自社株買いで株価はどう変動するのか?注意点や事例を会計士が解説!

「自社株買いって聞いたことはあるけど、よくわからない」
「自社株買いを行っている企業の株って、儲かるの?損するの?」

など疑問に感じている方も多いのではないでしょうか?

実は自社株買いは株価の変動に大きく関わっているので、投資家にとって非常に重要なのです!

そこで、押さえておくべきポイントを専門の公認会計士がわかりやすく解説します。

この記事を読んで自社株買いのメリット・デメリットを理解すれば、銘柄を選ぶときの武器になること間違いなしですよ!

1.自社株買いとは

自社株買いとは、過去に発行した自社の株式を、その企業が直接買い戻すことです。

自社株買いが行われると、発行済株式総数はその分だけ減少することになるため、利益に変化がなかったとしても、一株当たりの利益は増加します。

そのため、株主にとっては利益還元策と考えられ、増配や株主優待と並ぶ株主還元策として注目されます。

(1)ソニーが株主還元を目的として自社株買いを初めて実施した事例

まず初めに、ソニーが自社株買いを行った実例を紹介します。

ソニーは2019年2月に、株主還元を目的とした自社株買いを行いました。

以下、日経新聞からの抜粋です。

ソニーは8日、1000億円を上限とする自社株買いを実施すると発表した。

2018年末から株価が低迷していることもあり、株主還元を強化する。

取得する株数の上限は3000万株で自己株式を除く発行済み株式数の2.36%に相当する。

8日の東京株式市場でソニーの株価は一時、前日比7%高まで上昇。終値は193円(4%)高の4906円だった。

自社株買いは2004年2月以来15年ぶりで、前回は旧ソニー・コンピュータエンタテインメントの株主に自社株を交付するためと、単元未満の株式を保有する株主からの買い増し請求に応じたものだった。

引用:(2019年2月8日の日経新聞から抜粋)

一般的に、自社株買いを行うとその企業の株価は上昇する場合が多いと言われています。

上記のソニーのケースでも、株価は上昇していますね! 

2.自社株買いで株価が上昇する3つの理由

「自社株買いの意味は分かったけど、なぜ株価が上昇するの?」と、まだまだ分からないことだらけいう方がほとんどではないでしょうか?

そこで、自社株買いにより株価が上昇する3つの理由を、わかりやすく説明していきます。

理由1. 発行済株式数が減るため一人当たりの配当が増える

1つ目の理由は、発行済み株式数が減ると一株当たりの配当が増えるためです。

企業が保有する自己株式は発行済み株式から除外されるため、自社株を行うと発行済み株式数が減ることになります。

その結果、1株当たりの利益が向上し、株主にとっては取り分が増えて儲かるというわけです。

理由2.市場に流通している株式が減ると株価が上がる

2つ目の理由は、市場に流通している株式が減ると、需要と供給の関係で株価が上がるからです。

株価は需要と供給の関係で決まり、これが変動すれば株価も変動します。

一般の投資家が購入できる株数は限られているため、企業の自社株買いにより市場に出回っている株数が減ると、それに伴い株価が上昇するというわけです。

理由3.株価が割安だと広く認知されて買いが進むため

3つ目の理由は、自社株買いには企業が「自社の株価が安すぎだと考えている」というメッセージを発する効果があるからです。

前述の通り、自社株買いには株価を上昇させる効果があります。

したがって、自社株買いを行おうとしている企業は、「自社株買いをして株価を適正な価格まで上昇させる必要がある(=自社の株価が安すぎだと考えている)」と考えていということになります。

そのため、企業が自社株買いを行うと公表すると、投資家たちが「割安のうちに株を買っておこう!」と考え、株を買う動きが増えることで株価が上昇するのです。

3.自社株買いを行った企業の事例

ここまで読んで、「よし、儲かりそうだから自社株買いを行っている企業の株はとりあえず買っておこう!」と思ったそこのあなたは危険です!

自社株買いで必ずしも株価が上昇するとは限らないので、実際に自社株買いを行った企業の株価の推移などについてみていきましょう。

(1)株価が上がった事例:トヨタ自動車

自社株買いによって株価が上がった事例として、トヨタ自動車の例を紹介します。

トヨタ自動車は2018年5月9日に、上限3,000億円(株数5,500万株、取得期間は5月16日~9月28日)の自己株式取得を行うと発表し、5月31日に、約76億円の自己株式を買い入れました。

トヨタ株は、自社株買い前の2018年5月30日までに4.7%下落していましたが、社株買い後の5月31日から6月7日までは6営業日中5営業日で上昇して10%高に転じました。

この事例でも、短い期間に3000億円の買いが入ると発表されたため、「保有しておこう!」と買いに来る投資家や、「売りたいけれど今は控えよう」と考えた投資家の動きがあり、株価パフォーマンスが良くなりました。

(2)株価が下がった事例:カカクコム

次に、自社株買いによって株価が下がってしまったカカクコムの事例を紹介します。

カカクコムの株価は、2017年3月15日に自社株買いを行うと発表した後も、じりじりと下落し続けました。

その原因は、2017年2月2日の2017年3月期通期業績予想の下方修正で、売上高を480億円から450億円へ、営業利益を230億円から210億円に修正したことです。

このように、いくら自社株買いを行うと発表しても、株式市場は企業の業績に敏感に反応するため、業績が不振であれば株価は下落してしまいます。

「自社株買いをしているから、この企業の株価はこれから上がるだろう!」と安易に考えて手を出してしまうと、大損をしてしまうかもしれません!

では、自社株買いを行う企業を見つけて株を買うか迷った際は、どのような点に注意したらよいのでしょうか?

簡単にまとめたので、株で損をしたくない方はしっかり読んでくださいね!

4.自社株買いに対する売買の3つの注意点

社株買いを発表した企業の開示情報は、必ず確認しましょう。

企業のHPには投資家向けの情報が載っているので、そちらで以下の3点を念入りにチェックしましょう!

  1. 自社株買いを行う目的を確認する
  2. 自社株買いの実績を確認する
  3. 決算書で業績を確認する

では、確認方法や理由について今から詳しく説明します。

注意点1.自社株買いを行う目的を確認する

1つ目の注意点は、当該企業が自社株買いを行う目的をしっかり確認することです。

企業が自社株買いを行う目的は、前述した株主還元の強化やROE(自己資本利益率)の向上のためだけでなく、ストックオプションのための取得など、自社の社員のために行う場合もあります。

ストックオプションのために取得した自社株は社員に付与されるものなので、前述した自社株買いで株価が上昇する3つの理由の(1)と(2)には当てはまらず、株価が上昇する可能性は低いを考えられます。

このように、自社株買いの目的によっては、株価が上がらないこともあるので、必ず確認しましょう。

注意点2.自社株買いは必ず行われるとは限らない

2つ目の注意点は、実は自社株買いは必ず行われるものではないということです。

自社株買いをすると発表して株価が一時的に上昇したとしても、結局買われないのであればその後株価は下落していくことが多いです。

その企業が、過去に自社株買いを行った実績があるのか、一度調べてみてください。

注意点3.決算書で当該企業の業績をチェックすること

3つ目の注意点は、当該企業の業績をチェックすることです。

企業のHPにはIR情報が掲載されているので、決算短信で売上高や利益の推移を必ずチェックしてください!

自社株買いで株価を一時的に上げることができても、業績が悪いと株価は元の水準まで戻ってきてしまうことがあります。

たとえ自社株買いにより株主還元の意識は高まったとしても、業績の好調さを伴わない利益の上昇では、投資家の買いは続きません。

この例が、前述したカカクコムです。

「業績好調な企業が更に株主還元を高めるため、自社株買いを行う」というケースなら、積極的に買い銘柄の候補に入れて行っても良いでしょう。

5.まとめ

企業の自社株買いは、株価が変動する大きなきっかけになります。

業績や保有している資産に対して株価が安すぎる企業があれば、投資する価値があるかもしれないので注目してみてください。

自社株買いのメリット・デメリットを正しく理解し、企業の業績や自社株買いの目的をきちんと調べる習慣を身に付けてくださいね。

そうすれば、あなたも株で大儲けできるかもしれませんよ!

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