税務調査をされるとどうなるのか?税務調査の期間や時期について解説

「知っている企業に税務調査が来た」
「自分の会社にも税務調査が来るの?」

このように税務調査に対して不安を抱いている方は多いのではないでしょうか。

税務調査は毎年20万件と頻繁に行われており、どの会社も対象となりえます。

しかし、いつあなたの会社が対象にされてもおかしくはない税務調査ですが、詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

そこで当記事では、税務調査とは何か、税務調査の期間や時期及び目的を詳しく解説します。

当記事を読めば、税務調査に対して万全な体制で臨めるでしょう。

1.税務調査とは?

税務調査とは、国税庁管理下の税務署などの組織が、納税者に対し正しく税務申告をしているかどうかを確認する調査のことです。

つまり、税務調査は毎年行われる申告が正しく行われているかというのをチェックします。

法人税などは申告納税制度をとっており、納税者が自身で計算しなくてはなりません。

しかし、自分で計算するのみだと、計算に誤りがあったり意図的に計算に不正を行っている可能性があります。

そこで、税務調査という第三者が仲介することにより公正性を保つわけです。

2.税務調査の目的

税務調査は、脱税や法令違反など税金に関する不正をしている会社に対して正しい経理を行うよう指導することで、適切で公正な課税を実現することを目的としています。

また、納税者をけん制するという目的もあります。

税務調査はある意味抜き打ちテストのように行われるので、経営者ではいつも税務調査を気にすることになります。

そのような状態を作り出すことによって、経営者をけん制し、脱税者を減らそうというのです。

3.税務調査の2つの種類

税務調査は、以下の2つ種類があります。

税務調査の種類

  • 任意調査
  • 強制調査

順に説明します。

(1)任意調査

一般的に税務調査と呼ばれるものは、この任意調査にあたります。

任意とありますが、実際、調査を受けること自体を拒否することはできません。

というのも、正当な理由が無く調査を断ることや、税務職員の質問に対して答えないことはが国税通則法上認められていないからです。

もしその法律に反した場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。

もちろん、名目上、正当な理由があれば断ることができますが、そのような正当な理由はおそらくごく稀なケースでしかありえないです。

やはり、基本的には任意といえど税務調査を断ることはできません。

任意調査は基本的に1週間以上前に事前通知があります。

基本的に調査員が急に来るというようなことはないのでご安心ください。

ただ、不正が明らかに疑われる場合や、現金で商売を行う会社に対し、その事業実態を確認する必要がある場合には、事前通告なしでやってくる場合もあります。

その場合でも、すぐに調査を受けずに、日程を変更することは可能です。

そして、再度調査として訪問される前に十分に対策することも可能です。

万が一、突然税理士が来た場合は、早急に顧問税理士に連絡しましょう。

(2)強制調査

強制調査とは、主に税金に関する不正が犯罪と呼べるまでに発展している事案に関して、特別措置として行われる調査となります。

強制調査はマルサとして知られ、国税局調査部が担当しています。

これは脱税の疑いのあるものに対して裁判所の令状をもって行う調査です。

任意調査と異なり、査察部は納税に関する資料を押収することができる権限を持っており、これには法的な効力があるので原則として拒否することができません。

もし強制調査で脱税が発覚してしまった場合、検察庁に告発され、刑事事件として処理されることになります。

ただ、このような調査が、一般的な企業において行われることはないので、強制調査を特別に警戒する必要はありません。

強制調査が主に対象とする事案は、脱税額が1億円を超えるような規模の大きい税務不正であり、なおかつ悪質な隠蔽が行われているものに限られます。

年間200件ほどが強制調査対象となっており、近年ではタックスヘイブンや国際取引を利用したケースが見られます。

4.税務調査の流れ

税務調査には以下のような流れがあります。

税務調査の流れ

  1. 必要書類を揃える
  2. 質問と確認
  3. 結果が来る

順に説明します。

(1)必要書類を揃えておく

まず、税務調査が入ると分かった時点で、必要書類の準備を始めましょう。

必要書類には以下のようなものがあります。

必要書類

  • 納品書
  • 請求書
  • 契約書
  • 領収書の控え
  • 総勘定元帳
  • 稟議書
  • 議事録

必要書類に加えて、社長や経理担当者のパソコン内のデータも整理しておくとベストでしょう。

(2)質問と確認

税務調査では、調査官が1日から2日ほどかけて質問と確認を行います。

質問においては、主に会社の沿革や業務内容、取引先の範囲、役員や幹部職員に関する情報を聞かれます。

そして、売上の管理体制や作成書類の確認、帳簿との照合が行われます。

確認の際は、特に人件費や役員報酬、交際費といった項目が重要視されます。

必要であれば、実地調査や取引先への確認作業が行われます。

(3)結果が来る

調査から1か月ほど経つと、税務調査の結果が来ます。

税務調査で問題がなかった場合、税務署から適正な申告であるという内容の是認通知が届き、税務調査は終了します。

一方、問題ありと判断された場合には、指摘事項が告知され、修正などを求められます。

この指摘事項は受け取ったらそのまま鵜呑みにするのではなく、よく確認して税務署側の意見が正しいのか吟味する必要があります。

5.税務調査の時期

税務調査には本来決まった時期はありませんが、税務調査が増加する期間や時期が存在します。

税務調査の増え始める時期は、税務署の人事異動が終わる7月ごろと言われています。

ですので、念のために税務調査に対する対策は7月までに整えておきましょう。

6.税務調査の基準

税務調査をするときの基準には、傾向があります。

税務調査の対象になりやすい傾向には、以下のようなものがあります。

税務調査対象を選ぶ基準

  • 過去の調査で問題があった
  • 売上高が大きい

以下順に説明します。

(1)過去の調査で問題があった

過去の調査で問題があった会社というのは、税務調査の対象になりやすいです。

税務調査の調査官には増差税額というノルマが設けられており、一定額以上税金を回収しなければなりません。

したがって、過去の調査で問題を起こすような会社は、税金が回収できる確率が高いとみなされるので、税務調査の対象になりやすいのです。

もちろん過去に何の問題もない会社にも税務調査は入りますが、確率、頻度は低くなります。

過去に問題を起こしていない会社は信用度が高いので税務調査があまり入らないのです。

(2)売上高が大きい

売上高が大きく、黒字も大きい会社や、マスコミで話題になった会社というのも、税務調査の対象になりやすいです。

これも先ほど述べたように税務調査官の増差税額ノルマが関係しており、売り上げの大きい会社ほど多くの税金が回収できるとみなされますので、調査の頻度が上昇します。

7.税務調査時に見られるポイント5つ

税務調査で特に注目されるポイントとはどのようなものでしょうか。

税務調査の対策をする際に税務調査で見られるポイントを知っていれば効率的に準備することができます。

そして、見るべきポイントは以下の5つです。

税務調査で見られるポイント

  • 交際費の使途
  • 在庫の計上漏れ
  • 売り上げの計上漏れ
  • 売り上げを計上する時期
  • 架空人件費

順に説明します。

(1)交際費の使途

税務調査では交際費の使途が特に注目されます。

交際費というのは会社の経費の中でも特にプライベートな用途として使われやすいからです。

実際には社長のプライベートな経費として使われていないか、などがチェックされます。

会社のお金として計上するのにはふさわしくない経費を交際費としてしまう人も少なくないため、特に細かく確認されます。

(2)在庫の計上漏れ

税務調査では在庫の計上漏れがチェックされます。

絶対にやってはいけませんが、やろうと思えば在庫表を簡単に操作できてしまいます。

操作するというのは、期末に在庫を減らすことで利益を減らし、税負担を軽減するということです。

しかし、沢山仕入れたはずなのに在庫がないという状況になるので必ず怪しまれます。

(3)売り上げの計上漏れ

税務調査では、売り上げから漏れているお金が誤って売り上げから漏れているのか、意図的に行われたことなのかということがチェックされます。

もし意図的に行われたと疑われる場合には社長の個人通帳までも調査対象になります。

(4)売り上げを計上する時期

売り上げを計上する時期は税務調査でチェックされるポイントです。

売り上げを計上する時期を意図的にずらすことによって税金の量を減らそうとする行為を抑止するべく、税務調査ではこの点が特にチェックされます。

意図的でないにしろ売り上げ計上時期を誤ってしまった場合も、追徴課税が課税されますのでご注意ください。

(5)架空人件費

税務調査では架空人件費というものをチェックします。

架空人件費とは、実在しない社員や従業員に対して支払われる人件費のことです。

架空人件費により、利益を見かけ上減らして、税負担を軽くしようとする企業が存在しないよう、架空人件費があるかどうかは特にチェックされます。

また、給与を現金支給している会社などの場合は、従業員の履歴書やタイムカードなどをチェックされます。

8.税務調査における法人の3つの区分

税務調査をする際、法人は以下の3つの区分に分けられます。

税務調査において区分される法人の種類

  • 継続管理法人
  • 循環接触法人
  • 周期対象除外法人

以下順に説明します。

(1)継続管理法人

継続管理法人とは、過去に税務調査にて不正が発覚した法人のことを言います。

一度税務調査で不正が発覚すると税務署に目を付けられ、いわばクレジットカード会社のブラックリスト上の顧客のように扱われます。

不正の発覚した法人はこれからも同じような不正を起こすのではないかと思われるからです。

そうなると普通の企業であっても見逃されてしまうような小さな不正でも発覚しやすくなります。

発覚が増えるほど税務署からより目を付けられることになります。

このような負のループに入らないよう、くれぐれも税務調査で失態を起こさないようにしましょう。

(2)循環接触法人

循環接触法人は不審な点が多く不正への加担が疑われる法人のことを指します。

循環接触法人となったとしても、継続管理法人とは異なり、実際の税務調査で不正が発覚したわけではなく、あくまでも疑われている段階あるということです。

ただ、税務調査の頻度が多くなる可能性は高いです。

(3)周期対象除外法人

周期対象除外法人とは、納税や申告に問題はなく、特に不審な点などもないが、経営環境及び事業に変化があり、申告内容を改めて確認する必要がある法人のことです。

経営環境及び事業に大きな変化があると、税金も大きく変化するため、税務調査が行われます。

なお、周期対象除外法人に関しては10年近く実地調査が行われないケースもあります。

しかし、普段はあまり来ないからといって税務調査への対策を怠っていると再び事業や経営に変更があった時に思いもよらず税務調査で引っかかる可能性もあるので、注意しておきましょう。

9.タックスヘイブンも目を付けられている

タックスヘイブンとは、租税回避地のことです。

現在では、税を回避する目的で海外資金を運用する企業も増えてきたので、国税庁がタックスヘイブンに流出した資金を調べるようになりました。

タックスヘイブンは、その土地で事業をすれば確かに所得税や法人税が免除されます。

しかし、日本にいながら海外資金を運用しているだけでは、利益に対して日本の税金がかかります。

これを知らないで脱税した場合追徴課税がかかることになるので注意が必要です。

10.税務調査に対する大きな誤解

税務調査に関して多くの人が勘違いしていることとして、税務調査は恐ろしいものだという誤解があります。

しかし、税務調査の目的は簡単に言えばあくまでも指導であり、もし誤りが見つかったとしても申告し直せばよいわけです。

また、警察の家宅捜査のように引き出しがしらみつぶしに開けられたり、書類が押収されてしまうということもありませんので、ご安心ください。

やはり、冷静にきちんと対処していけば何の問題もありません。

11.まとめ

今回の記事の重要なポイントを以下にまとめます。

  • 税務調査とは、国税庁の管理下にある税務署を代表とする組織が、納税者に対し正しく税務申告をしているかどうかを確認する調査のことです。
  • 税務調査は、税不正を行っていなかのチェックを抜き打ちのように行うことで、企業が脱税することを抑制します。
  • 税務調査には任意調査と強制調査の2種類があり、普通の企業が受ける調査は任意調査になります。
  • 売り上げが大きいか、あるいは過去の調査で問題があった企業は税務調査の頻度が高い傾向にあります。
  • 税務調査では交際費の使途や計上漏れ、計上する時期、人件費が不自然ではないかという部分が注目されます。
  • 税務調査をする法人は区別でき、継続管理法人、循環接触法人、周期対象除外法人の3つになります。
  • 税務調査は、きちんと対策・準備すれば何の問題もありません。

以上のポイントを意識して税務調査をする旨の連絡が入ったらすぐ準備して、当日には万端な体制で臨めるようにしましょう。

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