株式会社スポーツフィールド 永井CFOインタビュー

スポーツの価値を高めるような取組みは、収益事業かどうかに拘らず積極的に検討する -スポーツフィールド

Q. スポーツフィールドの経営理念を教えて下さい。

当社の経営理念をご覧いただくと、ど真ん中に「スポーツの可能性を様々なフィールドで発揮し」とありまして、この一節こそが当社をスポーツカンパニーたらしめています。
よくスポーツ人財を対象にしている人財会社でしょ?と言われるのですが、これは僕としては的を外していらっしゃると思っていて、スポーツの会社が人財領域のビジネスもやっているだけですとお話ししています。
なので、証券会社の方や投資家の方とお話しすると、まずその話から始めますね。
類似会社や競合として、人財会社を引き合いに出さないでください。
なんなら、レアルマドリードやアディダス、IMGなどと比べてみてください、と。

とはいえ、現在の主たる事業領域が人財であることは事実ですので、今後の展望をお話しするときには、人財領域で垂直展開するのではなく、既存事業とのリソース共有やシナジーを考えながらも、スポーツ関連ビジネスという切り口で水平展開していきたいと考えています。
中でも、日本におけるスポーツの可能性とか価値を高めるような事業や取組は積極的にやりたいと思っていて、M&Aや新規事業開発でも、スポーツに関連するものは一旦何でも検討します。
そういう理念を掲げているスポーツを愛している人による、スポーツに関連した事業を営む、スポーツの未来のための会社です。

Q. 会社としての概要を教えて下さい。

まず表面的なことでいうと、社員数は連結で200人超、札幌から福岡まで全国に拠点が11、創業10期目になる会社です。ちなみに私は2015年から参画していますが、当時は社員が30数名でしたので、数年で大きく成長しています。
主な事業内容は、様々な方法で体育会の学生の就職支援や、既卒の社会人でもスポーツをやってきた方のキャリア支援を行うと同時に、そういった方を採用されたい顧客企業の採用支援を行っています。
前提として私たちは、スポーツをやってきた人には確かな価値があると思っていて、その価値を認めてくれる企業様に入社したら、絶対活躍すると信じています。で、実際に入社してきた方が活躍したら、採用した企業の方は、「スポーツをやってきた人っていいよね」「スポーツをやってきた人って価値あるよね」と思ってくれるでしょうし、ひいては「スポーツって価値があるよね」というように演繹的に考えていただけると思います。
これって、僕らが理念に掲げている「スポーツの価値の可能性を発揮した」事例が、また一つ新たにできたと言えませんか?そういう思いで、スポナビの事業をこれまでやってきています。

Q. それだと、役職員の人たちもスポーツ経験者が多いんですか?

役職員の90%以上は、大学体育会やクラブチーム、実業団などの出身で、その多くは全国区の選手でした。社員にも現役の国体選手とかもいますし、全社員でやる運動会は大変盛り上がります!「JAPAN」のユニフォームを着てくる者もいて。僕が言うのもなんですが、物凄くカッコいい自慢の社員たちです(笑)

Q. CFOが考える同業他社はどのような会社ですか?同業他社に対する強みはなんですか?

先ほども少しお話ししましたが、スポーツに関する事業を横断的に行っている企業って実は少なくて、同業や競合としてのロールモデルを置きにくいです。
IR上は人財事業の単一セグメントだとしていますが、それって個人的にはとても不本意で、当社としてはスポーツの会社だと思っているので、ほんとは競合とか類似会社もスポーツ関連企業を引き合いに出したいところではありますね。
ただ、現在行っている事業としては、人財紹介業とイベント業が主なので、学情さんのように学生向けの就職イベントをやられている会社さんとか、MSジャパンさんみたいに特化型の人材紹介をやられている会社さんとかが広義の類似会社になります。

間接的にでもスポーツに対して価値を感じて、費用を払ってくれるお客様が既に1,000社以上いる

リソースベースで戦略を考えるときに、当社の強みとしては主に二つあって、一つは、スポーツ人財に価値を感じてお金を払ってくれるお客様が既に1,000社以上いることだと考えています。
お客様は一義的にはスポーツをやってきた人財に対してお金を払っていただくのですが、間接的にはスポーツに価値を感じているお客様なので、仮に当社がスポーツに関する新しい事業を始めたときにも、魅力を感じていただければお客様になっていただける可能性があります。

組織及び個人の両単位で、スポーツ界とアナログで密な関係性を築いている

もう一つの強みは、スポーツ界はレガシーかつとても狭い世界で、他の業界にも増して人の繋がりがとても重要なのですが、当社はスポーツ界の色んな層の方に組織単位でも個人単位でも密接に関係性を築けています。

具体的には、様々な大学の部活(指導者や監督)や、スポーツ関連他企業、任意団体や協会、公的機関、チーム、選手等。役職員個々人の関係性の場合もあれば、会社としてスポンサードさせていただいていたり、逆に費用をいただいて選手に研修をさせていただいたり、現役を続けながらの就労サポートをしたりもしています。なので、当社が今後スポーツに関連する新しい事業を始めようと思った時も、そういう方々とご一緒することで、事業の加速度を高められると考えています。

スポーツビジネスって、なかなかマネタイズさせにくいというのが私の実感なのですが、当社には、スポーツにすでに価値を感じてくれているお客さんが片手にいて、もう片手にスポーツ界との深い人脈とか関係性がある。
この両手を上手く使ったら、自前で開発する事業も、M&Aなどで加わっていただく企業も、伸ばせるじゃないかなって思っています。

今現在CFOが興味のある事業領域は

Q. 現在は、人財事業が主だとのことでしたが、人財以外に何か想定されているスポーツビジネスはありますか?

今既に行っているものもいくつかありますが、大体企業秘密です(笑)。でも、例えば資金調達やPRなど、就職支援以外の部分でスポーツチームや団体の支援を行うような枠組みの事業や、パラスポーツを取り入れた教育研修プログラムの開発など、いくつか走っているものもあります。

個人的にはスポーツチームの運営に非常に興味がありますね。競技はサッカーでも、バスケでもラグビーとかなんでもいいですし、別に日本じゃなくてもいいです。色々な会社さんがスポーツチームを保有されるようになってきましたし、それによって競技が盛り上がることは大変ポジティブですが、当社のような理念の会社こそ、スポーツチームを運営するべきだと考えていますし、そこにシナジーも大義もあると思っています。勝手に騒いでいるだけなので、取締役会で否決されるかもしれませんが(笑)
実はこれまでも当社でスポーツチームの買収案件を検討したこともありますし、今後もスポーツチームは地域・競技を問わず何でも検討しています。

Q. そういう意味だと個別の選手へのスポンサードも考えられていますか?

可能性はありますね。今も一部のチームや団体に対してはスポンサードを行っております。ただ、それは広報としてROIを確り検証しきった上で、というよりは過去からの役職員の人的なつながりでいただいたお話の中で、身の丈に合ったものに一部取り組んでいるだけです。特定のスポーツとか、特定の選手だけを応援するのは、スポーツ横断的にやりたい当社としては少し難しいところでもありますが、前広に考えます。

Q. スポーツ領域で言うと、最近e-sportsが流行っていると思うんですが、e-sportsは貴社のビジネスの対象になりますか?

良い質問ですね。否定はしませんが、e-sportsの捉え方は社内でも意見が分かれます。結論は、個々の案件ごとに是々非々で判断します(笑)
体育会の良さとかスポーツマンの良さを分解したときに出てくる要素のうち、目標達成意欲とか目標達成のためのPD CAサイクルを回し続けるとか、強烈なプロ意識とかは、e-sportsでも体を動かすスポーツでも共通する部分だと思うので。
一方、日本のスポーツは文部科学省の言うところの「体育」の文脈から語られることが多くて、そういう意味では体を動かさないとそもそも体育とは違うよねというような発想もあると思いますので、社内でも意見が分かれています。
でも、例えば体育会サッカー部の学生たちがFIFAやウイイレでの対戦結果と、リアルでの試合結果とそれぞれで得た勝ち点を通算して優勝校を決めるリーグ戦とか、面白いから企画・協賛してみたいです(笑)

理念への共感がまず一番大切


Q. 実際に投資をされる際に、投資をする企業のどのような部分を重視されますか?

まだ当社としては投資実績が無い中でお話しするのが恐縮ですが、当社の「スポーツの可能性を広げる」という理念への共感やフィット感がまず一番大切だと思います。また、現経営陣のお人柄や一緒にやっていけそうかは重要です。
というのも、当社としては現状グループに加わっていただいた会社に対してマイクロマネジメントをしようと思っているわけではなく、理念に共感して頂き、持ち味を存分に発揮してもらうのが一番だと考えているからです。
逆に当社グループのリソースを使い倒してもらいたいですね。そこは野心を持っていただいて大いに結構だと思います。

Q. 実際に投資に関わるメンバーというのは、御社の中ではどのような方がいらっしゃいますか??

あまりガチガチなフローは無いんですけど(笑)、対象案件が出てきたら私の管掌する経営戦略メンバーや、管理本部に協力いただきながらDDをして、代表と相談しながら詰めていって、最終的に金額に応じて経営会議などで意思決定する形になります。
当本部の財務ラインのメンバーだと、バンカーや外資系の大手スポーツメーカーでファイナンスのマネージャーをやってきた人、MBAホルダーや国内有数の大手企業で経営企画を長くやってきた人など、年齢や性別も含めてバックグラウンドに多様性があっていいチームです。
ただシナジーを考えたり、財務・経理DDくらいまではインハウスで何とかなるのですが、ドキュメンテーションだったりPMIだったりになると、未経験者ばかりなので外部のリソースを借りざるを得ないのが現状です。

Q. 対象としている企業の規模感としてはどれぐらいでしょうか?

株主が理解を示してくれて、定量・定性で説明が付くなら別に規模を限定するつもりはないのですが、2桁億円の規模になると多分社運が賭かります(笑)
あと、海外のスポーツチームも結構調べていますね。レアルマドリードは4,000億円ぐらいなのですが、元日本代表の松井大輔さんがいたフランスのグルノーブルなんかだと、2部にいた頃で確か1.8億円程度だったと思います。ただ買った後7年で30億円ぐらいお金を入れていますけどね…。
DeNAさんが東芝さんから川崎ブレイブサンダースというバスケのチームはたしか、表面上の譲渡価額は400万円ぐらいだったと思いますが、それ以外のお金がいろいろ発生していると聞いています。安いチームっていうのは基本的には、経営がうまくいってないから売りに出るので、債務超過で結構厳しいチームが多い印象です。
僕の夢ばなしは置いておいて(笑)、レガシーなスポーツ界をどんどん変えてくれるITスタートアップなんか沢山出てこないかな…一緒にやりたいです。

スポーツの価値の向上・可能性の追求を一緒に取り組んで頂けるような会社さんを探しています

Q.では、最後に貴社から投資を希望される企業さんや潜在的な候補企業さんにメッセージをお願いします。

当社も若い会社なので、どちらが買収する/されるというよりは、同じ理念に共感いただいて、スポーツの価値の向上とか、可能性の追求とかに向かって一緒に取り組んで頂けるような会社さんを探しています。
何か一緒にスポーツの価値を高めたいって思っていただけるような企業様またそういったサービスを持っている会社様であればぜひ一度お会いしてみたいみたいです。よろしくお願いします。

永井CFO、お忙しいところ本日はどうもありがとうございました。

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