アドバンテッジパートナーズ 老舗PEファンドの投資方針採用方針を解説!

1990年代から日本でPEファンドによる投資が始まり、投資先企業の価値向上に貢献してきました。このような実績が徐々に認知され、大手企業が事業や子会社の売却を検討する場合や、創業経営者の高齢化や後継者不足に悩む中堅企業の事業継承先としてPEファンドが活用されることが増えています。投資銀行やコンサルティング会社での経験を活かし、さらなる活躍を目指しPEファンドへの転職を考えている方も多いと思います。しかし実際にはPEファンドがどのような投資をし、企業にどのようなサポートをしているのか詳しく知ることができず、情報収集に悩む方も多いのではないでしょうか?

アドバンテッジパートナーズは1997年に日本で最初のPEファンドを設立した会社で、2020年4月に860億円で6号ファンドの募集を完了し、今後の投資活動が最も注目されている会社の一つです。

そこでアドバンテッジパートナーズのこれまでの実績や投資方針や採用方針について、重要なポイントを7つにまとめて解説します!

 

 1. 会社概要
 2. 投資実績
 3. 過去の主要案件
 4. メンバー構成
 5. 投資方針
 6. 採用方針
 7. 投資を受けるために

 

1.会社概要 重要ポイント!日本で最初のPEファンドを組成した会社


アドバンテッジパートナーズは1992年、コンサルティングファームで成功していた現在の代表パートナー笹沼泰助氏とリチャードフォルソム氏が設立し、1997年には日本で最初のプライベートエクイティファンドを組成した会社です。豊富な経営コンサルティング経験に基づき、経営への具体的かつ積極的な支援を通じて企業価値最大化を図る方針でこれまで20年以上に渡り日本のPEファンド界を牽引してきました。

社名 株式会社アドバンテッジパートナーズ
所在地 〒105-0001東京都港区虎ノ門四丁目1番28号虎ノ門タワーズオフィス17階
海外拠点 香港 シンガポール 上海
設立 1992年

※会社概要の詳細についてはこちらをご確認ください。

2.投資実績 重要ポイント!100社以上の企業への投資実績

アドバンテッジパートナーズは1997年の1号ファンド以降、日本国内で約4000億を投資、協調ファンド等も含めると投資企業数は約100社を超える実績があります。

ファンド 投資額 投資企業数
日本(バイアウト)
MBI Fund Ⅰ(1997年10月) 30億円
MBI Fund Ⅱ(2000年1月) 180億円 9
MBI Fund Ⅲ(2003年8月) 465億円 11
Advantage Partners Fund Ⅳ(2006年12月) 2156億円 14
Advantage Partners Fund Ⅳ-S(2012年12月) 200億円 11
Advantage Partners Fund V(2015年10月) 606億円 13
日本(上場マイノリティ)
InfleXion Ⅰ(2008年5月) 265億円 10
InfleXion Ⅱ(2018年1月) 107億円 11
アジア
Asia Fund Ⅰ(2016年1月) USD 370 million 6

投資した企業数をみても日本で最も多くのM&Aの経験値を有している会社の1つと言えますね!

3.過去の主要案件 重要ポイント!再生案件だけでなく事業継承案件も多数

ではここでアドバンテッジパートナーズの過去の主要案件をご紹介しましょう。

「ダイエー」

2005年5月産業再生機構の支援に伴い、350億円の協調ファンドを設立し丸紅とともに合計610億円を投じて第三者割当増資を引き受け、ダイエーの再建を行いました。ダイエーは従業員の8割が女性だったため元BMW東京社長の林文子さんが兼CEO(最高経営責任者)に就任し、低価格路線への依存からの脱却等の方針転及び直営店50店舗の閉鎖や子会社の売却など厳しい経営改革も行いました。

「ポッカコーポレーション」

2005年アドバンテッジホールディングスによる株式の公開買付け、さらに経営陣によるアドバンテッジホールディングスへの出資によりMBOを行いました。これによりポッカコーポレーションは上場廃止となり、子会社を半減、販売ルートの強化などの経営改革が迅速に行われました。アドバンテッジパートナーズの投資後に、全社営業利益に占める海外事業の営業利益の比率がアドバンテッジパートナーズ社投資直後の2007年度の8%から2011年度には33%にまで拡大し、成長市場である東南アジアに事業を展開しバリューアップが図られたことは特徴的です。その後2011年にサッポロホールディングスがアドバンテッジパートナーズ、明治製菓などからポッカ株を210億円で取得し子会社化しましたが、これもポッカの東南アジアでの販路の活用する狙いがあったと考えられます。

「レックス・ホールディングス」

焼肉店「牛角」などの飲食店経営だけでなく、コンビニエンスストア「am/pm」、「成城石井」など買収により飲食店以外の事業も拡大させていたレックスホールディングスは、2006年 事業再構築のためアドバンテッジパートナーズの設立したAP8株式会社への株式会社公開買い付け(TOB)によりMBOを行いました。TOBの際最後まで反対した旧来の少数株主に対しては強制的に株式を買い取りますが、このスクイーズアウトの際に適用された公開買付価格は、TOB公表前の1カ月平均株価20万2000円に13.9%のプレミアムを付した「1株当たり23万円」でした。しかし反対していた少数株主は、レックスホールディングスがMBOの公表前に恣意的な形で業績を下方修正したことで、公表日には経営陣に都合よく安価に誘導したため公表日のプレミアムが適切ではないと、東京地方裁判所へと適正な株式価格の決定を求める「株式取得価格決定申立訴訟」を起こしました。地裁での判決は「1株当たり23万円」を妥当としたものでしたが、高裁、最高裁の判断はTOB公表前6ヶ月の平均(プレスリリースの前後約3ヶ月となる)の1株28 万円を客観的価値だとして、これに株を保有することから享受し得た利益を株主から強制的に奪うことのプレミアムを株価の2割として上乗せし、「1株あたり33 万円」が取得価格だとしました。最高裁の補足意見書により、MBOが取締役による株の取得という取引の構造上、必然的に株主との利益相反が生ずることから、MBOの一連のプロセスにおいて株主に適切な判断機会を確保するために、買い付け価格の算定に関する第三者による評価書、意見書、事業計画や株価算定評価書等の開示など情報公開の重要性が指摘された点において、日本のM&Aにおいて重要な案件となっています。

「ビジョナリーホールディングス(メガネスーパー)」

眼鏡専門店大手でメガネスーパーは経営再建のため、投資会社のアドバンテッジパートナーズを引受先として、劣後株による第三者割当増資、新株予約権付融資により約19億円を調達し、上場は維持したまま資本比率を改善し、APから取締役を受け入れを行いました。店舗改装、顧客データベースの構築、眼鏡店から脱却しアイケアカンパニーとしてのブランド認知拡大のためのマーケティングを行い経営が刷新されました。

「株式会社コメダ」

2008年、事業の持続的な拡大・発展を希望する創業オーナーが、アドバンテッジ パートナーズ出資する株式会社AP11に全株式を売却する形(創業オーナーは経営から引退)で事業承継を行い、さらにサッポロホールディングスの出資も受け、経営陣を新体制に変更し、管理体制、マーケティング、新規事業の買収などにより企業価値を実現しました。売上高、EBITDA共に2倍強に拡大し全国展開する業界3位の喫茶店チェーンとしての地位を確立しました。その後株式会社AP11からMBKパートナーズに売却されましたが、さらに戦略的に経営を行い2016年に東京証券取引所市場第1部に株式を上場しました。

この他近年の「りらく」「アビタス」の案件や、マレーシア の「Plastic Centre Group」、ベトナムの「Elise Fashon」などアジア各国の企業への投資も行っています。MBOをメインの手法として再生案件だけでなく多くの事業継承案件を1997年以降現在も手掛けています。

※他の投資先企業についてはこちらをご覧ください。

4.主要メンバーなどの人材構成 重要ポイント!戦略コンサル・投資銀行経験者


代表パートナーは笹沼泰助氏とリチャードフォルソム氏です。笹沼氏は積水化学工業株式会社を経て大学院卒業後、戦略コンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッドおよびモニターカンパニーにて活躍されていました。リチャードフォルソム氏は大学卒業後、戦略コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッドにて主に日本企業に関わる案件を手掛けていた方です。
シニアパートナーはマッキンゼー・アンド・カンパニー出身の永露 英郎氏、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド喜多 慎一郎氏、モニター・カンパニー出身のエメット・トーマス氏の3名となっています。
2020年4月現在の人材構成は、下記の表のからわかるように、戦略コンサルティングファームや投資銀行業務、その中でもM&A戦略や業務改善や企業再選案件の経験を有している方が多くいらっしゃることがわかりますね。

人数 詳細
コンサルティングファーム出身者 13名 マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティンググループ(BCG)などM&A戦略、マーケティング戦略、業績改善、海外戦略構築等のコンサルティング業務に従事していたメンバー
投資銀行業務経験者 7名 ゴールドマンサックス、USB証券、モルガンスタンレー証券、みずほ銀行等投資銀行業務経験者7名(M&Aアドバイザリー業務、デリバティブ・トレーディング業務、企業再生案件投資業務、IPO案件に従事していたメンバー)
その他 数名 弁護士、会計士などの有資格者

出身大学は東京大学、京都大学、一橋大学、慶応大学、早稲田大学の法学、経済学部出身の方が多く、ハーバード大学やペンシルバニア大学ウォートン校といったビジネススクールのMBA修了者も11名と多くいますが、同時に生命科学や情報工学、機械工学などの修士・博士課程を修了したメンバーもおり、専門分野に特化した技術、知識をもっていることがわかります。アドバンテッジパートナーズを経てCVCやCITIC、丸の内キャピタルなど他のPEファンドのパートナーとして活躍している方も多く、多くの人材を業界に送り出しているという点が大きな特徴と言えます。

5.投資方針 重要ポイント!戦略コンサル・投資銀行経験者

アドバンテッジパートナーズは

日本の中堅企業を対象としたバイアウト投資
アジアの中堅企業を対象としたバイアウト投資
上場企業の成長支援を行うマイノリティ投資

の3つを大きな柱としてきました。

これまでもターゲットの中心は中堅企業としてきましたが、
2020年に募集完了した6号ファンドもミドルマーケットをメインの対象として、事業承継、企業グループからのカーブアウト、⾮上場化 MBO などのバイアウト投資を行う方針であると発表されています。

コロナウィルスの感染拡大など社会や経済環境が⼤きく変容する今後10年においても、新しい社会的経済的価値を創造し多くのステークホルダーへの貢献し⾼い投資リターンを両⽴させることを目標としています。

6.人材採用方針 重要ポイント!新卒ではないが比較的若い人材に注目している


アドバンテッジパートナーズは投資先企業の「企業価値の向上」を重視しているためコンサルティングファームで業務改善やM&A事業戦略立案の経験を有している人材を多く採用してきましたが、最近は投資銀行業務経験者や会計士、弁護士なども採用を増やしているようです。コンサルティングファーム以外の出身の方もそれぞれの専門性をもちつつ、M&Aアドバイザリー業務や業務改善など企業のバリューアップを手掛けた経験を持った方が多く採用されています。
標準に比べて年齢的に若い人材を採用しその後育成していく方針を取っているといわれています。

7. 投資を受けるために必要なこと 重要ポイント!投資家、銀行、会計士、弁護士等の人的つながりを

PEファンドはもちろん投資リターン(Exit時の売却益)を最大化できるかを仮説とシュミレーションを繰り返して投資対象企業を検討しますが、一時的な人員削減などのコストカットだけでなく第三者との提携、合併、M&Aにより企業価値を向上できる可能性があるか?経営資源の選択と集中が可能か?などに注目しています。特にアドバンテッジパートナーズは中堅企業をメインとした投資方針をあきらかにしていますので、創業初期のベンチャー企業ではなくこれまで業界で実績を積み重ねてきたが事業継承や事業改革を検討している企業が投資対象となります。
基本的には投資家、銀行、会計士、弁護士等の人的つながりを介して投資対象として検討されることが多くありますので、業界の動向に注目し各所に相談し、自社事業の可能性を確実にプレゼンし伝えることが投資を受けるために必要となってきます。

まとめ

以上のようにアドバンテッジパートナーズについて6つのポイントから解説をしてきました。日本のPEファンド業界をリードし、企業価値向上に重きを置いてきたアドバンテッジパートナーズの特徴がはっきりとわかると思います。

この20年で日本の経済におけるPEファンド影響も大きくなってきました。コロナ禍の後の経済活動の中でも大きな役割を果たしていくと思われます。アドバンテッジパートナーズのファンドに投資をする、投資を受ける、PEファンドに転職を検討している方は、ぜひアドバンテッジパートナーズの動向に注目していきましょう。

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