きな違いは、会社の数が増えるか減るかです。
先ほども説明したとおり、経営統合は2社以上の会社が共同で新しく持株会社を設立するので、会社の数が1社増えます。
合併は新設合併・吸収合併の2つに分けられますが、どちらの合併も会社の数が減るのです。
新設合併とは2社以上が新たに会社を設立し、全ての会社の権利業務を新会社に承継させることを指します。
新設合併を行うと、合弁の当事者となる全ての法人は解散します。
吸収合併とは2つの会社のうち片方がもう片方の会社に入り、消滅する会社の権利業務を残る会社に承継させることです。
新設合併は登録免許税額が高価であり許認可関係の再申請も必要なので、吸収合併が多く採用されています。
これまでの説明から分かる通り、各企業が統合後も残るのが経営統合、1社しか残らないのが合併です。
3.経営統合のメリット4つ
経営統合には大きく4つのメリットがあります。
- システム・人事制度統合の手間が省ける
- 共倒れのリスクを回避できる
- コーポレート・ガバナンス力が向上する
- 優秀な後継者を育てやすくなる
それでは、経営統合の4つのメリットを1つずつ解説します。
経営統合のメリット1:システム・人事制度統合の手間が省ける
経営統合のメリット1つ目が、システム・人事制度統合の手間が省けることです。
会社が合併をする際、吸収される会社はもう片方の会社の制度に合わさなければなりません。
一方で、経営統合は法人格を残し新たな持株会社を立ち上げるので、人事制度・システムの統合が不要なのです。
人事制度やシステムの統合が発生すると従業員の労働意欲低下に繋がるのですが、経営統合の手法を取ればこのようなケースを避けられます。
経営統合のメリット2:共倒れのリスクを回避できる
経営統合のメリット2つ目が、共倒れのリスクを回避できることです。
合併をすると会社の業務が1社に統合されるので、損失がでると大打撃を受けます。
一方で経営統合は、3社以上の会社が協力して事業を行う形態です。
経営統合では3社以上の会社がそれぞれ独自に事業を回しているので、仮に1社で大きな損失が出ても他社の事業には影響しづらいのです。
経営統合のメリット3:コーポレート・ガバナンス力が向上する
経営統合のメリット3つ目が、コーポレート・ガバナンス力が向上することです。
コーポレート・ガバナンスとは、どのように企業(コーポレート)を統治(ガバナンス)するかという意味で、ステークホルダー(利害関係者)によって企業を統制し監視する仕組みを指します。
経営統合すると、新設された持株会社が子会社株式の100%を手にすることができます。
これにより子会社に実務的な業務を任せられ、持株会社はグループ全体を見渡しながら事業の舵を取れるようになるのです。
このような理由から、経営統合をするとコーポレート・ガバナンス力を向上させられます。
経営統合のメリット4:優秀な後継者を育てやすくなる
経営統合のメリット4つ目が、優秀な後継者を育てやすくなることです。
経営統合されると子会社はホールディングス化され、グループの中に自分たちと同じ様な子会社がいくつか生まれます。
このグループ内で競争が起こることにより、優秀な人材が育つことを期待できるのです。
子会社戦略でグループ間の競争と協調を上手く行っている例に、サイバーエージェントが挙げられます。
サイバーエージェントでは様々なゲームアプリを開発していますが、本来1事業部でもできるゲーム事業にあえて子会社ごとで取り組んでいるのです。
これによりサイバーエージェントは、各子会社の文化を尊重し協力してゲーム事業に取り組むだけでなく、子会社間で競い合いながら事業のクオリティを高めようとしています。
このように経営統合が行われると、優秀な後継者が生まれやすい環境ができるのです。
4.経営統合のデメリット3つ
経営統合には大きく3つのデメリットがあります。
- シナジー効果が得られづらい
- 子会社間で連携が取りづらい
- コスト削減しづらい
それでは、経営統合の3つのデメリットを1つずつ解説していきます。
経営統合のデメリット1:シナジー効果を発揮しにくい
経営統合のデメリット1つ目が、シナジー効果を発揮しにくいことです。
合併すると各企業は1つの組織として事業運営をするのに対し、経営統合は各企業が独立性を持ったまま事業運営をします。
経営統合はこのような運営体制により、子会社間でノウハウを共有し合い事業を効率的に回せるチャンスを逃してしまう場合があるのです。
経営統合をすると組織間の協調を得にくいので、シナジー効果を期待しづらいです。
経営統合のデメリット2:子会社間で連携が取りづらい
経営統合のデメリット2つ目が、子会社間で連携がとりづらいことです。
経営統合をして子会社化したとはいえ元々は別の会社なので、会計処理や導入しているシステムが異なるケースがあります。
会計処理や導入システムが異なると事務負担や事業の重複が起こってしまい、業務効率低下に繋がってしまうのです。
経営統合で傘下に入った子会社は同じ企業体とはいえ、様々な要因によりコミュニケーションの不足が生まれやすいので注意する必要があります。
経営統合のデメリット3:コストを削減しにくい
経営統合のデメリット3つ目が、コストを削減しにくいことです。
経営統合によりグループ会社が増えると人事や総務・経理などの間接部門の数も増え、重複する部門が出てしまいます。
とはいえ、経営統合を実施した場合は複数の会社で事業を回さないといけないので、人事部門を増やさないと仕事が回らないというケースが出てくるのです。
以上のように、経営統合には共倒れのリスクを避けられるメリットはありますが、合併なら下げられるコストを下げられないというデメリットもあります。
5.合併のメリット4つ
これまで経営統合のメリット・デメリットを説明してきましたが、一方で合併はどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
まずは、合併のメリットを見ていきます。
合併には大きく4つのメリットがあります。
- シナジー効果が狙える
- 信用力の増加を期待できる
- 共通部門を1つにできる
- 組織をシンプル化できる
それでは、合併のメリットを1つずつ解説します。
合併のメリット1:シナジー効果が狙える
合併のメリット1つ目が、シナジー効果を狙えることです。
合併が行われると今まで別会社で行っていた事業が1つの会社で行われるので、販売チャネルの多角化・ブランド効果の上昇等が期待できます。
鉄道会社と百貨店の合併はその代表例です。
小田急電鉄は小田急百貨店、京王電鉄は京王百貨店となりましたが、どちらも百貨店の利用客が鉄道を利用するというシナジー効果を狙っています。
レジャー施設と不動産開発なども相性がいいです。
このように、合併はシナジー効果を狙って行われる場合があります。
合併のメリット2:信用力の増加を期待できる
合併のメリット2つ目が、信用力の増加を期待できることです。
合併が行われると組織が大きくなり、財務基盤も安定します。
これにより社会的信用を得られやすくなるのです。
例を挙げると、ソフトバンクグループはソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ワイモバイルなど多くの会社を吸収合併し、組織を大きくしています。
合併にはコストがかかるなどのデメリットがありますが、信用力の増加の観点で見るとメリットがあるのです。
合併のメリット3:コストを削減できる
合併のメリット3つ目が、コストを削減できることです。
2つの会社が1つの会社になることで、人事や経理などの管理部門を1つに統合できます。
日本航空がジャル・エクスプレスを買収したのは、運航会社を分けてサービス・その他の管理が複雑だったのを一元管理したいい例です。
このように、合併により経営の合理化を図れるケースがあります。
合併のメリット4:組織をシンプル化できる
合併のメリット4つ目が、組織をシンプル化できることです。
合併により組織が1つにまとまるので、どこの部署で何が起きているかを理解しやすくなります。
合併は作業や連携の無駄を無くすことにも繋がるので、業務の効率化も期待できるのです。
組織を合併によりシンプル化した代表例に、家電量販店のケーズホールディングスの子会社、デンコードーがあります。
デンコードーは北海道や東北での店舗運営を効率化するため、ケーズホールディングスのフランチャイズとして北海道で家電量販店を展開していた池田を買収しました。
このように、同じホールディングスの子会社同士が吸収合併されることで組織をシンプル化できるケースがあります。
6.合併のデメリット3つ
合併には大きく3つのデメリットがあります。
- コストがかかる
- 社員に辞められる可能性がある
- 人件費が高くなる可能性がある
それでは、合併のデメリットを1つずつ解説します。
合併のデメリット1:M&A実施の際にコストがかかる
合併のデメリット1つ目が、コストがかかることです。
合併には登録免許税額がかかったり、認可関係の再申請が必要になったりします。
その他、相続税等の負担が大幅に増加することもあるため注意が必要です。
合併のデメリット2:社員に辞められる可能性がある
合併のデメリット2つ目が、社員に辞められる可能性があることです。
合併をすると人事制度やシステムの統一をしなければなりません。
これまでの評価制度とは異なる評価制度が採用されたり業務量が増えたりすると、社員のモチベーションが大きく下がってしまう可能性があります。
特に吸収された側の社員の中には屈辱感を覚えている人もいますので、合併が行なわれる際には十分なシミュレーションが必要です。
合併のデメリット3:人件費が高くなる可能性がある
合併のデメリット3つ目が、人件費が高くなる可能性があることです。
会社にもよりますが、一般的には合併後の給与水準は給与水準が高い会社の給与テーブルに合わせられます。
これにより、会社全体の給与水準が引き上がることになるのです。
7.経営統合の事例
ここまで経営統合のメリット・デメリット、合併のメリット・デメリットについて紹介してきました。
最後に、経営統合の事例を紹介します。
今回紹介する経営統合の事例は次の2つです。
- 三重銀行と第三銀行の経営統合
- ティー・ワイ・オーとAOI Pro.の経営統合
それでは、経営統合の事例を1つずつ紹介します。
経営統合の事例1:三重銀行と第三銀行の経営統合
経営統合の事例1つ目が、三重銀行と第三銀行の経営統合です。
2018年4月2日に三重銀行と第三銀行が経営統合し、株式会社三十三フィナンシャルグループが発足しました。
第三銀行の臨時株主総会および普通株主さまによる種類株主総会補足資料によると、三重銀行と第三銀行の経営統合が行われた理由は、次のような経営環境の変化に対応するためです。
- 人口減少や高齢化の進展等、社会の構造的な問題が及ぼす地域経済への影響の増大
- FinTech等の技術革新を通じた異業種からの金融分野への進出による新たな金融競争の発生
- 市場金利の低下等の金融環境変化がもたらす金融機関同士の競争激化
今後も三重銀行や第三銀行のように、経営資源やノウハウを相互活用し、将来のビジネスモデルを確立するための経営統合が各地で行われると考えられます。
経営統合事例2:ティー・ワイ・オーとAOI Pro.の経営統合
経営統合の事例2つ目が、ティー・ワイ・オーとAOI Pro.の経営統合です。
ティー・ワイ・オーとAOI Pro.はどちらともTVCMの最大手として知られています。
2017年1月4日にティー・ワイ・オーとAOI Pro.が経営統合し、AOI TYO Holdings株式会社が発足しました。
ティー・ワイ・オーとAOI Pro.の経営統合が行われた主な理由は、両社がTVCM制作マーケットで中長期的を見込めないと判断し、インターネットを中心としたデジタルメディア媒体の多様化に対応していくためです。(株式会社AOI Pro.と株式会社ティー・ワイ・オーとの共同持株会社設立(株式移転)による経営統合に関する基本合意書の締結についてより)
両社はこの経営統合をテコに、拡張現実(AR)や仮想現実感(VR)領域に力を入れていくと表明しています。
8.まとめ
今回は経営統合について解説しました。
持株会社を新設する経営統合、合併には、それぞれのメリット・デメリットがあることを理解しておきましょう。
この記事では経営統合の意味に加えて、経営統合と合併の違いや経営統合の事例なども紹介したので、ぜひ参考にしてください。